Kaleidoscope 15





と月子が保健係の仕事をしていると月子の携帯にメールが入った。

「ねえ、ちゃん。このあと何か用事ある?」

特に生徒会の仕事もないし、課題的にも難しいものではない。

「大丈夫だけど、どうしたの?」

「うん、皆でお茶会をするんだって。ちゃんも一緒にどう?」

お茶会?

は首を傾げて、そしてその角度のまま頷いた。


暫くして琥太郎が戻ってきた。

これにて本日の保健係の仕事は終了し、月子に誘われるまま食堂に向かった。

そういえば、食堂の新作ケーキが何たらと月子が言っていたことを思い出す。

案の定、食堂のテーブルの上にはケーキが沢山置いてあった。

『お茶会』とは、『食堂の新作ケーキを皆で食す会』のことのようだ。

じんわりと汗をかいた。ケーキ自体、食べられないこともないが、あまり得意でもない。やっぱり両親の死を連想してしまうのだ。

「お疲れ様です」と颯斗が声をかけてきた。

「どうしたの、これ」とが苦笑して声を掛ける。

「僕がさっき職員室で紅茶をもらったんです。それで、宮地君に会って、一緒にどうですかと誘ったら食堂の新作ケーキがあるからそれを食べながら楽しみましょうって話になって」

「食堂に向かう道すがら神楽坂に会ったんだ。そして、食堂まで来たら東月たちにも会って。だったら、皆で紅茶を飲みながら新作のケーキを味わおうというということになったんだ」

颯斗の言葉を引きついで星座科の宮地龍之介が言う。彼は弓道部で月子とはチームメイトだ。

「あと、錫也がこれ、作ってくれたんだぜ」

そう言って七海哉太が皿に乗っているクッキーを指差した。

学校一のカリスマシェフ、東月錫也のクッキーが食べられるとはこれまた幸運なことだ。

「あ、皆知ってると思うけど。一応改めて紹介するね。ちゃん」

「ホント、入学して1年経った後の紹介ってちょっとこう..違和感があるね」

苦笑してが言うと「そうだね」と月子も笑う。

ふと、目があったのは神楽坂四季で、彼は星詠み科の生徒だ。

以前、彼がふらふらと廊下を歩いているのを目撃したは思わず声をかけた。

調子でも悪いのかと思ったのだ。

しかし、体調不良とかそうではなく、何となく寝ながら歩いていただけのようで、その器用さに感心した。

それ以来、神楽坂は廊下でを見るとなぜか持っている飴をくれる。

「神楽坂くんがこういうところにいるのって新鮮」とが笑う。

さんは神楽坂君と知り合いだったんですか?」

「うん。結構前に知り合ったよね?」

が言うと神楽坂はコクリと頷いた。

「飴、あげてる」

「それって、が餌付けされてるってことか?」

からかうように七海が言う。

「そんなことないよ」とは拗ねたように返した。

は七海とも知り合いだ。

彼は頻繁に喧嘩をして怪我をしては保健室にやってくる。だから、琥太郎がいないときは保健係として治療を手伝っているのだ。

彼は必要ないと言うが、片手しか使えない状況のときは言いくるめて手を貸す。

だって、難しそうにしているのだから。


お茶会が始まった。

颯斗とは生徒会とクラスで一緒だからそこまで驚かないが、東月の気配りには驚いた。

噂では『オカン』とクラスメイトからも言われているとのこと。

なるほど、と納得してしまう。

「そういえば、」と声をかけてきたのは宮地だ。

「なに?」

「昨年のの誕生日ケーキ。あれは何処のものだ?」

ああ、そういえばアレは月子に食べるのを手伝ってもらった。たしか、幼馴染たちではなく、部活の仲間と食べたんだったな...

「さあ?兄が買ってきたものらしいからわたしは良くわかんないけど...聞いておこうか?たぶん、兄の職場の近くだと思うけど」

「そうか」と少し残念そうにしている。

「どうしたの?」と聞いてみると「あのときの生クリーム。うまい堂に勝るとも劣らない美味さだった。味は勿論、食感やその甘さのバランス」とクリームについて語り始める。

長い。

クリームについての語りが長い...

はぽかんとその講義を聞いていた。宮地はどこかストイックなイメージがあるから甘党というだけでも驚きだと言うのに、このクリームに対する半端ない情熱。なんだ、これ...

「宮地君、さん驚いてるよ」

クスクスと笑いながら東月が指摘する。

「ねえ、さっきのどういうこと?彼女の誕生日になんでケーキがあるの?」

昨年の騒ぎを知らない土萌が月子に問う。

月子は困ったように笑って昨年の話をした。

「えー!ずるい!僕だって食べたかった...!」

立ち上がって土萌が主張する。

颯斗が少し面白がってを見た。

彼女は溜息をつき、

「今年もやってくると思うから...」

と返す。

「ホント?!いつ??」

「そう遠くない未来」

「あと半月..もないですよね」

笑いながら颯斗が言う。

「本当か?!」と目を輝かせた宮地に「たぶんねー」とは投げやりに答える。

「あんたの誕生日、賑やか...」

「今年は大人しくしてくれるといいけど」

神楽坂の言葉にやっぱり投げやりには呟いた。









桜風
11.5.6


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