| 自然現象で少し持ち場を離れさせてもらった。 一度別荘に戻り、再び悟郎と担当している地点に行こうと思ったが..迷った。 「わたし、山はダメかも...」 呟きつつは歩いた。 水の音がするので、とりあえず、川に出てみることにした。 そうしたらきっと開けてて空を見上げれば星を見ることが出来る。方角が分かれば、戻れるはずだ。 歩いていくと人の声が聞こえた。 こっちにも迷子か、と思ったが、そうではなく。 ここで足を止めて正解だったな、とは胸をなでおろした。 人は少なからず裏表というものがあると思うが... 「やっぱり、見間違いじゃなかったんだ」 「何が、見間違いじゃなかったンだよ」 不意に声をかけられて思わず叫ぶところだった。 の口元を覆ってそれを未然に防いだのも声をかけてきた人物なのだが... 「突然でっかい声を出すンじゃネェ」 「仙道先輩が突然声をかけたのが悪いんじゃないですか!」 小声でが叫ぶ。 『仙道先輩』とあまり聞きなれない単語を自分に向けられて清春は少し面白そうに眉をあげた。 「んで?」 仙道が話を促したところに別の足音が近付いてきた。 再び清春の意外と大きい手がの口を塞ぐ。 真奈美がやってきた。 そこにいた那智は笑顔で真奈美を迎えた。 これはまた、本当に性格が全然変わるなぁ... 感心しながらはその場を見守り、彼らが居なくなるのを確認した清春はの口から手を外した。 「んで?何が見間違いじゃないって?」 は先日の繁華街の話をした。 そこまで強烈な第一印象を持っていなかったとはいえ、あれだけ長い時間手を振り合ったからとりあえず顔は覚えていたし、たぶん間違いないと思う。 「まァ、あいつなら、アリかもなァ」 「有り、ですか?」 あまり想像つかない。 いや、目にしたから想像ではないが何となく印象が全く違うではないか。 何より、生徒会なんてものをやっているのに... 「アイツにとってはァ、この世の中は退屈の連続なんだろォよ」 「仙道先輩、なにやら通じるものがあるんですか?」 が問うと、清春はじっとを見下ろし、やがて「ケッ」と毒づいた。 清春はふと思い出したかのように、「オメェ、ゴローはどうしたよ。一緒に居たんじゃねェのか?」とに聞く。 「お手洗いに行くのに席を外して、戻る途中から迷子です!」 最敬礼で答えてみた。 「ヴァーカ。ったく...たぶん、こっちだ」 お?あの聖帝の小悪魔と呼ばれて人々に恐れられていたあの仙道清春が親切に..ならないよね、普通。 は苦笑して清春に声をかけた。 「仙道先輩。そっちは逆です」 「ンだよ。分かってるなら迷子になるなっつうの!」 「さっき、真奈美たちが帰っていったから分かったんですよ」 の言葉に清春は胸を張っていう。 清春はまた舌打ちをして、「仕方ねェなぁ...」と呟いて回れ右をした。 「ああ、そうだ。オメェあのヘチャにはさっきのこと、言うなよ」 「ヘチャ?」 「オメェのダチで聖帝のセンセイだよ」 「ああ、真奈美ですか」とは納得する。 「『さっきのこと』って方丈君のことですよね?まあ、態々言いませんけど。話に昇ることがあったら話そうとは思っていますけど」 「まだ早ェ。黙っとけ」 タイミングがあるのか... 特に深く追求せずには清春の言葉に頷いた。 「ちょっと!ちゃん!!どこに行ったか心配したんだよー!!」 持ち場に戻ると悟郎が駆け寄ってきた。 「すみません...」 どうやら、軽く遭難者扱いされていたようだ。 まあ、実際遭難したから間違いではないが... 「さっき、ツバサが突然言うんだもん。もー、ボクホントに心配しちゃったよ」 「...真壁先輩は何を?」 「ん?この辺クマが生息してるんだって」 「はぁ...」 半信半疑というか8割信じずにが曖昧に頷くとガサリと近くの低木が揺れた。 ん? 振り返ると大きな影がぬっと現れた。 「きゃーーーー!」 は驚き、目の前の悟郎に抱きつく。 「お?ゴロちゃんちょっと役得」 笑いながら悟郎が答え、は恐る恐る振り返るとそこに居たのは斑目瑞希だった。 瑞希と目が合う。 物凄く気まずい。 「ご、ごめんなさい...」 ムッとした表情で瑞希は立ちすくんでいた。 その傍でキシシシシと清春が笑っている。 それがまた瑞希の機嫌を損ねた原因のようでは只管瑞希に謝り倒した。 |
桜風
10.4.23
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