| その日、瑞希はうきうきしていた。 と、言っても瑞希の同僚はそんないつもと違う様子が良く分からない。 いつもどおり肩に白いトカゲを乗せて淡々と仕事をしているようにしか見えないはずだ。 そんないつもと違う瑞希が分かるのは、肩に乗っている大親友の白いトカゲのトゲーと... 「おや、瑞希君。今日はご機嫌だなぁ」 彼の同僚で、幼馴染であるの父親くらいだ。 天文学者として大学で教鞭をとっていたが彼だが、瑞希の職場には彼よりは早く入所している。 ヘッドハンティングでやってきたと言っていた。 に確認したら 「あれだけ天体大好きなんだから、同じアンテナの人には価値ある人だったんじゃないの?」 とかなり興味なさそうな言葉が返ってきた。 なるほど、と納得した瑞希も瑞希だが、彼女の父親はそういう人で、他の人にそう評価されていても「だよなー」と自分で納得しそうな人だ。 ふと、どこかの誰かに似ているかもしれない、と思った。 「おーい、瑞希君?」 そういえば、声をかけられたんだった... 「うん.........」 声をかけられてアレだけ間を空けてそれだけの返事か! 周囲のスタッフたちは心の中でそう突っ込みを入れたが、の父親は気にしておらず、「よかったなー」と言って自分の研究室へと向かっていった。 今日はこの職場にがやってくる。 自分がこちらに就職して数ヶ月経つが、彼女も大学の方が忙しかったらしくて中々手が空かなかった。 やっと手が空いたので瑞希の職場見学に来るというのだ。 ちょと..いや。かなり緊張する。 の家にはそれこそ週1のペースで遊びに行っている。 に会えるんだから、それくらいの努力は惜しまない。眠い目をこすりつつの家に行って、そこで寝る。 「瑞希、家で寝てた方が良いんじゃないの?」 が苦笑しながら言ったが、それは首を横に振った。 だって、家だったらが居ないし... こんなことなら大学をさっさと卒業もしくは編入してアメリカに来るんだった。 結局4年間日本の大学に通ったのだ。 「瑞希!」 自分を呼ぶ声が聞こえて瑞希は振り返る。 途端に白い爬虫類がボタボタと落ちてきて周囲は混乱に陥った。 「あ、あれ?瑞希??」 「うわぁ、久しぶりだよなー。あ、アナコンダ」 「ちょ、一。ここの方たちは慣れてないんだから、早く外に出てもらおうよ」 そういいながらはスタッフに確認して窓を開けた。 冷房の効いている室内よりも暖かい外へと爬虫類たちは出て行った。 「瑞希、久しぶりだな。半年振りくらい..か?」 にっと笑ってと共に登場した一がひらひらと手を振る。 「、なんで...?」 「ああ、今オフなんだって。で、昨日はハルと会って来てんだってさ。ハル、相変わらず元気だったって」 そんなことを聞きたいんじゃない... 瑞希はじっとを見ていた。 今日、が来るのを凄く楽しみにしてたのに...... 「トゲー。トッゲトゲー」 「...ありがとう、トゲー」 こそこそと話をしている瑞希とトゲーには首を傾げる。 「そういえば。今日は、どうやって来たの?」 「一の運転で、車。バビュンだったよ」 ニコニコと笑いながらが言う。 ピョン、とトゲーが一の肩に乗った。 「あれ、トゲー。瑞希じゃなくて良いの?」 が聞くと 「と、トゲゲ...」 少し歯切れ悪くトゲーが鳴く。 珍しいな、と思いながらは首を傾げる。 「、案内するよ」 そういって瑞希はの手を取った。 しばらく、施設を案内されて振り返ると一とトゲーが居ない。 「あれ?一とトゲーが居ないよ?」 が瑞希を見上げて言うと 「さっき、中庭に猫が居たから......きっと、そこ」 瑞希の言葉に「なら、そうだね」とはあっさり納得した。 本当のところはトゲーが中庭ではなく、裏庭に案内してそこに最近生まれた子猫がたくさんいるから時間も忘れて一が動かなくなるという作戦を提案して実行してくれたのだ。 友情に感謝である。 「あ!ねえ、瑞希。あそこ行きたい」 が指差したのは温室だ。しかもかなり大きい。 「いいよ。僕の研究もそこを使ってるんだ」 そういいながら瑞希はを手を引いて温室へと向かった。 セキュリティはカードでロックが解除できるようになっているらしい。そのカードは職員のIDだ。 が一人で散歩をしていてもこの中には入れず、未練たらたらに外から覗く以外出来ないところだった。 「ここにはスタッフさんみんなが入れるの?」 「ううん、ここを研究に使ってる人たちだけ。だから、おじさんはダメ」 は「へぇ」と感心した。 そして、温室の中に踏み入れてまた感嘆の声を漏らす。温室の中は外から見たときには広いと思ったけど、中に入ってもその広さは感じられる。 「あれ、何?」 「スタッフが休憩できるように」 が指差したテーブルと椅子を見て瑞希が応える。 「凄いねぇ...」 そう言いながら歩き始める。 「瑞希は何の研究をしてるの?」 の問いに瑞希は人差し指を唇に当てた。 「地球環境の健全化。温暖化とか大気汚染とか、色々あるでしょ?あれ、何とかしたい」 何のために、とは瑞希は言わないがは察して笑った。 「トゲーは幸せ者ね」 「みんなには、内緒」 「2人だけの秘密だね」 くすくすと笑いながらも頷いた。 少し歩いてベンチを見つけたため腰を下ろした。 「瑞希、大丈夫?疲れてない??」 が心配そうに見上げる。 「......うん、だいじょうぶ」 そういいながらも瑞希の瞼は下りてきている。 「ここ、勝手にロックされることはないんだよね?」 が確認すると「うん」と瑞希が言った。 「僕のIDがあれば大丈夫」 「じゃあ、ちょっと休憩してからにしようか。一は、にゃんこが居たら何時間でもその場に居られるだろうし。少し眠って良いよ」 の言葉に頷きかけて瑞希は止まった。 「今日、一はどこに泊まるの?」 まさか、の家か? だったら全力で邪魔をしにいかねば...! 星太は確か、寮のある学校だから、普段は家に居ないって言ってたし。 そうなると、一がの家に泊まるなら2人きりだ。これは全力で邪魔をする必要が生じる。 「ううん。送ってくれたらハルのところに泊まるんだって。で、明日はこっちに来てる翼に会いに行くんだって。車はハルのなんだよ」 の言葉に安心して瑞希はすぐに寝息を立て始めた。 あまりの寝つきのよさには苦笑する。 瑞希の体が傾いでそのままの膝の上に頭が乗った。 「ありゃー...」 こうなると身動きが取れない。 仕方ない、とは諦めて、随分伸びた瑞希の髪を手で梳く。 くせ毛かと思っていたが、結構さらさらでストレートだ。そういえば、葉月もさらさらストレートだったな、と思い出す。 腕時計のカチカチという秒針の音と、瑞希の寝息だけが聞こえる静かな空間でもなんだか眠たくなった。 |
リクエスト内容
『「Dear my friends」の設定で瑞希vs一のお話』
リクエストありがとうございました!!
桜風
09.7.5
ブラウザバックでお戻りください