Dear my friends ―日常風景 瑞希&真田編―





ご飯を食べ終わって早めに教室に戻るときとか、帰りのHRが終わってバカサイユへ行く前とか。

そういうときに時々見かけていた。

「いやぁ、瑞希が生き生きしてるよね」

が教科書類を鞄に仕舞いながら苦笑する。

「まあ、それはそれで喜ばしいことだろう。あの瑞希が自ら進んで他人と接点を持っているんだからな。行くぞ、永田」

そう言って鞄を持った翼は永田を引き連れて教室を出て行った。


瑞希は時々楽しそうにある人物を追いかけている。

彼は聖帝学園でT6と呼ばれるとても人気のある先生たち6人の中で最年少で、まだ学生気分が抜けていないのか、落ち着きに欠けるところがあり、本人は目指せクールな大人らしいが、どうやら真逆に突っ走っているようである。

とにかく、精神的にも実年齢的にも若い人物、外国語担当の真田正輝だ。

真田は瑞希のことを気にかけている一方で、瑞希は彼の事を『子犬』と呼び、気に入ってはいるのだろうが、それはどうだろう...?というじゃれ方をする。

瑞希はタロットカード占いを得意としており、それはどうやら有名らしい。

そして、そのタロットカードを手にして真田を追いかけている。

「先生との相性を占ってあげる...」

と呟きながら。

いつもの瑞希を考えたらよくしゃべっている方だからそれはそれで貴重だと周囲は思うだろうが、当たると言われている瑞希に占われてその結果が悪かったら立ち直れない。

そんな理由で瑞希から逃げ回っているという説明を前に一から聞いた。

どうやら真田は悠里に気が有るらしい。

というか、見て分かる。

分からないのは、当の本人南悠里だけだろう。

それで気が気じゃないといった人物もいるし、瑞希と真田の追いかけっこを楽しんでいる人物もいる。

取り敢えず、皆見守っているというのが現状だ。

勿論、もその例に漏れない。

瑞希が真田を追いかけているときは声をかけない。

瑞希がこんなに楽しそうにしているのだから邪魔をしてはいけない。翼じゃないが、彼が積極的に他人と関わっているのだから。

そう思っているので、今日もひとりで帰る。

別に毎日瑞希と一緒に帰っているわけではないので瑞希もそれについては文句を言わない。少し面白くなさそうな顔をするが、それでも瑞希との家は方向が違うから一緒に帰ると言っても途中までだし。


鞄を持って教室を後にする。

「うわぁーーー!!」

遠くから叫び声が耳に届いた。

少し廊下が静かだなと思っていたら、瑞希たちは遠くまで行っていたようで、また戻ってきたと推測される。

「瑞希って意外と体力有るよなぁ...」

は呟き、すれ違う真田に「失礼します」と声をかけて正門へ向かう廊下を進んだ。

が、真田が急転回して戻ってくる。

!」

「はい?」

振り返ると真田がの背後に回った。

何だろう...?

は少し振り返って真田を見上げると

、斑目をどうにかしてくれ!」

ともの凄く真剣な眼差しで訴えられた。

は勿論、瑞希もこの展開は予想していなかったのできょとんとした。

「はあ...」と曖昧に頷き、「瑞希。真田先生を追い掛け回すの、やめてあげて」と言ってみた。

『瑞希が真田先生を追い掛け回す時の生き生きとした表情は素敵だけど』という言葉は飲んでみた。

口にしたら瑞希は本当に生き生きと真田を追い掛け回すのに少ない情熱を全て注ぎそうだ。

それでも珍しく瑞希は不満そうにしている。

よほどいい運動になっているのだな、とかそんな事を思う。

「ま、斑目?」

返事をせずにじっとの後ろに隠れている真田を凝視している。の後ろに隠れているといっても、勿論体格差から真田ははみ出し捲くっているのだが...

「今日のところは、に免じて...」

そう呟いて手に持っていたタロットカードを制服のポケットに仕舞った。

「はぁ...助かったよ、

肩の力が抜けたような脱力感を見せながら真田は呟いた。

「いえ、まあ。お役に立てたのなら、良かったです。でも、何でそんなに瑞希の占いから逃げるんですか?」

「だって、当たるって有名なんだぞ!?これで先生との相性がもの凄く悪かったら...って、これはあくまで同僚として!そう、同僚として南先生と相性が悪かったらこう..仕事が、な?」

なにやら今更な言い訳を挟みながら真田は訴える。

「何で悪いことを前提に話をなさるのですか?もの凄くいいかもしれないじゃないですか。相性バッチリラブラブって結果が出るかもしれないじゃないですか。あ、勿論同僚として」

他人に『同僚として』と強調されると寂しいものがあるな...

そんな事を思いながらもブルブルと首を振った。

「いや、いいときはそれで占わなくてもいいんだよ。放っておいてもラブラブになるってことだろう?でも、悪いときは、やっぱこうさ...」

「悪いときも占わなくても相手にされませんよ。相性が悪いなら。もし、もう決まっていることなら今更だし、決まっていない不確定なことだったら占いでどう出ても関係ないんじゃないですか?今現在そうであっても変わることなら」

に言葉に真田は何だか甚く感動したらしく震えている。

「そうか!そうだよな。べっつに今占いでどう出ても、この先きっと努力次第でどうにでもなるもんな」

「じゃあ、占ってみる?」

瑞希が言うと真田は半分まで頷いて「うわぁ!」と叫ぶ。

何事かと思って見守っていたら

「や、やっぱり嫌だぁーーーー!」

と叫びながら何処かへ駆けていった。

「子犬、うるさい...」

眉間に皺を寄せて瑞希が呟いた。

確かに、賑やかだ...

「でも、瑞希は真田先生が好きだね」

が見上げると先ほどよりも更に眉間に深い皺を刻んだ瑞希が自分を見下ろしてくる。

「何言ってるの?」

「だって、あれだけ追い掛け回してるんだよ?瑞希が。わたしでさえあんなに追いかけられたことない」

が笑いながら言うと瑞希はふむ、と自分の顎に手を沿えて暫く沈黙し、

「じゃあ、これからは追いかけてあげる」

に向かってそう言った。

「え、いい。遠慮する」

「遠慮するような仲じゃないから。僕、ちゃんとを追いかけてあげるから。捕まえるから」

ああ、なんか口が滑ったってこういうことだよな...

瑞希の自信満々な笑顔を見上げながらそう思ったが、何だか後の祭りと言ったところか。

諦めの溜息を吐くを瑞希は嬉しそうに見詰めていた。









桜風
08.9.12


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