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片付けは中田が請け負ってくれた。

「何もしていないのだから当然だ」と永田が余計なことを言う。

一触即発、という感じになったので、永田を隅に追いやっては中田の手伝いをした。

「美味しかったね」

が言うと

「どうせ俺には作れないよ」

と中田が拗ねる。

何で此処で拗ねるかなぁ...

困った従兄だ。

は苦笑した。

「まあ、人それぞれだし。伝え聞くところによるとトモ兄は108も資格を持ってるんだって。それだけ資格を取ってる人が出来ないものがある方が面白いよ。
いや、何かあるかも。トモ兄にも苦手な何か...」

後で聞いてみよう。

はそう決心した。


この喫茶店は元々オーナーが帰国したときの仮住まいになっているので住居スペースと生活に必要なものは揃っている。

「トモ兄かマコ兄、お風呂お先どうぞ」

そう言っては奥に入っていった。

布団の数足りるかな、と呟いているの背中を見送り、「中田さん、お先どうぞ」と永田が声を出した。

「アンタ先に入れよ」

「では」と言って永田が先に入ることにした。

「パジャマとかって伯父さんので良い?」

風呂に入ろうとした永田に向かってが言う。

「いや、さっきスーパーでついでに買ってきたから私のは良い。あちらの中田さんの方はどうか分からないけどな」

そう言って永田はドアを閉めた。

何でああも『中田』と言って意地悪をするのだろう...

「マコ兄」

「聞こえた。俺も買ってくる」

そう言って店を後にする。

何だって、こうも伯父は息子たちに嫌われているのだろうか...



「ねえ、布団やっぱり足りない」

「タオルケットはあるか?」

永田が問う。

「うん、タオルケットならなんかたくさんあったよ」

「じゃあ、お前が使わない分を持ってきてくれ」

永田の言葉には頷いて回れ右をした。

「タオルケットだけで良いだろう?」

敬語で話しかけていた永田が突然口調を変えて自分に声をかけてくる。

少し虚を突かれた形になった中田はすぐには声が出ずに頷くことで返事をした。そんな弟に苦笑を漏らす。

「な、何だよ」

「あのな、誠。が居る空間で私たちは他人になるのは難しいとは思わないか?」

中田が眉間に皺を寄せて口を開いたが、それは永田に制された。が戻ってきたようだ。

「これだけあったら大丈夫?」

「お前のは?」

永田の言葉に「おふとんがある」とが返す。

それなら大丈夫だろう。

「あと、これ」

そう言って電動蚊取線香を渡す。

「そっちにはあるのかよ」

中田が問うと

「蚊取線香、火を点けるのがあるから」

と返した。

「そっちを持って来い。こっちはお前が使え」

永田がの持ってきた電動蚊取線香を返してきた。

「けど、煙たいでしょ?」

「お前が寝るのって畳だろう。火事になったらどうする。こっちはご覧のとおりだから簡単には火事にならないだろうし、私が居るからすぐに対処できる」

自信満々。

けど、それだけの実力はある。

いや、火事にならないに越したことはないし、寧ろその可能性のほうが低いのだが...

「じゃあ、あっち持ってくる。大丈夫?こっちの方が効きそうだよ?」

自分の寝る空間は窓も閉められるし、蚊の侵入を防ぎやすい。

しかし、店のほうで寝るといっている永田と中田は蚊の侵入を防ぐことが出来ない。

だって、窓ガラスが割れているのだから。

「良いから、替えて来いよ」

中田が言うとは躊躇いがちに頷き、戻っていった。


「なあ、さっきの」とが居なくなったことを確認して中田が永田に問う。

彼は溜息を吐き、

「他の人間が居るならまだしも、この3人しかいない空間で他人行儀というのはまずの目から見てやっぱり滑稽だと思うぞ」

と応えた。

まあ、確かに。

自身が他人として接しようとしておらず、相変わらず自分たちは従兄のお兄ちゃんだ。

クツクツと中田が笑い始める。

「どうしたの、マコ兄」

戻ってきたが不思議そうに中田を見て永田に答えを求めた。

さすがの永田も弟のこの行動の理由が分からず首を横に振る。

「マコ兄?大丈夫??トモ兄が夕飯に何か盛ってた?」

「するか、そんなこと。そんなくだらないことをして私に何の利がある」

すぐにツッコミが入る。

「いや、なんでもない。もう寝ろ」

そう言って中田はの持って来た蚊取線香を受け取ってそのまま追い返した。

「誠?」

永田が声をかけると中田はまた笑う。

「結局兄貴もに勝てないってことだよな」

何だ、一緒じゃないか。

そう思うと何だか可笑しくてまた笑った。

否定できなかった永田も仕方なく、苦笑した。









桜風
10.3.19


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