| 生の八雲を見て以来、何だかテレビの向こうにいる八雲にも何となく親近感を持つ。 「はぁ、人気者だねぇ...」 雑誌を見てそう呟き、そして担任の苦労は如何ばかりかと同情した。 真奈美は真奈美で毎日ヨレヨレになっているとか。 そうは言っても、をなるべく頼らないようにしているのか、あまり姿を見せない。 見に行ってもいいが、話によるとセキュリティの強化がなされて入るのに手続きが煩雑になったとか。 そんな煩雑な手続きを踏んでまで様子を見に行くのはどうだろう。 見に来られてもなんか居心地悪いとか気にするとかあると逆効果だ。 ま、なるべくゆっくり帰るようにしているし... そう思ってCLOSEDを出そうとしたところで「間に合った?」と声をかけられた。 「ギリセーフ。真奈美の場合はお友達割増があるから」 笑って言うと真奈美も笑った。 気になっていたので真奈美が此処に来てくれたのは嬉しいことだ。 今日は手土産があるといって、ケーキを出してくれた。 「お?これは研究しておけということかな?」 からかいながらが言うと「違う違う!」と真奈美が慌てる。 「冗談よ。ここ、最近出来たところでしょ?美味しいって言うのは聞いたことがあるわ」 そう言いながらコーヒーの準備をする。 「忙しい?」 手持ち無沙汰の真奈美が問う。 「ぼちぼち。去年までの常連さんが仕事の都合で遠くに行っちゃったからね。その分、ちょっと寂しいくらいかな?」 「ああ、南先生?」 「ご明察」 笑いながらが応える。 「先生、元気かな...」 真奈美の呟きに「あれ?」とは首を傾げた。 自分には手紙が来た。彼女が転勤してから1通だけだが届いている。 悠里が真奈美の家の住所を知らないなんてことはない。だって、ちゃんと自分が教えたし。 だったら、何故だろう... ああ、きっと今の真奈美は新任で忙しいから先生が遠慮をしているのだろう。 何となくそんな想像をして自分に手紙が来ていることを口にするのはやめた。 でも、きっと真奈美は先生から手紙が来たらそれを励みに出来るだろうに... コーヒーを2人分用意して、テーブルに移動して向かい合って座る。 最近の真奈美の悩みは自分の受け持っている生徒の補習ができないことらしい。 成績が壊滅的な生徒の指導をするようにと理事長に指示されているのだが、自分が新米だからか、生徒が一向に補習を受けてくれないそうだ。 彼女の受け持ちの生徒のひとりとは言葉を交わしたことがある。 まあ、なんと言うか。 のらりくらりというか、寧ろ真奈美が素直すぎて生徒たちの方が1枚上手なのだろう。 しかし、生徒と追いかけっこする教師の姿はもしかしたら聖帝名物となるのではないだろうか。 在校中、と言っても、入学した年に見ただけだが、あれも中々に見ごたえのある光景だった。 それと同じ道を歩んでいるのだから、彼らを卒業させられることが出来たらきっと真奈美は良い先生になるだろう。 悠里は教師になって数年の経験を経ての出来事で、真奈美はまだ今年教師になったばかりだ。 だから、その経験地の差とかあって上手くいかないことがあるとは思う。 そうか。だから、そのためにB6が講師か。理事長も粋な計らいをするもんだ。 「そういえば、先輩たちはどう?」 「『先輩たち』?あ、B6の講師の先生たちね」 「そう。どう?高校時代はアクが強くてなんと言うか、物凄く目立つ先輩たちだったけど...」 「講師になってもアクは強いし、目立つわよ。ほら、今は世界的に有名な人たちばかりだし」 なるほどなぁ... 「あ、講師の先生たちといえば」と真奈美が苦笑した。 何だろう、と興味を持つ。 「真壁先生の秘書さん」 ...うわぁ。 思わず声を出しそうになってそれは堪えたが「秘書さんが?」と続きを促す。 真奈美はあの真壁翼の存在に免疫がないので色々と新鮮らしい。 他のB6の講師たちも個性が強くてサポートしてもらっているもののそれはそれで大変だとかそういう話になる。 しかし、まあ... あの永田は元は翼のお父さんの秘書をしていたことも関係しているのか、時々翼の扱いが雑になるらしい。 見ていてびっくりするときがあるよ、と苦笑して真奈美が言うのだ。 でも、何となく想像できるのでも笑う。 永田が翼を大切だと思っているのは分かるし、最終的には翼の味方になるのはわかるけど、手を抜くときには抜くんだなぁ... 要領も良い完璧超人の従兄を思い出しては何だか可笑しくなった。 |
桜風
10.1.15
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