Dear my friends ―11月22日―





ピンポンとインターホンがなる。

わざと無視をしていたらもう一度。

「五月蝿い、仙道!殺すぞ!!」

怒鳴りながらドアを開けるとそこには仙道ではなく、

...?」

クラスメイトの女の子が立って目を丸くしていた。


「ああ、すまん。仙道だと思って、つい...」

ばつが悪いとはこのことだ。

瞬は頭をかきながら視線を外してそう言った。

目を丸くしていたはぷっと吹き出し、「ハルが何かしたんだ?」と瞬の後ろを覗き込むとフローリングが水浸しだった。

「あー...」とが声を漏らす。水鉄砲か何かでやられたんだろうな...

「ねえ、ちょっと」

不意に知らない声がして振り向くと綺麗な女の人が立っていた。

彼女はチラリと冷めた目でを見る。

「こっちに私宛の荷物、届いているでしょ」

「昼間俺も居なかったから不在通知ならポストに入ってた」

そう言いながら瞬は家の中に入っていく。

「こんばんは」

挨拶をしてみた。

彼女は値踏みをするかのようにを頭のてっぺんからつま先まで舐めるように見た。

「ふーん」と呟く彼女に「瞬くんのお母さんですか?」とが声を掛けた。

彼女は顔を顰める。

「それで?」

その声音はかなり不快そうではあるが肯定だろうという言葉によって続きを促され、

「今日は何の日かご存知ですか?」

は怯まずそう聞いた。

「さあ?」

「瞬くんの誕生日ですよね?」

「へー」

無感動に返された。

話が続かないな...

別に続けなくても良いのだろうけど、そんな事を思っていたら、不在通知を手にした瞬が玄関に戻ってきた。

「これだ」といって差し出したその紙を乱暴に受け取り、

「あんた、家に女連れ込んでんのね」

と顎でを指してそう言った。

「こいつは、ただのクラスメイトだ」

「アンタはそう思っていてもこの子は違うみたいよ。ま、私には関係ないけどね」

そう言って颯爽とマンションを後にした。

「...どういうことだ?」

「あー...」

余計なことをしたんだろうな、と思いながら先ほどの会話を話す。

瞬は睫を伏せた。

ああ、本当に悪いことをしたな。

数ヶ月前だったら自分がされたら、きっと怒った。

覗うように瞬を見上げると目が合い、彼が苦笑した。

ポン、との頭に手を載せる。

「何で、俺の誕生日を知ってるんだ?」

「あー...ほら、クラスの瞬のファンの子達が噂してたから」

そうだったのか。

自分はそういう会話に全く興味がないから耳に入らなかった。

「で、誕生日プレゼントを持ってきたんだけど...先に片付け手伝おうか?」

が言うと苦笑して

「手伝いはいいが、とりあえず入れ。寒いだろう」

と瞬が促し、はそのまま家にお邪魔することにした。


「うわ、広いね」

瞬は一人暮らしらしいが、かなり広い家だと思う。

「昔は、家族で住んでいたからな」

その言葉を聞いて納得した。

一人暮らしにはやはりこの家は広すぎる。

玄関の片づけを済ませた瞬が戻ってきてコーヒーを淹れてくれる。

「先に淹れておけばよかったな」と言いながら出されたコーヒーは温かくて美味しかった。

「それで、誕生日プレゼントとか言っていたか?」

「あ、うん。かなり冷めちゃったけど」

そう言いながらは鞄から弁当包みを取り出して

「タッパーは返してくれると嬉しいなー」

と言いながら包みを開ける。

「煮物か?!」

「そう。一人暮らしをしてるとどうしても煮物って食べる機会がないでしょう?特に男の子からだ作らないだろうし」

そして、「お口に合うか分かりませんけど」と付け足して瞬にそれを渡した。

「ありがとう」と瞬は受け取り、は立ち上がった。

「さて、用件が済んだから帰るね」

「このためだけに来たのか?」

「そうだよ。だって、今日が瞬の誕生日でしょ?」

そう言って笑うに瞬は困ったように笑い「送ろう」と立ち上がった。

「いいよー」と断るだが

「お前に何かあったら草薙と風門寺と斑目と先生が五月蝿いからな」

と何処かで言われたような言葉を言われた。


にとって母の味って何だ?」

「ないよ。敢えて言うなら...コーンフレーク?」

「それは市販のものだろう?」

困惑したように瞬が言う。

「そだよ。というか、あの人に料理させたら後片付けとかが大変だからね。ミルクを掛けるだけのコーンフレークが一番まともに口に出来たものの気がするし」

遠い目をしてが言った。

「瞬は?」

の返しに

「さあ、な。俺も前に話しただろう?」

と応える。

そういえば、そうだった。さっきもあんなだったし。

は納得して数回頷く。

「ああ、さっきは悪かったな。気分を悪くしただろう?」

「んーん、大丈夫。気にしてないし。そういえば、瞬って甘いもの平気だったっけ?」

突然話題が変わった。

「あ?ああ、特別苦手でもないが、風門寺のように好きと言うわけでもないな」

「まあ、男の子でスイーツ好きって少ないよね」

はそう同意しながら足を進めた。



翌日、補習が終わってバカサイユに呼ばれ、甘さ控えめのデコレーションケーキを皆で囲むことになるなんて、今の瞬は全く想像していなかった。









桜風
08.11.1


ブラウザバックでお戻りください