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買出しに出ていると目の前で黒服の男たちが交通整理をしている。

ここを是非とも通りたい。

迂回しようものなら倍以上時間が掛かるのだ。

「何かあるんですか?」

警察が交通整理をしているなら、何かイベントがあるのかもしれない。いや、そういうのは警察はしないんだったか...

「これから御輿が通りますので」

「...は?」

夏祭りにはまだ遠く、寧ろここら辺の祭りについては自分は把握しているつもりだが...

時計を確認した。

そろそろ客が増えるのだ。遠回りしていられない。

「あの、ちょっと。ダッシュで通りますから」

そう言って黒服の制止を振り切って通行止めにされているその通りを横切った。

ふと、賑やかな声が聞こえて走りながら振り返る。

な、何だ..アレ...

危うく足を止めそうになった。

ほんとに御輿が向かってきてた。

しかも、その御輿には男の子が乗って上機嫌に声を上げている。

その彼が口にしていた『成宮』という単語に少し引っかかりを覚えた。

何だっけ...ナルミヤ...


モヤモヤとしながら店に戻り、ドアを開けて先日永田が座った席が目に入って思い出した。

「真壁の...」

成宮と真壁は随分昔からのライバルだそうで。今でもそれは続いている。

しかし、それを誰から聞いたんだっけか。

永田はそういう話はしない。彼は真壁が一番だからライバルとかそういうの興味ないのだ。

じゃあ、親戚の誰か...

もしかしたら、自分の親かもしれない。

うーん、まあ...

だからって何かあるわけでもないし、ああやって通行止めにされるのは少し、いや、かなり迷惑だが、『成宮』という家に何か思うところはにはない。



そろそろ『CLOSED』の看板でも出そうか、と思ってドアを開けると何か『ヨレヨレ』になった親友がそこに立っていた。

「あ、もうおしまい?」

今にも倒れそうな彼女には「いや、いいよ。というか、入って。入りなさい」と手を引いて中に入れた。

水をとりあえず出して、彼女の好きなコーヒーを淹れる。

「大丈夫?」

の親友、北森真奈美は頷く。

真奈美が母校に赴任してきたということは知っている。彼女からメールで教えてもらったし。

しかし、やはり新米教師というものはこうもボロボロのヨレヨレになってしまうのだろうか。

「どうぞ」とコーヒーを出して、ついでに甘いものも出す。

疲れたときには甘いものだ。

「ありがとう...」

「何か夕飯食べてく?作るよ?」

が言うと「いいの?」と真奈美が遠慮する。

「もうお店おしまいなんでしょ?」

真奈美の言葉に

「まあ、そうだけど。真奈美は、そうだな..友達割引ってことで」

は笑った。

「友達割引?」

「そう。真奈美はお友達なので、トクベツに閉店時間をおまけです」

「だったら『割引』って変よ」

「じゃあ、割増?」

が言うと真奈美は「うーん...」と唸る。

さすが国語教師。言葉にはちょっと厳しいようだ。

自分の高校時代の国語教師を思い浮かべて苦笑した。

「何?私、何か変?」

真奈美が首を傾げる。

「ううん。真奈美ってほんとに先生になっちゃったんだね」

の言葉に

「まだ肩書きだけよ。南先生には程遠いわ」

と肩を落として言う。

そんな真奈美をは笑った。

「何言ってんのよ。いきなりの新米教師が南先生みたいにやっていけたら先生は落ち込むはずよ。いいじゃない。通いたかった高等部だったんだし」

の言葉に「そうだけど...」と真奈美は少し膨れる。

「でも、が笑って言えるのは今の高等部を知らないからよ」

「今の高等部?」

首を傾げるに真奈美は力強く頷いた。

真奈美が少し興奮気味に話す内容に何だか少しデジャヴを感じる。

「クラス..X?」

「ううん、Z」

名前は違うんだ...

しかし、真奈美の話を聞いてやっと先日永田がやってきた理由が分かった。

なるほど...

けれど、真奈美はその帰って来たB6や、担当しているクラスZの問題児たちを相手に奮闘していかなければならない。

これは、体力のある新人にしか出来ないことなのだろう。

真奈美は再び盛大に溜息を吐く。

「まあまあ。聖帝の卒業生のB6が手伝ってくれるんでしょ?大丈夫なんじゃない?」

彼らは問題児とされていたが卒業したし、みんな揃って進学をして今では各界で日本を代表する人物となっている。

結局、超問題児だったB6は凄く凄い人だったのだ。

それを導いたのは担任をしていた悠里とT6。

毎日大騒ぎだったあの1年を思い出す。

少なくとも、B6たちは経験者なのだから頼りになるのではないだろうか。あの完璧超人の従兄も真壁の傍にいつも控えているはずだし。

「気楽なこと、言って!」

あの1年間を知らない真奈美はぷんすか怒っている。が適当なことを言ったと思っているのだ。

一瞬、あの1年間の話をしてみようかとも思ったが、やめた。

自分は噂で聞いただけだし正確な話は出来ない。だから、自分が口にするのはまずいだろう。

「まあ、頑張ってよ。友達割増で時間によってはご飯作ってあげるし」

の言葉に真奈美はきょとんとして、やがて苦笑した。

「そうね。愚痴も聞いてよ?」

「なんなりと」

おどけて言うに真奈美は笑った。

「ありがと」

「どうしたしまして」

真奈美の言葉にはウィンクをしてそう応えた。









桜風
09.12.25


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