| 学校に慣れたと思ったがすぐに長期休暇がある。 別にそういうのを喜ぶ子ではないはいつも中々出来ない細々とした家事全般をこなして、午後になり出かけることにした。 いつも通らないところを通ってみることにした。ちょっとした探検だ。 明るかったらたぶん危険はない。 歩いていると道路に人がはみ出している場所がある。 何だろう、と思って向かうとストリートバスケとでも言うのだろうか。 大会が行われているようだった。 3オン3のようで、3対3でプレイしているようだが、どう見ても彼の独壇場と化している。 結局その彼がひとりゴールを決め続けて試合が終わった。 「んー?何だァ?ヘチャ、お前がこんなところにいるなんてメズラシーんじゃねぇの?」 汗を拭きながらの姿を見つけた清春がそう声をかけてきた。 「何で“ヘチャ”って言うの?」 は何故か仙道にそう呼ばれている。 きっかけとかそういうのは全く覚えがない。 「ああ?そりゃ、ヘチャっぽいからに決まってんだろうが。それが気に入らないってのなら別のをつけてもいいぜェ?でもブチャはもう使ってるしなァ...」 「ヘチャでいいよ。別に...」 どうでもいいため、はそう答えた。 その呼び名を自分と認識していれば困ることはない。 「ふーん...で、ヘチャ、何してんだ、こんなトコロで」 「探検してたら人が溢れていたから。なにかなーって思って」 「ああ、オレッ様の素晴らしいバスケのプレイを見に来たってことか」 まあ、それでいいや。 「でも、仙道くんは学校の外でバスケしてたんだね。部活はしないの?」 「あんなレベルの低いところでやってられるかよ。まあ、偶には助っ人に出てやってるけどな」 まあ、レベルが違うっていうのは何となく分かる。 プロになるのかな? そんな事を思ったが、スポーツのプロなんて簡単になれるものではないし、本人がそれを望んでいてもそれだけではどうにもならないこともある。 「じゃあ、わたし行くね」 「なァんだよ、最後まで見ていかないのか?」 「どうせ、仙道くんの優勝でしょ?」 がそういうと「まァな」と仙道が返し、は「頑張ってね」と声をかけてその場を後にした。 今度は何処に向かおうか... 「おい」 キョロキョロと周囲を見渡していると声を掛けられたらしい。 振り返ると黒塗りの車に乗った翼が声をかけてきていた。 「ああ、真壁くん」 「だから!全く、何なんだお前は」 話しかけておいてそれか...? そんな事を思いながらは車に近づいた。 「どうしたの?真壁くんならこのGW中に海外旅行とか軽くしてそうなのに...」 の言葉に思い切り機嫌悪く眉間に皺を寄せる。 「お前は何でこうも俺に逆らう」 「逆らっているつもりはない」 翼の言葉には短く返した。 「じゃあ、なぜfamily nameで呼ぶ」 「自分の胸に手を当てて考えてご覧?」 「そうか。何か買ってほしいのか。それならそうと早く言え。何が欲しい?バッグか?ドレスか?それとも、車か?」 「どれも欲しくない。自分で買えないものは身の丈にあっていないと思ってるから。欲しいものがあったら働いて自分で買う」 の言葉に「Shit!」と翼が呟く。 「何だその言い草は」 「欲しいものは自分で手に入れる。ただ、それだけ。必要なものは親のお金で買ってるけどね」 の言葉に翼は不機嫌に顔をゆがめる。 「何て物欲のない...」 「“欲”ってのは生きる意志の現れでしょう?」 の言葉に翼は目を丸くした。 「Wait!待て、今の意味はどういうことだ?」 「じゃあね、真壁くん」 翼の問いに応えることなくは進行方向を変えて歩き出す。取り敢えずあの大きな車では追いかけられない細い路地を選んだ。 暫く歩いていくと商店街に出た。 なるほど、あの道は商店街への抜け道か... そんな事を思っていると見慣れた背中を見つけた。 「ハジメちゃん?」 「お、か?」 一の足元には一匹の猫が居た。 「にゃんこ」と言いながらも一の隣で屈みこむ。 「おー、タマって言うんだぜ。ほら、向こうに文房具屋があるだろう?あそこんちのにゃんこだ。タマ、こいつは。って言ってオレの幼馴染だ」 紹介されて「よろしく、タマ」とは挨拶をした。 本当かどうかは分からないが、一は動物と話が出来るらしい。“聖帝のアニマルマスター”とかって呼ばれているそうだ。 昔から動物の行動を読むのは得意だったと記憶しているがそこまで極めているとは思っていなかった。 「おー、タマもによろしくってさ」 「にゃ〜」と機嫌よさげに鳴いているタマを撫でながら一が通訳する。 「そういや、どこか行く予定だったんか?」 「うーん、まあ。スーパーに。もう少ししたら、だけど」 「そっか」 「ハジメちゃんは?」 「んー?オレはもう少しタマと親睦を深めようと思ってさ。ほら、最近はえーと、ほら。あー...補習があるだろう?」 ああ、先生の名前を忘れたのか。 「南悠里先生ね。うん、そうだね。でも、結構サボってるじゃん」 「でも、全くそれがなかったときに比べたら時間割いてるほうだぜ?」 そうかもしれないな、と思っては「そだね」と返した。 「じゃあね、ハジメちゃん。タマ」 立ち上がって1人と1匹に手を振ってその場を後にした。 「あれ〜?ちゃん!」 声が聞こえて振り返ると悟郎が立っていた。手には愛犬のリードが握られている。 「ゴロちゃん。お出かけ?」 「うん、ちょっと買い物。ちゃんは?」 「お散歩。普段は中々歩き回れないからこの連休中にちょっと足を伸ばしてみようかと思ってね」 が応えると「そっか」と悟郎は納得したようだった。 「あー、ゴロちゃんがパラリンと案内してあげたいけど。今日はポペラ用事があるんだ。ゴメンね?」 手を合わせて悟郎が言う。 「ううん、大丈夫。ゆっくり慣れたらいいから。普段は近所から出るつもりはないし。今日はお休みだから探検中なの」 「そっか。んー、ゴロちゃんもちゃんとポペラ探検したかったなー」 少しだけ恨めしそうに自分の買い物を眺めていた。 どうやらそれは画材のようだ。 そういえば、悟郎はイラストを描くと聞いたことがある。 「イラスト用?」 「え?あ、知ってたんだ。うん、そだよ。ゴロちゃんのイラストって結構人気があるんだ」 「凄いね」 「今度ちゃんも見に来てね」 そういう悟郎と手を振って別れた。 暫く歩いていると植物園がある。 こんなところにこんなものが有るとは思わなかった。 温室に向かうと「クケー!」と聞きなれた声が聞こえた。 「トゲー?」と呟きながら鳴き声の元へと向かうとやはりトゲーと眠っている瑞希が居た。 「トゲー、こんにちは。瑞希は寝てるんだね」 「起きてる。どうしたの、。こんなところに。僕を探してたの?」 瑞希に言われては困ったな、と苦笑した。 「お散歩してたんだよ。ほら、引っ越してきてからまとまったお休みだからね。普段の土日は掃除とかしてたら潰れるけど、このGW中は天気がいいし、お出かけ日和かなって。瑞希はよくここに来るの?」 は隣に座って瑞希に問う。 「うーん。外に出るときはここ。ずっと家に居たら姉さんが心配するし。でも、人の多いところとかにぎやかなところは好きじゃないから」 なるほど、とは納得した。 そして先日一から聞いた話を思い出した。 「瑞希ってモデルやってるんだってね」 「ああ、翼に引き込まれたって言うか...あまり人と関わらなくていいし。黙って立ってるだけでいいから。トゲーも一緒で良いって言うし」 一に聞いてから書店に並ぶ雑誌を片っ端から開いて確認した。確かに背が高いし、スタイルもいいから写真映えすると納得してついでに購入して帰った。 「今度、スタジオに遊びに来る?」 「いいの?」 の問いに「いいよ」と瑞希は返し、そのまま瞼を閉じてまた眠り始めた。 ホント、何処でも寝られるんだな... 少し感心と呆れをない交ぜにした感想を抱きながら少しだけ瑞希に肩を貸した。 日が傾いてきて瑞希と別れてそろそろ目的地に向かおうと思ったら人とぶつかった。 「ごめんなさい」 謝ると「?大丈夫か?」と名前を呼ばれて見上げれば瞬が立っていた。 どうやらぶつかった相手は瞬らしい。 「あ、七瀬くん」 「何、瞬。この女」 瞬の腕にしっかり体を寄せている少し派手めな女性がを睨みながら瞬に聞いている。 「クラスメイトだ。珍しいな、がこんなところにいるなんて」 言われては頷いた。 「今日、新聞に広告が入っててね。この近くのスーパーで卵が安いって」 「卵だと!?」 瞬がこの話題に食いついた。 それを面白くなさそうに瞬の連れている女性が顔を顰める。 「うん、10個入り1パック100円。安いでしょ?でも、お一人様1パック限り」 の言葉を聞いて心から悔しそうに瞬が顔をゆがめる。 「は、自分の家用にそれを買うつもりなんだよな」 「うん。だから、ちょっと足を伸ばしてみたの。七瀬くんはえーと...」 この集団は何だろう?派手だぞ? 「これからバンドの練習だ。スタジオを押さえているからな。あー...」 卵がもの凄く気になっている様子には小さく笑った。 「笑い事じゃない!いいか、卵1パック100円なんて最近では中々見ないんだぞ!?」 「ごめん。じゃあ、ハジメちゃんに連絡いれてみようか?今日は暇みたいだから。さっき会った時に今日の予定はタマってにゃんこと親睦深めるだけだって言ってたし」 そう言いながらは携帯を取り出して一にダイヤルする。 「タマ、か。あの文房具屋からなら少し遠くないか?」 タマって有名人なんだと思いながら「ハジメちゃん体力有るから大丈夫でしょう?」と返して出てくるのを待つ。 『おー、どうした?』 「七瀬くんのためにスーパーへわたしと一緒に行かない?」 『何のことだ?』と詳しい説明を求められては今瞬と話したことを言うと 『わかった、いいぜ。んじゃ、その近くにコンビニなかったっけか?』 「ある」 『そこで待ってろよ。すぐに行くから。けど、オレが行ったとして瞬にはいつ渡せばいいんだ?』 そういえばそうだ。 一の言葉を伝えると電話を代わってくれと言われて携帯を瞬に渡す。 2人は少し話をしての元に携帯が戻ってきた。通話は終了している。 「コンビニで待っているようにと言っていた。他に何が安い?」 「トイレットペーパーが家の近所よりは少し安いなーって考え中」 そう返してトイレットペーパーの値段を口にした。 「それも数に限りがあるやつだな?安い」 「そうだったと思う」 「じゃあ、すまないがそれも草薙に買っておいてもらってくれ。悪いな」 「いいよ。バンドの練習頑張ってね」 手を振っては瞬と別れた。 どうでもいいが、瞬と会話をしている間中あの女性に睨まれっ放しだった。 それはそれで彼女は凄く根性があると感心してしまう。 だって、睨み続けるのは疲れるだろうから... |
桜風
08.7.4
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