| 温泉旅行からそのまま北海道へと向かった。 「うっはー、かなり楽しみだな」 鼻歌交じりに一が言う。 「あの人も楽しみにしてたよ。『一君なら一緒に動物見ても楽しいだろうねー』って」 飛行機を降りて迎えに来ているはずの母の姿を探す。 「てか、本当に雪が凄いなぁ...」 「うん、ここ数日いきなり。誰かガラにもないコトしたのかな?」 笑いながらが言う。 「はっじーめくーん!」 手を振って駆けて来る母には一歩後ずさった。 その少し後方にはやっぱり引いた弟が居る。 「お?おばちゃーん!」と乗りの良い一はブンブンと手を振って答えた。 答えたは良いが、「一!」とに窘められてしまった。 「んー?」とを見下ろして初めてこの状況に気が付く。 どうやら、自分は日本でも人気があるらしい。 それもそうだ。日本代表のユニフォームを着ているのだから。 「どうもどうもー」と手を振る一には盛大な溜息を吐いた。 の母親のお陰でそうやら親戚か何か、とにかく身内のところに遊びにきた雰囲気が出てきていたので特にの存在で騒がれることはなかった。 「まったく」と呆れたようにが言うと「いいじゃん。寧ろ世界中にババーンと報道してもらったら?」と母が言うものだから「だよなー」と一が乗る。 「一兄ちゃん。そうなったら、たぶん姉ちゃんが物凄く生活しにくくなると思うんだけど...」 星太が言う。 その通りだとも頷いた。 「まあ、そっかー。仕方ないなぁ...」 苦笑して言う一はどこか少しだけ寂しそうだった。 家に着いてからは、一の滞在できる間にどこに行くかということを母が一と楽しそうに相談していた。 「一、洗濯物出して。洗うから」 に言われて「おー」と返した一はバッグを開く。 「あ、これ。星太、土産。イタリアのチョコな。あと、おばちゃんにも。これ。ベネチアグラスの置物。ほら、にゃんこ。可愛いだろう??」 ああ、荷物が大きいのはこっちに泊まるからという以外のものが入っていたからか。 洗濯するから着替えは最低限の量で良いから、と言っていたのになと思っていたのだ。 「んで、これが」 そう言って渡された。やっぱりベネチアグラスの置物だった。しかも、犬。 「ありがとう」 笑って返すに「おう」と一はニッと笑う。 に洗濯物を預けて、先ほどの相談に戻った。 「何で、私とあの子のお土産を一緒にしたの?色々あったでしょう?宝飾品とか」 動物スポットではなく、いきなり説教。 一は苦笑した。 「だって、どれも似合いそうでわかんなくなったんだから仕方ないだろう」 惚気られた。 「ごちそうさま」と言いながらの母が笑い、その後ろでは複雑そうな表情を浮かべている星太の姿がある。 夕飯は一の好物の肉料理。 鍋だった。 本当はステーキが好きなのは知っているが、寒いのでやっぱり鍋。 寄せ鍋にしようとも思ったが、まあ、飛行機の中で「肉、肉」という一の独り言を耳にすれば何となく肉オンリーが良いだろうと思ってしまった。 一がひとり居ると食事がとても賑やかになる。 母が楽しそうにしているのを見ては目を細めた。 「おばちゃん、先風呂ありがとう」 ガシガシと髪を拭きながら一が言う。 「どういたしまして。星太、入っちゃいな」 母に言われて「へーい」と不服そうに返事をしながら星太が風呂に向かう。 「温泉、どうだった?」 促されて一は苦笑した。 ピンポン大会とか、雪だるま合戦から雪合戦への派生。 「楽しそう...」 「まぁなー。あいつらと一緒に居て退屈ってのは中々...」 苦笑しながら一は言う。 聖帝学園に生徒として通っていたとき、講師として戻ってきたとき。 退屈なんて出来なかった。 何より、と思って部屋の中を見渡す。 「あれ?は?」 「んー?部屋に戻ったのかな??」 の母の言葉を聞いて一はを探すことにした。 何より、が戻ってきたことが一番大きい。 悠里も勿論、自分達に影響を与えたが、自分に大きな影響を与えたのは、やはりだ。 「愛は世界を救う」と何となく頭に浮かんだフレーズを口に出して噴出す。 何を言ってるんだろう... 客間、とに案内された部屋のドアが開いていた。 その隙間から人の足が見える。 「?」 声をかけて中を覗く。 敷き終わった布団の上に寝ているが居た。 「良く寝るなぁ...」 そう呟いて一はの枕元にそっと座った。 髪の毛を梳くとくすぐったそうに口元が綻ぶ。その表情を見た一もまた、口元が綻んだ。 「」と試しに名前を呼んでみた。 やはり寝ているらしく規則的な呼吸も変わらない。 腰をかがめての瞼に唇を落とす。 「」とまた名前を呼ぶ。 息が掛かってくすぐったいのか、眉間に皺が寄った。 「ははっ」と笑った一はそのままじっとの寝顔を見ていた。 幸せそうな、安心しているその表情に自分もほっとする。 「」 もう一度名前を呼ぶ。 「ずっと一緒にいような?」 今は日本とイタリア。でも、何処にいるかがわかっている。全然近い。 いつかは一緒に暮らしたいとは思うけど、今はまだお互いそういう時期ではない気もする。 「、好きだぜ」 ほっぺにキスをすると「わたしも」と右目だけ明けたがそう返した。 「起きてたのか?」 「今の瞬間起きた。どれくらい寝てたんだろう...」 そういいながら体を起こすを手伝って一は苦笑した。 「、好きだぜ」 先ほどと同じ言葉を口にする。 は先ほど返した言葉を口にはせず、ただ、幸せそうに微笑んだ。 |
リクエスト内容は、
『Dear my friendsのヒロインで、一に「ずっと一緒に居ような」と言って貰いたい』
でした。
連載中に頂いたリクエストだったので、連載終了後に、と思いまして今の時期になりました。
リクエスト、ありがとうございました!!
桜風
10.10.1
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