| 八雲が真奈美の補習を受け初め、だけどたまにサボってのお店にやってくる。 それについて、は口うるさく言わない。 親友にばれたら怒られるかもしれないが、それでも人それぞれにペースというものがある。 今まで全然..かどうかはまあ聞いていないから分からないが。 あまり勉強をしてないのに突然怒涛のように知識を突っ込まれたらそれは疲れるだけだと思う。 だから、たまの息抜き担当と思いながらは短い時間ながらも八雲がやってくることについては何も言わないで居た。 そうすると、何故か八雲は親友を連れてきた。 背の高い、スタイル抜群の変わった子。嶺アラタと彼は名乗った。 まあ、八雲の親友なら『変わった子』というのは致し方ないとか失礼なことを思いながら彼とも話をした。 最初頃の彼は、八雲とともに2人でやって来ていたが、最近は一人でもやってくる。 今日も彼は一人でこの店にやってきた。 「で、マーガレットちゃんは一人暮らしなの?」 彼はのことを『マーガレット』と呼ぶ。 本名とかけ離れており、何故マーガレットなのかと問うたら..理解しがたい単語たちをマシンガンのような勢いで口にされ、とうとうは理解を放棄した。 まあ、『マーガレット』という記号で自分を呼んでいると思えば特に困らない。 「家出娘からね」 そう言って笑う。 「ふーん。でも、一人暮らしでこうやって喫茶店を経営していて。しかも、ティンカーちゃんと同じ年って..ホント、マーガレットちゃんはSSL。しっかりしたレディだね」 アラタはよく変な略語を使う。 そこは略すのにキリが悪いんじゃないかと思うところで、略すのだ。 最初はも少し戸惑っていたが、結局略した後に言いたかった言葉を口にするから特に困らないことに気がついた。 そして、アラタは真奈美のことを『ティンカーちゃん』と呼んでいるそうで。これは学校でも変わらないとか。 それはそれで恥ずかしかろうに、と思いつつ、まあ、抵抗するだけ大変な労力の浪費だろうと思うは真奈美もきっと同じなのだろうと思って突っ込まない。 「そうえいば、外のバイク」 外と言っても店の裏においている。 「うん」 「マーガレットちゃんの?」 「そうだよ。機動力があるからね、バイクは」 「でも、結構大きいよね」 本当にバイクなのだ。原チャリではなく。 「うん。結構すきなのよ。自分で弄るのとかも」 「へえ!意外!!」 目を丸くしてアラタは興味を示す。 「オレも乗りたいと思うんだけど..どんなのが良いのかな?」 「スポーツしてる人に二輪はおススメしないな」 が言うとアラタは首を傾げる。 「何で?」 「危ないでしょ」 「じゃ、なくて。何でマーガレットちゃんはオレがスポーツしてるって思ったの?」 ああ、何だそこのことか。 は納得してアラタの手を取った。 「マーガレットちゃんってば、ダ・イ・タ・ン...ンフッ」 そんなことを言うアラタを黙殺して、はその箇所に触れた。 「これ、タコでしょ?スポーツしてる人の手」 「中々の洞察力だね、マーガレットちゃん。でも、辞めたって言ったら?」 「これ、まだ新しいよ」 ニコリと微笑んで返す。 アラタは手を引いて肩を竦めた。 まあ、そのとおりなのだ。 ふと、窓の外を見たアラタは突然立ち上がって「マーガレットちゃん、ちょっとごめん!」と言ってカウンターの中に飛び込んだ。 「へ?!何??」 あまり広いスペースでないカウンターの中に大きな体のアラタが入り込むとかなりせまっくるしい。 「外。生徒会が巡回してるみたいなんだ」 「何で隠れるの?」 「学校帰りの買い食いは禁止らしいんだよ。これまた、生徒会長サマが煩くて...」 ふーん、とは窓の外を見た。 不意に目があった生徒が居る。 彼はニコリと微笑んでヒラヒラと手を振った。 もニコリと微笑んで手を振り返す。 アラタはの陰に隠れながらそっとカウンター越しに外を見た。 生徒会長の方丈慧の双子の弟で副会長の那智がと手を振り合っている。 「知り合い?」 腰の辺りから声がして、は視線を外に向けたまま「ノン」と短く応えた。 暫くしてそのまま生徒会ご一行が去っていった。 一応は店の外に出て様子を見る。 今日は商店街の中を巡回しているのだろうか。 「行ったみたいよ?」 店に戻って未だカウンターの中に居るアラタに声をかけた。 「ホント?じゃあ、今日はもう帰るよ」 「その方が良いかもね。で、嶺君は、真奈美の補習組じゃないの?」 気になっていたので聞いてみるとアラタは投げキッスをしてきた。 「じゃあね、マーガレットちゃん」 そう言って本日の飲食代金をカウンターにおいて出て行った。 「...なんだ、彼もサボリか」 益々親友に怒られそうだと思いながらはアラタの置いていった代金をレジにしまった。 |
桜風
10.2.5
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