Kaleidoscope 4





生徒会に入ることが決まったはそのまま生徒会室に連行された。

生徒会についての説明を受けたあと、「そういや、は保健係もやってるんだっけか?」と一樹に聞かれて目を丸くした。

「おい、どうした?」

声を掛けられて「いえ」と言って首を横に振り、「はい、保健係です」と一樹の問いに答える。

「そうか。ま、二足の草鞋ってやつだが...あんまりムリはするなよ」

「はあ...」

「覇気のない返事だなー。どうした、説明を聞いてもう辞めたくなったか?けど、一度引き受けたんだから最後まで、せめて今年度は最後まで付き合えよ」

と一樹が言う。

「あ、いえ。自分でやるといったので、そこは訂正するつもりはありません」

「んじゃ、何で覇気が無いんだよー。さっきの全力の逃走なんて惚れ惚れしたぞ」

それは、本当に全力で逃げていたから...

「いえ...」

指摘しても良いのだろうか。いや、しかしそれはどうだろう。特に気にすることでもないのだろうが、やっぱりちょっと気になったし...

どうしたものかと悩んでいると「ふふふ」と笑い声が聞こえてそちらに視線を向ける。

「どうした、颯斗?」

「おそらく、さんは一樹会長が何の前置きもなく名前で呼んだのでビックリしたんじゃないですか?」

「そうなのか?」と一樹が確認するとはコクリと頷く。

「ああ、イヤだったか?」

「いえ。そうではなく、驚いただけです。こう、なんのクッションも無かったので」

「あのね、私も最初は驚いたけど生徒会って皆名前で呼ぶことになってるみたいなの。だから、ちゃんも一樹会長に名前で呼ばれたのよ」

月子に説明されてそう言うことかと納得した。

「いいか?」と確認されて「はい、わかりました」とは頷く。

「と、いうわけで。まあ、月子のことは名前で呼んでるみたいだから問題ないけど、颯斗も名前で呼べよ。颯斗も良いな?」

と言われて、そうか、自分もそうなるんだと今更気づいた。

颯斗を見上げると

「...よろしくお願いします、さん」

と言われて

「よろしく..颯斗くん」

と返した。

「んじゃ、ま。今日はもう良いぞ。姉ちゃんと兄ちゃんが待ってるんだろ?」

「あ、はい。ありがとうございました。これからよろしくお願いします」

退室を促されたはそう言って慌てて生徒会室を後にした。



「んで?はどうなの?」

保健室に着くなり、夏凛は琥太郎に茶を淹れるように言ってその作業をしている彼に向かってそう聞いた。

「まだ入学したばかりじゃないか」

「でもねー。やっぱ、気になるわけよ。こんな狼しかいないところにぽーんと入っちゃうんだから」

腕組みをして心底心配そうに彼女が言う。

「でも、は大丈夫だろう?黒だし」

「それに、の腕っ節はこの学園ではもう有名だ」

2人のために淹れた茶を運びながら琥太郎が言う。

「どういうこと?」

「ありがとう」と礼を言って受け取り疑問を口にした。

琥太郎は苦笑して入学早々の事件を口にし始める。




先日、この学園に部外者の侵入があった。

『侵入』と言うか、『逃走先となった』と言うか...

この片田舎で強盗があった。

学園にその連絡が入ったため、警戒態勢は取っていたが、その体制に入る前に犯人が侵入していたらしい。

昼休憩となり食堂に生徒達が集っているなか、刃物を持った男がやってきた。

手近にいた女子生徒を人質にとって叫ぶ。

内容は良くある「こいつの命が惜しければ〜」ってやつだった。

彼は手負いの獣。だから、刺激をしない方が良い。

教師達は慎重になった。

勿論、食堂は緊迫感に包まれた。

2人を除いて。

ひとりは人質に取られた女子生徒こと、

そしてもうひとりは、保健医の星月琥太郎。

琥太郎は迷わず警察に連絡を入れた。

「おーい、警察に連絡入れたぞ」

人質に向かって彼はそう言った。

犯人の要望の中には『警察に連絡を入れるな』と言うものがあったのにもかかわらずの行動。

勿論犯人は激昂して人質を乱暴に扱った。

だが、その次の瞬間犯人は鼻血を噴きながら仰向けに倒れていく。

その動きはスローモーションで見えたと目撃者達は口を揃えていった。

「ったく...人の物を取ったらいけませんって習わなかったのかしら?」

そう言いながら犯人を静かに見下ろしていたのは人質だったで教師陣に視線を向ける。

「とりあえず、警察が来るまで縛っておくのが最良かと...」

彼女の提案に教師数名が我に返りその犯人をどこかに連れて行った。

それから少しして、サイレンを鳴らしたパトカーがやってきた。


それ以来、『せっかく入学した女子が2人もいるのに片方はちょっかいだせないぞ』ということになり、ちょっかいだせないとされたはそらなりに静かな学園生活を送っている。

ただ、クラスメイトも数名怯えているのが少々生活しづらいが、まあ、安全だからいいかと以前零していた。



「と、いうワケだ」

事の顛末を話し終わった琥太郎は自分に入れたお茶を啜る。

「やっぱ、自衛手段はないとねー」

「というかさ。が何もできない普通の女の子だったら姉ちゃんは此処の入学を絶対に許可しなかっただろう?」

ずずっと茶を啜りながら晴秋が言う。

「当然でしょう?琥太がこの学園に入ったのだって偶然だし、所詮教師が生徒を守るってのも限界があるでしょうしね」

と言って彼女もお茶を啜った。

「『所詮』って...」

呆れた口調で琥太郎が呟いたとき、保健室のドアがノックされて「失礼します」とが入ってきた。









桜風
11.2.18


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