どきどき湯煙何たら旅行 12






帰りのバスの中では皆静かだった。

あの雪合戦が効いたらしい。

現在プロアスリートの2人はまだ体力があったが、それ以外の者は眠っている。非常に静かだ。


「そーいえば。。来年はいつ頃来るンだ?」

少しはなれたところにいた清春が声を掛けてきた。

「んー、と。3月終わりと、9月終わり..くらいかな?そろそろ年に1回でいいっておばあちゃんは言うんだけどね。おじいちゃんが物凄く寂しそうな表情をしたから、まあ..年に2回1週間くらいなら仕事も何とかなりそうだし、いっかなって」

「あー、んじゃ。その頃連絡しろよ。試合あったら招待してやるから」

アメリカに行くと清春の試合を見に行っている。

清春がそれを知ったのは今年のリーグが終了したときだった。

何気なしに話をしていたらがそう言ったのだ。

それを聞いて不思議と清春は悔しかった。何故か分からないが、何となくいたずらを仕掛けられていたのに全然気が付かなかったような感覚になったのだ。

だから、次にこっちに来るときは連絡しろ、と何度も念を押した。それに対しては「うん」と首を傾げて頷いたが、それで信用できなかったので今確認したのだ。

「で?ナギの試合はどれくらい見に行ったンだよ」

「1回もないよ?」

首を傾げてがそういい、一も「だなー」と同意している。

何故か清春がうな垂れた。

「ちょ!ナギ、来い!!」

「どうしたー?」

眠っている彼らを起こさないようにそっと移動をした。

「なァんで!がオメェの試合を見に行ってないンだ!誘え!!」

小声で怒鳴る。器用なものだ。

「いや、だって。アメリカは、ばあちゃんの病院に行くついでに行くことがあるけど、イタリアにはついでがないし」

一が言う。

「ヴァーカ!オメェが居るだろうが!ついでっていうか寧ろメインだ!!」

「オレ?まあ、うん。けど、飛行機って結構辛いだろう?」

体を心配して誘っていないということなのか。それを聞くと何となく納得した。

いや、納得しきれない。

「んじゃ、今度から誘えるだろう。誘え!さっき、アイツのばあちゃんが1回でいいって言ったってことは回復してるってことだ。完治は..まあ...難しいかもしれねぇけど」

「おお〜!清春。お前頭いいな!」

「オメェは使わなさすぎだ!」

清春は反射でそう突っ込んでいた。

「まあ、なー。やっぱ、見てもらいたいよなー。応援してくれてるのは知ってるけど。だよなー。清春、サンキュ!」

っていうか。何で自分がこんなに世話を焼いてしまっているのか。

が一に対してかわいそうなことを平気でやっているのが悪いんだ。そうだ、別に自分が親切とかそういうんじゃなくて、あいつらが何か変なんだ。

そうだそうだ、と納得する。

もちろん寝ているはずもない永田はそんな彼らの様子を微笑ましく見守る。

自分はの兄(のようなもの)であると自負している。

だから、やっぱりちょっぴり一が気に入らない。もちろん、翼の無二の友だし、にとって大切な人と言うのはを見ていたら分かる。

それでも、やっぱりちょっと面白くないからピンポン大会に出た。

決勝までに当たると思っていたが、トーナメントを作ってみたら決勝まで当たらす、結局一との対決はムリかと思っていた。

彼は普段足を使うスポーツだ。だから、道具を、ラケットを使うピンポンは苦手なのではないかと思った。性格も結構大らかといえば聞こえはいいが、大雑把だ。

だから、彼との決勝戦は驚いた。

驚いたけど、手加減してやるつもりはなく、全力で戦ったはずなのに辛勝だった。

悔しいけど、やっと何とか納得した。

きっと彼はのために頑張ったのだ。彼女のために、ここまで頑張れるなら、まあ、一歩引いて見てやってもいい。

実際今回の旅行中、一はをとても大切にしていた。目がそう語っていた。

が一に泣かされたら、自分が一を泣かしに行こうと心に決めている。だが、そのときはこの先訪れるかどうか...

「できれば、訪れて欲しくないですね」

呟いた永田は振り返る。

ぼーっと窓の外を眺めていたがふと視線を戻してちょうど永田と視線が合う。

首を傾げた。

永田は首をかすかに振った。

それを見ても特に永田を追求することがない。

永田は、のそういうところがお気に入りだったりする。



バスは学校に着き、そこで解散となった。

「あ、慧!」

「のぁぁぁぁぁーーーー!!」

バスから降りて久しぶりに生徒会室を覗いて帰ろうといって足を進めた慧が突然ズボッと何かに落ちた。那智はそこに『何か』があるのには気づいたが、慧を止めるのに間に合わなかった。

「キシシシシ!ブチャ用に作ったモンだけど、ま、それはそれでおもしれーから、よしとしてやるゼ」

そう言って上機嫌に清春は頭の後ろで手を組んで正門から離れる。

「方丈君?!」

悠里と真奈美が落とし穴に向かっていった。

は思わず悠里の手を引いて真奈美のバッグを引っ張った。

「何をしてる、せんどぉぉぉーーーー?!」

慧を助けに行こうとした瞬が悠里たちの代わりにもうひとつ用意してあった落とし穴に落ちた。

「瞬さん?!」

八雲が落とし穴を覗き込む。かなり深い。

「あ、ありがとうさん」と悠里はを振り返り、「ありがとうございます」と真奈美も深々と頭を下げた。

その様子を見ていた清春は「ケッ」と心からつまらなさそうに言う。

「...瞬、慧君の順かな?」

「んじゃ、まあ。ゴロちゃんも手伝いましょう?」

そう言って足元に大きな旅行バッグを置いて腕まくりをする。

が振り返ると一もコートを脱いで腕まくりをしている。

「んじゃ、オレは方丈兄の方を助け出しとくわ」

賑やかに始まった温泉旅行は終わるときも賑やかで、結局冬休みの当番で来ていたT6たちも様子を見に来て状況を把握したところで教え子たちの救出を手伝い始める。

「ほらほら、皆さん。頑張ってください」

温かい紅茶を優雅に飲みながら応援する衣笠の声に皆は心の中で溜息をついた。

「やはり、聖帝学園はこれくらい賑やかでないと」

衣笠は満足げにそう呟いてその様子を眺めていた。









桜風
10.9.24


ブラウザを閉じてお戻りください