| 「これはこれは...」 校門の前で招待状を見せて敷地内に入る。 なんでこんなにも厳重なのかしら? そう思いつつも、やっと母校に足を踏み入れることが出来てちょっと嬉しかった。 本日は、聖帝学園の文化祭。 本来、招待状がないと入れないとされていたのだが、先日ふらりとやってきた永田が「やる」と言って招待状を渡してそのまま去っていった。 誰の招待だろうと思ったら真壁翼。 いやいやいやいや...恐れ多いよ!! そう思いつつも、ありがたく受け取った。 八雲が声をかけてくれたが、さすがに彼の紹介で学校に入ったとなると色々と面倒ごとに巻き込まれそうだ。 アラタも声をかけてくれたが、最も早かったのは永田のくれた真壁翼の招待状だったので、こちらも丁寧に断った。 真奈美も同じように申し出てくれたが、それについてもアラタと同じ理由で断らせてもらっている。 「えーと...うふっ」 誰も居ない廊下でしなってみる。恥ずかしさを誤魔化すための行為だが、誤魔化す相手は居ない。 やばい、母校で迷子!! 「どうかされましたか?..ハッ!」 赤いジャケットを着た美形さんが声をかけてくれたが、同時にジャケットプレイを始める。 あれ〜?やっぱり面白い先生は標準装備なんだ、この学校... そう思いながらも道を尋ねることにした。 「迷子です」 正直に。 彼は目を丸くして苦笑する。ジャケットプレイをしながら。 「正門の辺りで地図を配っていませんでしたか?」 「あー...実は卒業生なので『いりません』って答えてしまい..迷子です」 ああ、もうホントに恥ずかしいなぁ。 の言葉に彼は納得したらしく「なるほど」と頷いた。 「そうでしたか。少し改築や増築をしましたので、分かりにくくなっていると思います。地図がもらえるところまで案内しましょう..ハッ」 「あ、ありがとうございます」 このジャケットプレイに何の意味があるのだろうか... 気になるが、たぶん、意味はないのだろう。 クセ。そう、クセのようなもののはずだ。ジャケットプレイが『クセ』ってそれもどうだろう... 「えー、と。先生..ですよね?」 理事の誰かとかではなく... 少し不安になり、伺うようにが声をかける。 「ああ、申し遅れました。聖帝学園高等部で宗教学を担当しています、天童瑠璃弥です」 「あ、わたしは近所で喫茶店してます、です」 「..?もしかして、在学中は3年間学年首位で、さらに、先日の夏休み中に行った生徒たちの補習合宿に同行してくださった、あの?」 が頷くと瑠璃弥は「それは..夏休み、生徒がお世話になりました」と礼をして..ジャケットプレイをした。 「いえ、あまり役に立ったとは思えませんから」 が返すと「いえ、ありがとうございます」と繰り返され、このままエンドレスになりそうだったので頷いて終わらせた。 「あれ〜?さん?」 声をかけられて振り返ると那智が居た。 その隣に、慧。 「知り合い..ですね。彼らも確か補習合宿について行ったんでしたね」 「ええ」とが頷く。 「方丈君たち。校内の地図を持っていないか」 「はい、あります」 そう答えたのは慧で、瑠璃弥にそれを差し出す。 「では、これを」と慧から地図を受け取った瑠璃弥がにそれを渡す。 「はい。ご面倒をおかけしました」 は深く頭を下げ、瑠璃弥は苦笑した。 「いいえ。楽しいひと時でした。それに、迷える子羊に道を示すのも私の務めです」 そう言ってやっぱりジャケットプレイをして瑠璃弥は去っていった。 「...さん、迷子だったの?」 少しからかうように那智が言う。 「私立の母校をなめたらダメね」 肯定の代わりにそういった。 那智は楽しそうに笑い、慧はイマイチ飲み込めていないようだったが「さん」と生真面目な声での名を呼ぶ。 「はい?」 「夏休み、あのアホたちの補習合宿ではお世話になりました」 そう言って深々と頭を下げる。 最初、真奈美に連れて行かれたときにはかなり警戒されていたのだが、いつの間にかその警戒心は解かれていた。 「ああ、いいのよ。あんな豪華な別荘、行ったことなかったから良い経験になったし」 そう言って笑うの言葉に安心したのか、慧は表情を柔らかくした。 |
桜風
10.5.7
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