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「ねえねえ、さん。この後どこに行くの?」

「特に決めてないよ。まあ、昔使った教室を覗きに行こうとは思ってるけど」

「昔の思い出に浸りたいんだ?年寄りくさいなぁ...」

那智の言葉を慧が窘める。

「那智、さんに失礼だろう。すみません、那智が失礼なことを言いました」

そう言ってまた深く頭を下げた。

「ああ、いいのよ。君たちより確実に年季は入ってるんだから」

カラカラと笑いながらが応える。

その返答に慧は少し安心したように表情を緩めた。

「そうだ、さん。もしよろしければ僕たちの劇を見に来てくれませんか?北森先生も出演されます」

教師が出ちゃうんだ...

は心の中でこっそりと驚き、「何時から?」と返す。

時間はパンフレットに書き込んだ。

忘れてはならない。親友の晴の舞台だ。

「分かった。遊びに行くよ」

はそう請負い、慧たちと別れた。


しかし、このエントランスホールの垂れ幕が気になる。

『嫁募集』

そんなに嫁を募集したい先生が居るのか...

自由な校風だなぁ。

「だぁれだ!」

突然背後から目を覆われた。

は反射的にその人物を投げようとして、何とか思いとどまった。

「嶺君」

「ん〜、正解。さすが、マーガレットちゃんだね」

そう言いながらの目を覆っていた手を離す。

「あまりわたしに不用意に近付かないでね。特に、背後から」

が親切にもそんな忠告をすると、アラタは首を傾げる。

「さっき、危うく反射で嶺君を投げ飛ばしそうになったから」

「って、コトは...マーガレットちゃんって、三四五?」

『さんしいご』って何だろう?続きは六七八か??

そう思ったが、ふと別の単語が浮かんだ。

「ねえ、真奈美の補習、どう?」

不意にそういわれて、もしかして自分が何かを間違えたのはわかった。何を間違えたのだろう。

「さっきの、三四郎?」

「んー、ソレ」

アラタに指差されては溜息を吐く。

真奈美が身を粉にして補習に取り組んでいるのだが、いまひとつこう..結果がババーンと現れては居ないようだ。

もうちょっと時間が掛かるのかな??

「ところで、この後予定は?」

「えーと、体育館での劇を見に行く以外は未定」

「ああ、ティンカーちゃんが出るからね」

そうかそうか、とアラタは納得していた。

「うん、さっき方丈君から聞いた」

のこの言葉に目を丸くする。

「方丈君?王様?弟??」

「えーと、慧君と那智君。生徒会の見回りだったのかな?さっき、校内で出会ったよ?」

の言葉にアラタは少し不快そうな表情をした。

「仲、悪いの?」

「まぁ...あまり良くはないね」

アラタは結構そういうのを露にしないタイプだと思っていたから意外だな、と苦笑した。

「あ、今子ども扱いしたでしょ?!」

アラタが指摘するが、

「実際、きみはまだ子供で、いつまで経ってもわたしとか真奈美に追いつけないのですよ?」

と笑って応える。

その言葉に益々面白くなさそうな表情を浮かべるアラタに手を伸ばして、途中で止まった。

「でも、オレは随分マーガレットちゃんより背が高いよね」

ちょっと勝てた、といった感じに笑うアラタに、は少し悔しそうな表情を浮かべ、そして、苦笑した。

「じゃあ、あとで。劇の後は、うちのクラスに来てよ」

アラタが言う。

パンフレットを広げて3年F組は何をするのかと確認した。

「...コスプレ喫茶?」

「絶対に楽しいから。やっくんも張り切ってるよ」

そう言ってアラタは人ごみの中に消えていった。

コスプレ...

これも時代か。

数年前のこの行事には全く出てこなかったアイデアだ。

「言いだしっぺ、誰だろう...」

お祭り好きな人が集まったクラスなんだろうと想像して、少し可笑しくなって笑った。









桜風
10.5.14


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