| どさっと自分の隣に座る人物に視線を向ける。 「あら、琥太。引きこもるのかと思ってた」 「まあ..偶には星空を眺めるのも悪くないだろうって思ってな」 言ったとおり視線は空に向けている。 「何で誕生日ケーキとか...のトラウマだろう?」 琥太郎にそう言われて夏凛はチラと彼を見た。 「あの子は、ずっと自分は誕生日にお祝いされないの?お祝いされたらいけないの?生まれてきてくれてありがとうって言われることを許されないの?」 言いたいことは分かる。 だが、の心情を慮ったらやっぱり配慮するべきじゃなかろうか。 琥太郎はそう思っている。 実家でも彼女の誕生日はどうしたものかと毎年頭を悩ませたものだった。 「最初、両親が亡くなったって聞いたとき。その理由を聞いたとき正直、あたしは..が許せなかった。 たかが誕生日のケーキ。明日で良いじゃない。 ...けどね。思ったの。あたしは今まで自分の誕生日にケーキが無かったことはなかった。料理は惣菜だったとかあるけど、かならずケーキを用意してくれてたの。 誕生日って言うとやっぱりケーキでしょう?子供だったらやっぱりケーキの上に『おめでとう』って書いてあるプレートが乗ってるのが嬉しいでしょう? あれが普通だったのよ。は、何も悪いことをしてないのよ。 だったら、何で罪悪感をずっと引きずる必要があるの? あの子はこの先ずっと馬鹿げた罪悪感のためにケーキの無い誕生日を送らなきゃならないの?」 琥太郎は言葉が見つからなかった。 夏凛の想いも分かるのだ。 腫れ物に触らないように接していた自分達にあの子は気を遣っていた。 この星月学園を選んだのだって家を出るためでもあるのだし。 「俺たちは...」 何を言おうとしたかは自分でも分からないが、琥太郎は何かを口にしようとした。 「おじさんも、おばさんも、琥春も琥太も。有李と郁も。あたしは感謝してるよ。 あの子を育てるため、って言いながらやっぱり一緒にいたら傷つけそうで怖くてあたしは逃げるために今の仕事を選んで星月のおじさんたちにを預けたんだし。 あたしだったらあんなに素直にまっすぐに育てられなかった自信はある!」 胸を張って言う夏凛に琥太郎は泣きそうな表情を向けて「俺は、何も出来なかった」と呟く。 それはだけのことへの言葉ではない。 夏凛はそれに気づいたが「そんなことないでしょ」と静かに返した。 颯斗が食堂に向かうと賑やかな集団があった。 「おー!青空、一緒にどうだー」と彼と同じクラスの犬飼隆文が手を振る。 「お邪魔しても良いですか?」 控えめにそう言いながら颯斗が近付き、「おや?」と首を傾げる。 「ちゃんにもらったの。颯斗君もどう?」 勧められて「ありがとうございます」とおすそ分けしてもらった。 「けど、さんが何で?」 「誕生日だったみたいだぜ。だから、兄ちゃん姉ちゃんが来たんだろうな。てか、妹の誕生日くらいで態々こんな片田舎に来るってどんだけ暇人なんだよって気もするけどな」 犬飼が苦笑してそういった。 「そうですね」とどこか暗い表情をして颯斗が俯く。 「けど、素敵なお姉さんとお兄さんじゃない。私は一人っ子だから羨ましいな」 月子が言う。 「夕方、廊下が騒がしかったのはあの人たちだったのか...」 星座科の宮地龍之介がケーキを味わいながらそう言った。 「ああ、けど。も失礼だよな。青空の方が背が高いからって俺に声をかけたのに訂正するなんてよ」 犬飼がそう言ったが颯斗は苦笑した。 「たぶん、犬飼君だったからですよ」 「どういう意味?」と月子が問う。 「弓道をしている人の肩に体重をかけるってのは、やっぱり避けたほうが良いでしょう?」 「そこまで考えるか、あの咄嗟で。背の高い方に切り替えたんだろう」 犬飼が胡散臭げに言う。 「まあ、僕のほうも想像でしかありませんけどね」 本人しか分からないことを此処で論じても仕方ないと思った颯斗はそう言って話を終わらせた。 |
桜風
11.3.25
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