Kaleidoscope 8





「ごちそうさまでした」と手を合わせたは腕時計を見て「そろそろか」と声をもらした。

「どうしたの?そのチープな時計が壊れた?」

「何がチープだよ」

がつけている腕時計は晴秋から高校進学のお祝いにもらった。

ちなみに、夏凛からは携帯電話だ。

要らないって言ったら有無を言わさず彼女らの好みのものを鞄に突っ込まれた。

なので、そのまま大人しくもらうことにした。

「けど、お姉ちゃんもお兄ちゃんもあんまりわたしに構わなくて良いよ」

「どういうこと?ああ、アキが迷惑なのね」

「どう考えても姉ちゃんの方が色々とアレだと思う」

明言を避けるが机の下で思い切り足を踏んづけられた。

「だって、お姉ちゃんもお兄ちゃんもわたしに構ってるから..結婚できないんでしょう?」

「その戯言も郁?」

笑顔で夏凛が言う。

この笑顔、今日見た!!

颯斗のあの有無を言わせない迫力のある笑顔だ。

「親戚の..おばちゃんとか」

「ご自分のご息女とご子息のお片づけが済んで他人の心配をなさったらどうかしら?」

「だなー...姉ちゃんはともかく、オレはまだ早いだろう」

なあ?と同じ年の琥太郎に同意を求めた瞬間、また夏凛に机の下で思い切り足を踏んづけられた。

「よっし!じゃあ、あたしがあたしの意思で今の状態だってことを親戚のオバ様たちに分かっていただくために来年のお正月にはお休みをいただいて親戚づきあいでもしようかしら?」

目を輝かせて言う夏凛に「オレも参加しよーっと」と晴秋が言う。

「え、いや...あの...」

夏凛と晴秋の性格はよーく知っている。

というか、彼女達の親戚に対する感情を。

だから、できれば『穏便に』済ませたい。

琥太郎を見た。

「諦めろ」と口が動いている。

ですよねー、と肩を落とした。


「さて、と」とは立ち上がる。

ここでまだ半年以上先のことを気にしたって仕方ない。

「部屋に戻るの?」

「戻るけど、すぐに出るよ。お姉ちゃんは部屋にいる?」

「課題か?」と晴秋が聞いてきた。

が頷く。

「今の時期は、まだどの科も似たような課題だよな。ああ、宇宙科以外」

「うん、たぶんそうだね」

「屋上庭園か?」

「うん。お姉ちゃんどうする?」

「星にはあんま興味ないけど、が行くなら行く」

夏凛の言葉に頷いては「じゃあね」とその場を去っていった。


「お前は付き合わないのか?」

琥太郎に言われて晴秋は頷く。

「付き合うけど、このカッコだとちょい寒い。上着貸してくれ」

肩を竦めて「はいはい。俺のだと小さいだろうが文句を言うなよ」と琥太郎が言い、彼も席を立つ。

「おばちゃんにこれ返してくるから先行っててくれ」

そう言って晴秋はまたしても厨房へと足を向けた。



屋上庭園に着くと課題をしている生徒が結構な数いた。

「凄いね...」

途中で買ったペットボトルの蓋を捻りながら夏凛が言う。

「うん、凄く沢山星が見えるの」

「じゃ、なくて。この人数が屋上で空を見上げているこの光景」

「課題が多いからね...」

そう言っても腰を落ち着けて星空を見上げられる場所を探した。

しかし、時間的に人が多い。

さん」と声を掛けられてそちらを見た。颯斗がいた。

隣で殺気を放つ夏凛を放っておいては彼に駆け寄る。

「課題ですか?」

「うん、青空くんはもう終わるの?」

「ええ。それより、さっきの生徒会室でのこと、忘れたんですか?」

颯斗が言う。

「う、うん。颯斗..くん」

が気恥ずかしそうに名前を呼ぶと颯斗は微笑んだ。

「こんばんは。えーと」

少し不機嫌な彼女の夏凛に声を掛けられた颯斗は少し驚いたようだったが、すぐにいつもの笑みを浮かべる。

「青空颯斗です」

「颯斗くんは生徒会仲間なの。あと、クラスも一緒。神話科なの」

の説明に「ふーん」と面白くなさそうに夏凛が相槌を打つ。

そういや、あのときこの子の肩を借りてたわ...

夕方の大騒ぎの中での出来事を思い出す。つまり、それなりにが気を許している存在ということだろう。

「お、いたいた」

そう言って晴秋がやってきた。

そして不機嫌な夏凛とその目の前にいる男子生徒を見た。

「何だ、。早く課題をしなきゃいけないんじゃないのか?」

「あ、そうだ!」

そう言ってノートを広げた。

「えーと...」

「手伝いましょうか?」

颯斗が言ってくれたがは首を横に振る。

「ううん、ありがとう。早くしないと食堂しまっちゃうよ」と断った。

「そうですね。じゃあ、また明日。失礼します」

軽く会釈をして颯斗はその場を去っていった。

「アイツ、のことを名前呼びなんだけど...」

「琥太や郁だって呼び捨てだろう?姉ちゃん、ここは9割9分男だ。一々反応してたらキリが無いぞ?」

「何余裕見せてんのよ!」

面白くなさそうに言った夏凛は、近くのベンチにドサッと腰掛ける。

肩を竦めた晴秋は傍で唸っている妹に視線を向けた。

「どうした?」

「ちょっと見つけにくい...」

空を見上げて星座盤と見比べている。

「どれを探してるんだ?」

晴秋も星に詳しい。夏凛だけそれに興味を持てなかった。

「あーあ、つまんない」

妹の課題が終わるまで自分は仲間はずれだ。

それでも、楽しそうに話をしている弟妹の様子に思わず笑みがこぼれる。

自分が守ろうと思ったもの、たぶん間違ってない。









桜風
11.3.18


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