| 「Shit!」 翼が毒づいた。 そこに行く着くまでの過程を見ていた一は苦笑する。 「まあまあ、そう怒るなって」 「What!?何を言う。あいつは何度言っても俺の事をFamily nameで呼ぶんだぞ!?」 学年首位なんて言っているが結局記憶力がないではないか、と続けている。 「いや、オレもな。一応に言ったんだぜ?翼を苗字で呼ぶのやめてやれって」 一が言うと少しだけ興味を持ったように翼はその続きを待った。 「でも嫌だってさ」 「Why!?別に人の事を名前で呼ぶことに抵抗感はないんだろう?」 と、言っても。基本は苗字に“くん”だからどうか分からないが、そんなに気にするとは思えない。結構図太い神経だし。 「たぶん、そういうので抵抗をしてんじゃないよ。ほら、翼っての事、苗字でも呼ばないだろう?“お前”って」 言われても自覚がないのだから分からない。 「そうか?」 「そーなの。で、はそれが気に入らないから、仕返ししてんだろうよ」 「何て大人げのない!」と翼が言うが、翼こそ大人げがない。より確実に年上だというのに... 「まあ、此処は翼が折れたら?だって翼が折れたのに苗字で呼び続けるなんて意地は張らないって。そこまでお前の苗字に思い入れがあるとは思えないし」 しかし翼はすぐには頷かない。 何となく、自分が折れたら負けのような気がしたのだ。 「ったく、坊ちゃまはよ」 「葛城先生!?」 急に背後から現れた葛城に一が驚きの声を上げる。 「なんだ、ホスト崩れ。突然湧いて出てくるな」 「人をボウフラみたいに言うな!というか、草薙。さっき鳳様が探してたぞ」 「ん...?いっけね!翼、悪いな。オレ、鳳先生に呼ばれてたんだった」 そう言って一はそのまま教室を後にした。 「ところで、坊ちゃまよ。もしかして、に負けたような気がする、とか思っているんじゃないか?」 「What!?何故分かった?」 「おいおい、意外と素直だな...」 もう少し反論とかあるんじゃないかと思っていた葛城は呆れたように呟き、教室の窓を開けてタバコに火をつけた。 「教室内では禁煙だろう」 迷惑そうに翼が言うと「まあまあ。ちょっとくらい見逃せって」と適当に宥めて白い煙を吐く。 「しかし、青いな」 そう言って少し面白そうに笑った。 「まあ、今日は快晴だしな」と翼が言うと「違う違う」とタバコを持っていない方の手をパタパタと振った。 「真壁、お前の事だよ」 「What!?俺が、青い!!??」 「ケツが青いって言ってんの」 「何を言う、ホスト崩れ!!俺の尻は青くない!!」 真面目な顔で反論されて葛城は噴出した。 「比喩表現だよ、比喩。まだまだガキだってこと。子猫ちゃんの補習で習ってねぇのかよ」 聞いた気がする... そう思って言葉に詰まっていると葛城がクツクツと笑い始める。 「まあ、さっきの話に戻るけどな。お前が折れたらが折れるんだろう?だったら、先に折れてやるほうが大人ってもんだ」 翼は眉間に皺を寄せて「いつから聞いていた」と葛城を問いただすが 「いつだっていいだろう。まあ、とにかく。大人の余裕ってものをに見せてやっても悪くないだろうな。ま、坊ちゃまがそんなものを持っているかどうかは別だけどな。大人の余裕って...ブッ」 バカにしたように葛城が噴出した。 「何が可笑しい、ホスト崩れ」 「いや、俺もお前に無理難題を言ったかなってなー。坊ちゃまが..大人の余裕...プクク」 「何だと!?」 そんな会話をしていると教室のドアが開いた。 「葛城先生、教室内では禁煙ですよ」 「まったぁ〜、お堅い事を言うなって。それより、夏休みだってのにどうしたんだ?」 「瑞希と約束があったので。ねえ、瑞希は?」 「バカサイユに居なかったか?というか、お前はバカサイユにいたんじゃないのか」 が聞くと翼が応える。 「図書館に居たから。そっか、バカサイユか。ところで、補習終わったのにまだ帰らないの?」 「ま、まあ...もう帰る。いや、一を待ってやらんとまずいか...」 そう呟いてそわそわとしている。 その落ち着きのない理由を知っている葛城は笑いを堪えていた。 はそんな2人の様子を首を傾げて眺める。 意外とこの2人は仲がいい。 翼の傍に控えている永田を見るといつものように読ませない表情だ。 「」 教室のドアが開いて声を掛けられた。 振り返ると瑞希が立っている。 「帰ろう...」 ポツリと言った瑞希に頷いたは何だか和やかな空気を醸し出している3人に向き直った。 「じゃあ、失礼します。葛城先生、永田さん。真壁くんも、またね」 「!だから...!!」 の言葉に反応して翼は文句を言おうと思ったがは足を止めずにもう一度振り返ってヒラヒラと手を振った。 「まぁだまだだな、坊ちゃんは」 ニヤニヤと笑う葛城に「Shit!」と毒づいて翼は苛立たしげに教室を後にした。 「いやはや、坊ちゃまも大人への道のりは遠いなぁ...」 目を細めて葛城はそう呟き、翼の出て行ったドアを眺めた。 一度永田が振り返って葛城に軽く会釈をした。 「さあ、て」と言って葛城は窓を閉めて教室を後にした。職員室に戻れば、きっと悠里が居る。 「子猫ちゃんも夏休みだってのに、頑張るよな...」 少しだけ羨ましそうに呟いた。 |
桜風
08.9.19
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