Dear my friends ―日常風景 瞬&九影編―





が教室で瞬の勉強を見ていた。

今日は瞬と翼だったのだが、翼が今日はバイトだそうで、それを知ったのが放課後のしかも永田からの電話だったため、別の誰かに声を掛けることが出来なかった。

なので、今日は珍しく瞬とマンツーマンだ。


「バンドの練習は?」

「8時からだ。が、スーパーの特売。今日は外せないものがある」

真剣な眼差しで言われても真剣な眼差しで頷いた。

何が安いのか、今日の昼休憩にバカサイユで確認した。は一応新聞を取っているので折り込み広告を学校に持ってきて瞬に見せている。

そして、お互い自分の家の近所のスーパーが特売の時にはいくらだと言って情報交換しているのだ。

それを見るたびに翼は呆れたように溜息を吐き、清春がからかう。

瑞希は興味なさそうにしており、逆に一はそれを面白がって話に入る。彼も一人暮らしだ。

悟郎は興味のある商品の話には入ってくるが、そうでなかったら自由にイラストを書いていたりする。

そして、今日も勿論瞬とはそれぞれの情報を出し合って、瞬の家の近くのスーパーの特売は行く価値があると判断した。

2人は同じ目標があるため、結構補習ははかどっている。


「よー、やってるか」

補習を開始して1時間以上経ってガラガラと教室のドアが開き、人が入ってくる。

九影だ。

「何だ、このっぱげ。邪魔をするのか」

「ハゲじゃねぇ!...邪魔なんかするかよ。七瀬、お前にいいものを持ってきてやった」

そう言って九影は本を机の上に並べていく。

まあ、時間的に丁度いいから休憩にしよう。

はそう思って2人の遣り取りを見守ることにした。


の様子を確認して九影は話を続ける。

「これなんだがな。大学時代の後輩の弟が使っていたものなんだそうだ。綺麗に使ってあるだろう。もう要らないからと言って譲ってもらったんだ」

そういう九影の言葉を聞いて、瞬とはそれぞれ1冊ずつ手にとってパラパラと捲る。

受験対策の問題集だ。同じシリーズの全教科ある。

「あと、これ。ウチの弟の嫁が同じの買っちまったって言ってたから貰ってきたんだがよ」

そう言ったのは、主婦向けの雑誌の特集記事を本に纏めたムックのようなものだ。

「へー、これ面白いよ」

パラパラ捲ったが瞬に渡す。

「ん?どれどれ」とそれを受け取り瞬も捲りながら「ほお?」と興味を示したようだ。

「何だ、もそういう雑誌が好きなのか?」

「好き、というか...一人暮らしって主婦のようなものですからね。役に立つなーって。ね?」

瞬に同意を求めると「まあな」と返ってきた。

「でも、こういうのって意外と高いんですよね」

本は良く買うけど、雑誌はあまり買わない。ほしい情報が載っている箇所が少ないからだ。

時間があるときはそれでも、雑学と思って購入して隅から隅まで余すところなく読むが、最近はどうも上手く時間が使えない。

放課後は6時ごろまで補習をしているから、その後は家に帰る途中にスーパーに寄って買い物を済ませて、夕飯を作って翌日の授業の予習をして、という流れで中々時間がない。作ろうと思えば作れるが、そこまでして取りたい時間でもない。

目の前の本に瞬は結構興味を持っているようだ。

特に、値段に。

「それで、これを..どうするんだ?」

少しソワソワとして瞬が九影に聞く。

まあ、これを見せびらかしておしまいと言うわけではないだろう。

「七瀬にやろうと思ってな」

「俺に?タダでか!?」

「ああ。勿論タダで、だ」

「本当だな?」

「ああ、本当だ。こんなことで嘘吐いてどうすんだよ。最近、お前頑張ってるだろう。そろそろ問題量こなしていった方がいいだろうし、って思ってな」

同意を求めるようにを見た。もその言葉に「そうですね」と頷く。

は、欲しいものはないのか?」

ちょっと未練はあるけど、にも貰う権利があるのではないかと瞬が訪ねる。

「ううん、いいよ。ただ、そのムックは1週間くらい貸して。見てみたい」

「本当に、俺が全部貰って良いのか?」

「まあ、九影先生もそのつもりで持ってこられたみたいだし。いいよ、別に」

がそういうと九影は少し居心地が悪そうに困った表情を浮かべた。

確かに、瞬のために貰ってきた。が、条件としてはも似たようなものだった。

勿論、成績は全く似たようなものではないが、とりあえず、一人暮らしで、親との仲もそう良くないがために自立していて...

しまったな、と改めて思った。今までずっと瞬の事を気に掛けて心配していたから、瞬の事ばかりが気になっていた。

「別に、本当にいいんですよ?」

九影の考えを察してはさらりと言った。

手には、今瞬から借りたばかりの主婦の知恵が詰まったムックがある。

「いや、そういうわけにもいかんだろう。今度、何か貰ってきてやらぁ」

ガリガリと頭を掻きながら九影が言う。

「いや、本当に良いんですよ。えー、と。そんなに気になるんだったら...ココアが飲みたいです」

真顔でそう言った。

一瞬絶句した九影だったが、溜息を吐き苦笑した。

「じゃあ、七瀬は?」

「俺も..良いのか?参考書、貰ったんだぞ?」

にだけってわけにはいかねぇだろう。で、何が良いんだ?」

「じゃあ、コーヒー。ホットでブラック」

「おー、他の奴らにゃ内緒だぞ」

そう言って九影は教室を出て行った。

「言ってみるもんね」

笑いながらが言うと

「本当、は意外と神経が太いよな」

瞬は苦笑しながらそう漏らした。









桜風
08.11.21


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