Kaleidoscope 5





「遅かったな」と琥太郎が言う。

「どうしたの?」と夏凛が言うとは呆れたような表情を見せる。

「何で連絡をくれなかったの?!」

怒って彼女が言うが

「あはは!だって、サプライズだもん」

と全く悪びれもせずにそういう姉に溜息を吐いた。

こりゃ、何を言っても無駄だ...

「で、どうした?」

琥太郎が先ほどの質問の答えを促す。

「ああ、うん。結局生徒会に入ることになっちゃった。さっきまでその説明を受けてたの」

肩を竦めて言うに「そうか」と優しい目をして琥太郎が言う。

「生徒会?」

興味を示した晴秋に、これまでの生徒会とのやり取りを説明した。

「たしかに、会計が居ない生徒会って...まあ、ムリはするなよ?」と言う晴秋に「はーい」と返事をする。

保健係は諸事情を知っている琥太郎の近くにいたほうが色々と都合が良い上、一方的に面倒を見てもらうのがイヤでなったものだし、生徒会も何とかやっていけそうな気がしているので最後まで頑張るつもりだ。

「で、お姉ちゃん達は今日はどうするの?」

「あたしは、に泊めてもらう」

「オレは琥太に泊めてもらう」

夏凛と晴秋の返事を聞いて琥太郎を見た。

「部外者の宿泊って出来るの?」

「さっき連絡を入れておいた。まあ、は職員寮だからな。それなりに都合がつくさ」

「えこ贔屓にならない?」

覗うようにそう問うに「大丈夫だ」と笑みを浮かべて頷く。

その返事を聞いてほっとしたようには笑う。

「ありがとう、琥太にぃ」

その言葉に琥太郎は頷く。

「じゃ、早速寮に向かいましょう?」

「琥太はどうする?」

晴秋が声を掛ける。

「俺はまだ帰れない。仕事が残ってるし、まだ部活中の生徒がいるからな」

保健室を閉められなければ、琥太郎は帰れない。

「鍵は渡しておこう」と言ってポケットから自分の寮の部屋の鍵を取り出して晴秋に渡す。

「悪いな」と言って受け取った晴秋は自分を放ったらかしにして妹に構いながら出て行った姉のあとを追った。



生徒会室を閉めようと廊下に出ると「ちょっと良いか」と声を掛けられた。

「星月先生」

「さっき、が生徒会に入ったって聞いたんだが...」

そういわれて一樹は頷く。

「悪いが、少し時間をもらえないか?」

「では、生徒会室の中で」

琥太郎の表情を見て廊下での立ち話は避けたほうが良いと思った一樹は鍵を挿した生徒会室のドアを開けてそう言った。

「それで、何の話ですか?」

「今日の騒ぎは見たか?」

『今日の騒ぎ』とはきっとの姉と兄のアレだろう。

一樹は頷く。

「少し、知っておいてもらいたいことがあるんだ」と前置きをして琥太郎が話を始める。

両親が亡くなっていること。それからの生活。あと、ちょっと体調には気をつけなくてはならないことなど、の事情だ。

一樹は静かに聴き、琥太郎の話が終わったときに「わかりました」と頷く。

「ですが、何故俺に?」

「俺は、保健医としてあいつのことを気にかけてやれるが、教員が一人の生徒をあからさまに気にかけるってのはやっぱりまずいだろう?要らんやっかみを受ける。勿論、そうならないように気にかけるつもりだが、そうなると足りなくなると思う。だから、その分はと同じ生徒の不知火に頼みたい。ま、変な男に言い寄られる心配はこの間のあれで随分と減ったろうからそれは安心してるんだがな」

苦笑しながらそう言うと「俺もあの時食堂に居ました」と一樹も苦笑を漏らす。

あんな綺麗な無駄の無い動きで、自分よりもふた回り以上も大きい、しかも気が立っている上に武器も持っていたそんな男を軽々と伸したのだ。

は...」

一樹がポツリと何事かを呟いた。

「ん?」

聞こえなかったようで琥太郎が聞き返したが「いえ。のこと、分かりました」と一樹は琥太郎の頼みを請け負った。

「悪いな、お前も何かあって留年したんだろうに」

そう指摘をされて一樹は苦笑した。

たしかに、目的はある。

「まあ、そうですが...しかし、出来ることがあるのにしないのは俺の選択肢にはありません」

「恩に着るよ」

そう言って琥太郎は生徒会室を後にした。









桜風
11.2.25


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