| 街灯の下にあるベンチに座って待っていた。 手には汗をかき、何故こんなにも時計の針は進むのが遅いのか... 「あれ、早いな」 声をかけられて慌てて立ち上がる。 「うん...ほら、こっちが呼び出したのに」 そう答えたはすでに逃げ出したい気持ちでいっぱいだった。 一や瑞希もこんな気持ちだったのだろうか... 学園を取り戻すまでは、との中でラインを決めていたのでそれまで彼と接することがあっても今までどおり、いつもどおりのペースで接することが出来た。ちょっと乱れたときはあるけど、概ねいつもどおりだったと思う。 しかし、本日無事に母校を取り戻すことが出来た。 少なくとも、佐伯がこれ以上あの学園を使って自分の理想を叶えることは出来なくなる。 理想があり、そのために犠牲をもいとわないという精神を非難するつもりはない。 そういう人も居るだろうし、そうまでしなければ叶えることが出来ない夢だってある。 しかし、あの聖帝学園をそのための踏み台にされるのは我慢ならなかった。 他校でそう言ったことがあってもは口を出さない。 それはその学校の関係者が解決することだし、正直、興味ない。 昼間のあれは、結局は在校生を想ってのことではなく、ただ自分が気に入らないと思っていただけなのだ。 要は我侭でこれだけの大騒ぎにしただけといわれたらそのとおりだと肯定するものだ。 「で?どうした?女の子がこんな遅くに一人で出歩くのは危ないからやめた方がいいぞ?」 そう言って一はが座っていたベンチに腰を下ろす。 「あ、うん。気をつけるから大丈夫」 も慌ててベンチに腰を下ろした。 何か、また変だよなー... ちらりと隣に座るへと視線を向けて一は心の中で呟く。 年末も少し変なところがあったが、それは長く続かず、オーストラリアに居た間にそんなことはなくなっていたので、気のせいだったのだろうと自分の中でそう落ち着いていた。 しかし、先ほど電話をもらったときも、なんだかの声に落ち着きがなく、今現在もまったく落ち着いていない。 一も瑞希みたいに察してくれたらいいのに...! は全く八つ当たりとしか言いようのないことを思いながら呼吸を整えていた。 しかし、一にそこまで求めるのは酷だと自分で自分を窘めて「一」と名前を呼んだ。 「ん?どうした...ッ!?」 首を巡らせての顔を正面から見ると、は目に涙を浮かべていた。 え、何?!オレ何かしたか?? いや、違う。が何かをされてそれを自分に相談したいと思ったのかもしれない。 を泣かしたやつ、シメる!! そんなことを思いながら「どうした?」と努めて冷静に声をかけた。 「何年も、待たせてごめんなさい」 の瞳から涙がこぼれた。 『何年も待たせて』ってことは...!?オレが泣かせたのか!! 一は改めて慌てた。 「いや、気にすんなって。オレ、いいって言っただろう?大丈夫。100年だって待てるから!!」 一の言葉には首を振った。 「だい..じょぶ」 ゴシッとは目元を乱暴に拭いた。 心配そうに自分の顔を覗き込んでいる一に向かっては口を開いた。 「わたし、一が好き」 自分を覗き込んでいた一の目がどんどん見開かれる。 「...今、なんて?」 信じられないといった表情で呆然と言う。 もう一度言うのはかなり気合が要るのに、と思いつつもそれこそ何年も待ってたら1回聞いただけでは信じられないのかもしれない。 は一度深呼吸をする。 「ずっと待ってくれてありがとう。わたし、一が好きみたいです。一への『好き』は他の人の『好き』とは種類が違うみたい」 一はに向かって手を伸ばし、そのまま強く抱き寄せた。 「本当か?」 「ん、ホント。けど、一。苦しい...離して」 がそう訴えるが一の腕の力はどんどん強くなる一方だ。 「、好きだ」 「わたしも..そろそろ落ちそうです!苦しい...」 やっとの訴えが耳に届いたらしく一は腕の力を緩めた。 息苦しさから開放されたが呼吸を整えていると再び呼吸が出来なくなる。 一に唇を塞がれた。 恋愛初心者に対してするそれではない。 息苦しいのとあまりに強引なのとでは思わずこぶしを繰り出していた。 見事に鳩尾に嵌る。 は立ち上がり、お腹を押さえて呻いている一に 「お願いする側がこう言うのも何ですけど...初心者レベルにあわせていただけませんか!?」 と『お願い』した。 お腹を押さえたまま一はを見上げて苦笑する。 「わりぃ。あまりにも嬉しくて...」 にへらと締まりなく笑って言う一には毒気を抜かれたらしく、「殴ってごめんなさい」と深く頭を下げて真っ赤になりながら、一のおでこにキスをした。 締りのない顔が更に締りがなくなったのは言うまでもない。 一はの手を引き、ふわりと抱きしめる。 「、好きだぜ」 「...わたしも」 再び唇を合わせる。 こんどのキスは、のお願いどおりに初心者レベルの触れるだけのそれだった。 |
Fin
桜風
09.11.27
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