Dear my friends ―七夕ー





昼食を摂るためにバカサイユへと向かった。

は弁当持参を貫いている。

翼はそれが気に入らないようだが、は気にしない。

ガチャリとドアを開けるとそこには何処から運んで来た!?と聞きたくなるような立派な笹が置いてあった。寧ろこれは竹と言うべきか...

ああ、そうか。

こんなの小学校の行事でも有ったなと思い出す。

ちゃん!これ、凄いでしょ?ツバサが用意たんだよ。短冊もこんなに沢山」

そう言って悟郎が短冊の山を指差す。

「七夕って、久しぶりだわ」

「なんだ、庶民はこういった行事すら出来ないのか」

は翼を見て「それでいいよ」と返した。

というか、普通中学に上がったらこういう行事はしないような気がする。

取り敢えず、自分の通った中学ではそういうのは無かった。

「放課後、一緒に飾り付けをしよう?短冊にお願い事書こう?ポペラ楽しいよ!」

悟郎に誘われては取り敢えず頷いた。

「補習は良いの?」と聞こうと思ったが、「いいの!」と返されることは予想出来る。

別に、星に願い事を託すなんてあまり興味はないが、どうしても嫌って言うわけではない。


放課後、悟郎に誘われるままにバカサイユに行って短冊を手にする。

既にさっきの授業をサボっていた面子が飾り付けを始めていた。

色とりどりの短冊には首をかしげた。

それだけではない。中にはチェック柄やストライプにドット、ペーズリー柄のものさえある。取り敢えず派手だ。

「どうしたの?」

「短冊って、五色じゃないの?」

の言葉に「What!?」と翼が言う。

「何を言い出す。沢山色があるほうが良いに決まっているだろう。何で5つなんてけち臭い事を言うんだ。これだから庶民は...!」

それを聞いては「たなばたさま」の歌を歌ってみた。確かに、歌詞の中に『五色の』と言っている。

「たしか、緑・紅・黄・白・黒だったと思う。違ったかな?昔調べたんだけどなー」

はそういって呟いた。

「まあ、いいじゃん。ゴロちゃんはカラフルな方がポペラ素敵だと思うよ!で、ゴロちゃんはこのピンク!ピンクの短冊にもっと濃いピンクのペンでペラポンとお願い事を書くのー!ちゃんは?」

「黒」

短く応えては黒い短冊を手にした。

「でも、黒だったらどのペンで書いても目立たないよ」

そう言われては修正ペンを取り出した。

「白い文字で書けばいいから大丈夫だよ」

「もっと可愛い色沢山あるよ?」

悟郎が水色や黄緑色などの優しい色を示すが、は「黒が良いの」と返した。

「んー...ちゃんの好きな色って黒なの?」

首を傾げながら悟郎が問う。

「そだよ」とは返しては修正ペンで短冊に言葉を書く。

「オレも書こーっと」と言いながら一が傍にやってきた。

「お前、黒って...昔は黄色とか青とかそういう色が好きじゃなかった?まだ沢山有るから遠慮しなくて良いんだぞ?」

そう言いながら一が手近にあった黄色い短冊をに寄越す。

「ううん、黒が好き」

まあ、年を重ねたら好みの傾向が変わるって言うしな、と納得しての手元を覗き込んだ。

「おーい、それって...」

苦笑する。

「ん?」と悟郎もの手元を覗き込んだ。

“B6の皆が南先生が悲しくならないようなテストの点を取れますように 

既に期末テストの結果は出ており、6人が軒並み悠里が悲しくなるようなテストの結果を出したのだ。

「おまえ自身の願い事とかは?ほら、それはこっちに書けよ」

その願い事は破棄するようにとは言わずに一は新しい短冊をに渡す。今度も黒い短冊だった。

だが、

「もういいよ。願い事はひとつまで」

と言ってペンのキャップを閉めた。

は今書いた短冊を飾り付けに笹の傍に向かう。

「ねえ、ここに付けて良い?」

「一銭にもならん」とかいいながら意外と率先して飾り付けをしている瞬に問う。

「ああ、何処につけても構わんぞ」

その返事を聞いては自分の手が届き、更に目立つ場所に短冊を結びつけた。

「ヘチャの願いは何だァ?」

そう言いながら短冊を見る。「うっ」と清春は絶句した。瞬も同じく複雑そうな表情を浮かべている。

「こんなことでいいのか?“スーパーのタイムセールスの時間が伸びますように”とか。そういうのでなくていいのか?」

瞬が問い詰めてくる。

「というか、七瀬くん。それはスーパーのレジ付近に設置してある“お客様の声”で意見を出した方が早いと思うよ」

は苦笑しながら返した。

「そうか、そうだな...今度そうしてみよう」

真剣にそう呟きながら瞬は頷いた。


それからが飾り付けを手伝っていると悠里が皆を補習に誘うためにやってきた。

彼女もこの笹には驚いた様子で、一に勧められるままに短冊に願いごとを書いていく。

そして、それをつけようとしたが、どうやらみんなに見られたくない様子で上のほうにそれをつけたがっていた。

それに気づいた一が悠里を抱え上げてやる。

それに清春がちょっかいを出して、いつもの通り賑やかな放課後となる。

「なあ、何で黒が良いって思ったんだ?」

騒ぎ始めたバカサイユの中で黙々と飾り付けを続けているに一が聞いた。

「どの色が混ざっても黒は黒だから。何の影響も受けないから。まあ、白が加わったら別の色になるけど、それ以外の色の影響は受けないでしょ?」

の言葉に一は眉を寄せた。

「何か、あったのか?」

「特にこれと言って何も」

の返答に「そっか」と答え、一は騒いでいる友人たちの元へと足を進める。

取り敢えず、止めた方がいいだろうから。









桜風
08.7.1


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