HOME 31





あまり広くない店内に中々豪華なメンツが揃っている。

「ねえ、何でここにしたの?」

真奈美に聞いた。

「さあ?私はみんなに呼ばれたから」

ただいま『HOME』では、謝恩会っぽいものが開催されている。

確かに、予約を入れたのは真奈美ではない。


真奈美の受け持ったクラスの生徒たちは全員卒業し、また、学校の体勢も変わるコトが決まったらしい。

ここら辺は自身が部外者なのでとくに詳しいことを知らないし、聞こうとも思わないからそんなざっくりした情報しか知らないのだが...

「この料理不思議といけるね」

そういったのは那智だ。

謝恩会っぽいものと言ったのは、とりあえず、クラスの違う那智と慧がいることと、

「えー!そうかな?ボクは結構好きだな、このパイ。さすが、ちゃんは長い年月このお店を切り盛りしてるだけあるね!」

B6がいることだ。

「あの、皆さんはまだ日本にいらしても大丈夫なのですか?」

恐る恐る聞いてみた。

在学中は、できれば近付きたくない先輩たちだった。

今でも似たようなものだが...心境的にはちょっとだけ違うけど。

「まあ、そろそろ戻らないとってのはあるけど」

そう答えたのは一で

「でも、ボクは時々帰ってくるよ。講師頼まれたし」

と悟郎が言う。

それはB6全員のことだったらしく、彼らは以前よりは頻繁に戻ってくると言う。

「だから、ここにまたコーヒー飲みに来られるよ!」

と悟郎が片目を瞑る。

「T6たちも帰ってくるしな。Of course、担任も」

「と、言ってもォすぐには戻って来れないみたいだけどな」

そうか、戻ってくるのか...

「嬉しいね、

真奈美に声をかけられては頷く。

「先輩たちって、そのために、戻ってこられたんでしょ?」

の言葉に彼らは白を切る。

まあ、どちらでもいい。
彼らが聖帝学園に戻ってきて、あの学園が変わったことは事実なのだから。


貸切の『HOME』での謝恩会っぽいものは夜遅くまで続き、翌日の営業が大変だった。




そして、季節は流れて夏となった。


そろそろ戻ってくる頃かな、とカレンダーに目を向けながらはグラスを拭いていた。

たしか、日本以外の土地では9月が年度の始まりというのが多い。だったら、受け持っている生徒をキリのいい時期まで見ると言ったらそろそろそのキリのいい時期だろう。


カランとウィンドチャイムが鳴る。

は顔を上げて、やがて微笑んだ。

「お久しぶりですね、さん」

T6と悠里が帰ってきたのだ。

「どうぞ、お好きなところに」

いつものようにそう声をかけた。

彼らは、全員カウンターに座る。

は苦笑した。変わらない。

「ご注文は、いつものでよろしいですか?」

の言葉に彼らは目を丸くした。

「ええ、お願い」

答えたのは悠里だった。

「はい」と答えたは手際よく7人分のコーヒーを淹れて、サービスでクッキーなどの焼き物を出した。

「海外赴任、お疲れ様でした。まあ、真田先生は楽勝だったと思いますけど?語学の面で」

笑って言うに「意外とそうでもなかった」と言う真田の壮大な異文化交流の話が始まった。

その話を皆は興味深そうに聞く。

そして、時計を見て皆は今日はここまでと言って立ち上がった。

「ああ、そうそう。出立前のツケも払わせてもらって良いですか?」

衣笠が言う。

ひとり嘆いたものがいたが、それは、やはり何故か鳳が持っていた出席簿の角で撃沈する。

「ええ、お願いします」

は答え、皆のツケも清算した。

「ありがとうございました」

全員の清算が済んでは彼らを送り出した。

ふと、悠里が足を止める。

「忘れていたわ」

何だろう、と首を傾げたに「ただいま、さん」と言った。

不意打ちだ、と思っていたらT6も口々にそれを言う。

「『HOME』に帰ってきたのに、言い忘れてたわ」

悠里が笑って言う。

「お帰りなさい」

この店が彼女たちの『HOME』となることができていたことがとても嬉しかった。









桜風
10.7.2


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