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体育館での劇はクラスAとクラスZの合同劇だった。

内容は..なんかのパロディだったようで、とりあえず、真奈美が非常に苦労した挙句、色々と大変だったことだけが分かった。

うん、それなりにエンターテイメントとして評価できる。

そんな評価を付けた後、アラタに誘われたこともあって3年F組に行ってみた。


「いらっしゃいませー!」

女子が迎えてくれた。

「お一人様ですか?」

「え、あ..はい」

そういえば、こうやって「いらっしゃいませ」といわれる立場で喫茶店というところに来たことはとんと久しぶりだった。

そうか、こんなに元気に言った方が良いのかな...?

「あの店はあのトーンで良いと思うがな」

不意に傍で声がして見上げると永田が居た。

「あれ?永田さんもこちらに?」

が言うと

「ええ、翼様が北森先生のサポートをされていらっしゃいますし。この準備も多少お手伝いなさったので」

と有能秘書永田智也の顔で答えた。

「お知り合いなんですか?」

を案内していた女子生徒が聞く。

正直に答えるとして、どのレベルまで正直に答えて良いのだろうか。

が悩んで居ると「ええ」と永田はさらりと答えた。

女子生徒はそれ以上詮索せず、「では、相席でも良いですか?」と問う。

「あ、はい。構いません」

が答え、「ありがとうございます」と女子生徒は礼を言った。


「ご注文はお決まりでしょうか?」

声をかけてきたのは、さっきの女子生徒ではなく、アラタだった。

「来てくれたんだね、マーガレットちゃん」

「まあ、興味あったし。えーと、わたしはコーヒーと..クレープかな?永田さんは?」

「ドンペリセットひとつ。中田さんで」

は目を丸くし、その表情を見てアラタは面白そうに、いたずらが成功したときの子供のように笑った。

「畏まりました」

そう言ってアラタは去っていく。

「ちょ、トモ兄。何、さっきの?!」

「『永田さん』」

「...ちょっと。さっきのはなんですか。永田さん」

少し棒読みに、抑揚のない声でが問う。

「裏メニューですよ」

「けど、高校でしょ?飲食の提供があるにしても、アルコールはタブーでしょ。どういうこと?!」

しかも、ドンペリといった物凄く高いお酒だ。

永田ならぽんと支払えるかもしれないが、そんな一般的な庶民には中々大変な額だと聞いたことがある。

はアルコールを嗜む程度、しかも安いお酒でも美味しいと思えるので縁がないものの話なのでよく分からないが...

永田はの問いには答える様子はなく、静かに注文の品を待っていた。


暫くして、さきに注文の品がやってきたのは永田のドンペリセットだった。持ってきたのは、先ほど永田が指名したらしい中田だ。

「な..んですか?それが、ドンペリセット??」

「てか、何でがコイツと同席なんだよ」

「私は客ですよ、中田さん?」

『コイツ』と呼ばれた永田は底冷えする声で窘めた。

「お..お待たせいたしました。ドンペリセットでございます」

そう言って永田の前にトレイを置く。

「ペリメニだ」

永田が目の前のトレイを見ながらそういった。

「ドンペリの『ペリ』がペリメニってのは分かったけど。『ドン』は?」

永田と中田を交互に見ながらが問うた。

「どんどんの『ドン』だよ」

中田が答える。

「つまり、ドンペリセットって『どんどんペリメニなんたらセット』の略ってこと?!」

「高校でアルコールの提供を疑ったお前が浅慮だ」

永田に指摘されてはグッと詰まる。

「何で、裏メニュー?ああ、ペリメニを作る手間が大変なのかな?」

首を傾げてが言うと

「これを食べている間は、指名できるんだ。このクラスの誰でも」

と永田が答えた。

なるほど、だから『裏』にしておかなければならないんだ...

真奈美から聞いた話だと、このクラスの生徒は成績は芳しくないが、人気はそれなりになるということだし。

誰でも指名と聞いたら、きっとみんな注文するだろうし、指名される側は休む暇がなくなる。

「何で、マコ兄?」

「面白そうだから」

呟くように永田に向けた問いはそんな一言であっさり片付けられた。

げんなりした表情で同席している中田に同情をしているとの注文したものがやってきた。

「太るぞ」

クレープは生クリームたっぷりだ。

「体質的にそれはない」

胸を張って返し、は一口目で幸せに浸っていたが、

「体質なんて年とともに変化するぞ」

という永田の一言でどん底に叩きつけられた。

「トモ兄って、ドSだよね」

の抗議ともつかない一言に、中田は力強く頷いた。









桜風
10.5.21


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