Kaleidoscope 7





ケーキにローソクを15本挿した。

晴秋は夏凛に叱られたが、もう今更仕方がない。

火を点けて姉がニコリと笑う。

突然歌の前奏を口にし始めた。

「ちょっと!」

は慌てた。まさか、歌まで歌う気だったとは...!!

歌い始めた夏凛と晴秋。

そして、叱られて仕方なく加わった琥太郎。

何の罰ゲームだ...

は顔を覆ってとりあえずその羞恥に耐えた。

「はい、火を消してー」

夏凛に促されてローソクの火を吹き消す。

「よし!一息で消したから今年もいい年よ」

夏凛がそう言い、晴秋が立ち上がってまた食堂の厨房の方へと向かった。


戻ってきた晴秋は包丁と皿を借りてきていた。

「さ、。どんだけ食べたい?ホール全部って言っても良いわよ?琥太、まだ付き合いなさい!」

腰を浮かせた琥太郎に姉が言う。

「はいはい」と溜息混じりにまた腰を下ろす。

「星月先生、用事があるなら...」

が気を遣うが「部屋に帰って寝るだけなんでしょう。付き合いなさい」と夏凛が言う。

「まあ、もう少し付き合うよ」

「で?はどれだけ食べたい?オレは少なくて良いからな」

「俺も」

「あたしも。ほら、好きなだけそうぞ」

「ちょっとで良いよ」というに夏凛が「無理なダイエットは体に良くないのよ!」と熱くなる。

「してないから...」

「じゃあ、遠慮するなよ」

と晴秋。

「さっき夕飯を食べたばかりだからそんな、入んないよ」

の言葉に夏凛と晴秋が天を仰ぐ。

「盲点だった!」

「なあ、2人は学生のときは頭が良かったって聞いたんだが...」

琥太郎が呆れる。

何処が盲点だ。普通は思いつくだろう。

「じゃあ、これくらいで良いか?」

晴秋に言われて頷く。

彼はにケーキを切り分けて借りてきた皿に載せた。

もちろん、フォークだって借りてきている。

「琥太は?」

「俺は良いよ」

「なぁに〜?のバースデーケーキが食べらんないって言うの?!」

「どんな酔っ払いだよ。じゃあ、ちょっと...」

「姉ちゃんは?」

と同じくらいでいいよ」

結局ケーキは半分残った。

「どうするの、これ」

が聞く。

「皆に分けるには..少ないよね?」

そんな話をしているとが「あ、」と声を上げた。

「つっこちゃん!」

立ち上がってブンブン手を振る。

ちゃん」

駆けて来た月子はと同じテーブルにいる人物に視線を向ける。

先ほど廊下で見かけた人たちと、保健医だ。

「こんばんは」と綺麗なお姉さんが笑顔を浮かべて言う。

「こ..こんばんは」

思わず赤くなってしまった...

「これ、良かったら食べて。ほら、つっこちゃん..えーと東月くんと七海くんと一緒にいるからみんなで食べたらすぐなくなるんじゃないかなって思うんだけど。あれ?今日は一緒じゃないの?」

首を傾げたに「うん、今日は部活の仲間と一緒に来たの。けど、いいの?」と月子は嬉しそうに返す。

「お願いします」と言うに「ありがとう」と月子はそれをもらって一緒に食堂に来た彼らに夕飯のデザートについて報告をしていた。


「けど、って小食よね。そんなんじゃ大きくなれないわよ?」

夏凛が不意に言う。

「お..大きくなるもん。成長期はこれからだもん」

むっとしたようにが言う。

「どうかしたの?」

「みにくいアヒルの子じゃないもん」

怪訝そうな表情を浮かべた夏凛は晴秋を見る。彼は首を横に振る。

では、と琥太郎を見たが、彼も首を横に振った。

「みにくいアヒルの子ってどういう意味で言われたのかしらね?」

「お姉ちゃんもお兄ちゃんも背が高くてかっこいいけど、わたしはチビで子供だって...」

「誰が言ったの、そんなガキみたいな事」

「郁ちゃん」

「ああ、ガキだな」

頷いて晴秋が納得する。

「あの子は、また...それ、いつ言われたの?」

「...高校が決まった頃」

「つい最近だな」と溜息混じりに琥太郎が言う。

が琥太郎の家に厄介になりたての頃、彼は5歳下の女の子と男の子の双子の面倒を見ていた。

彼女の母親とその双子の母親が仲良かったが、その母親の両方とも仕事が忙しくて結局暇な琥太郎が面倒を見ることになったのだ。

双子の名前は『有李』と『郁』と言う。

有李は自分に妹が出来たみたいにを可愛がった。

だから、それが面白くなかった郁に沢山いじめられた。

そのたびに郁は有李に叱られて、それが面白くなくてをいじめると言う負のスパイラル。

それでも、はめげずにこうしてすくすくとまっすぐに育った。

これはひとえに、琥太郎とその姉と有李のお陰である。つまりは、郁以外の人間のお陰。

「そういや、この間。星月の家に遊びに行く途中に郁を見かけたぞ。ケバいお姉さんをはべらしてたな。香水臭そうな...」

何気なく晴秋が言う。

「郁ちゃん、この間は可愛い系の子だったのに...またお別れしたのかなぁ?」

いやいや、それは同時並行でお付き合いしてるんだと思うな...

大人の3人はそんなことを思いながらもの教育上よろしくないので口にはしない。

「てか、琥春が言ってたけど。郁の死因の予想は『修羅場って女の子に刺される』がぶっちぎりの1位みたいよ?親に自分の葬式を出させるつもりなのかしらね」

何気なく言った夏凛の言葉に一瞬琥太郎は痛そうな表情になった。









桜風
11.3.11


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