| 放課後、生徒会室に向かっていると保健医の星月琥太郎に呼び止められた。 「悪いが、ちょっと手を貸してくれないか?」 各クラスに保健係というものがあり、はその保健係である。 保健係は、保健医の手伝いをすることになる。 一緒に生徒会室に向かっていた颯斗を見上げると「一樹会長には僕から話しておきます」と請け負ってくれた。 「ありがとう」と言ったは琥太郎と共に保健室へと向かった。 「うっわ...」 「ドアを開けた途端にそれはないだろう...」 少し気分を害したように琥太郎が呟いた。 「もうちょっと綺麗な机でお仕事したいと思いませんか?」 「俺は思わんが、お前がそう思うなら片付けてくれ」 しれっとそう言われては肩を竦めた。 「ああ、そうだ。今日、アキから連絡があったぞ。今年も行くから泊めてくれって」 苦笑混じりにそう言われては溜息をつく。 保健室の机の上を片付ける手がどこかしらゆっくりになったように見えて琥太郎は笑った。 「どうだ、調子は」 「うん、大丈夫だと思う」 「季節の変わり目に症状が出てくることが多かったからな、お前は。気をつけろよ」 はコクリと頷いた。 琥太郎はを幼い頃から知っている。彼女の母親と自分の母親がいとこ同士。つまり、琥太郎とは『はとこ』なのだ。 そして、には姉と兄がいて、名前は『夏凛』と『晴秋』という。 先ほど琥太郎が『アキ』と言ったのは彼女の兄の『晴秋』のことで琥太郎と同じ年だ。 そして、彼女の姉のことは『夏姉』と呼んでいる。 はとこである彼らの仲の良さは、の家庭の事情にある。 の両親は彼女の7歳の誕生日に亡くなった。 そこそこ裕福な家庭だったので、を引き取って、そのまま彼女がもらった遺産を食い潰そうとする親戚から彼女を守るために、夏凛が星月家に頭を下げた。 その当時、夏凛も大学生であったが、彼女は大学を辞めて就職した。妹と弟を自分の手で養おうと思ったのだ。しかし、仕事の都合上普段家にいられないのでは預かって欲しい、そして、弟は全寮制の高校に進学していたので長期休暇の時には置いてほしいと頼んだのだ。 それを星月が快諾してくれたため、は中学を卒業するまで星月の家で育ち、その家を琥太郎が出ていくまでの間は彼に面倒を見てもらっていたのだ。 が星月学園への進学を決めたのは、星が好きだったことは勿論だが、全寮制であることも理由としてあげている。 「気にすることは無い」と言ってくれているが、やっぱり気を使ってしまう。 『母の従妹の家』なんて、少し遠い親戚だ。 しかし、琥太郎がこの学園の保健医として勤務していることを知らなかったので、は入学前の健康診断で「あれ?」と首を傾げ、対しての入学を聞いていた琥太郎は苦笑したと言う。 そして、「一方的に面倒を見られるのがイヤなら、俺の手伝いをするのはどうだ?」と言われて保健係となったのだ。 手伝いと言うか、片付け要員となっているだけのような気もする。 「夏姉も来るのか?」 「お兄ちゃんが来るならお姉ちゃんも来ると思う。春姉ちゃんは何て?」 理事長である星月琥春は琥太郎の姉で、やはりにとってははとこになる。彼女は姉と同じ年で、随分とお世話になった。 「さあ?ま、あの人のことだから『いいわよ』とか軽く言ってそうだよ。夏姉と似たもの同士だし」 琥太郎の言葉に「たしかに」とは頷いた。 「ま、何にせよ。去年のような不意打ちじゃないだけでもマシだろう」 笑いながらそういわれ、は昨年のことを思い出して顔を真っ赤にした。 |
桜風
11.2.11
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