| 「さん」と声を掛けられて振り返ると東月が立っていた。 「おはよう」とが声を掛けると「おはよう」と彼も返す。 「昨日はありがとう。月子、すぐに元気になったみたいで俺達も安心したよ。さすが、やっぱり女の子同士の方が相談しやすいのかな?」 少し寂しそうに東月は言う。 「んー...まあ、今回のはそうかも。けど、わたしが言わなくても分かってると思うけど。東月くんたちの存在はつっこちゃんにとって大きいと思うよ」 の言葉に表情を緩めて「ありがとう」と彼は言った。 そういえば、あの悪戯の犯人が分からないままだなとは考えながら歩いていると「ぬ」のみで歌を歌っている人物が目の前を横切った。翼だ。 「おはよ」と声を掛けると「ぬ?あ、書記その2。おはようなのだ」と返された。 ふと、犯人像が浮かんだが、いやいや、むやみやたらと疑うのは良くないと首を横に振る。 「どうかしたのか、書記その2。気分でも悪いのか?」 心配そうに顔を覗きこまれた。 「ううん、大丈夫」 「さっき保健室に行ったけど、誰もいなかったからな。書記その2が行っても見てくれる人がいないのだ...あ、でも書記その2は自分が保健係だったよな?」 翼の言葉には一度目を瞑る。 そしてゆっくりと瞼を開き、 「ねえ、翼くん。質問に答えてほしいんだけど」 と、これまで一度も出したことの無い優しい声音で彼を見上げた。 「ぬ?ど..どうした、書記その2?!ちょっと、怖いのだ...」 「正直に、包み隠さず答えてね。ねえ、翼くん。保健室に何をしに行ったの?」 「ほ..保健室には...えーと...」 翼の目が泳ぐ。 「体重計......弄ってた。昨日の朝」 不意に加わった第三者の声に「ぬ!?」と翼が声を上げる。 「神楽坂くん、おはよう。そして、今の話を詳しく」 とが促す。 「昨日の、朝。「ぬ」で歌を歌っていた。体重計を解体してた」 「ありがとう、よぉーーーーく、分かった。ねえ、翼くん。今すぐ直しておいで?」 やはり優しい声音の。 「え、...い、イヤなの「直してらっしゃい」 「だ」まで言わせてもらえずが言葉を重ねる。ずいと迫ってくるに翼は「こ、怖いのだ...」と涙目になる。 「そう、じゃあ。このことを颯斗くんに話して、颯斗くんから翼くんにお話してもらおうかなー?」 とが言うと「ごめんちゃい、今すぐ直してくるのだ!」と言って保健室の方向へ走っていった。 「すごい、『颯斗くんに言っちゃうぞー』って『なまはげに食べられちゃうぞー』みたいなもんなんだ...」 「誰がなまはげですか?」 振り返ると笑顔の颯斗が立っていた。 「お..おはよう」 「おはようございます。今、涙目の翼君とすれ違いましたけど、何かあったんですか?」 は月子のくだりは綺麗に消して保健室の体重計の話をした。 「なるほど。それで翼君は直しに行ったんですね?」 「うん、だから今回は颯斗くんは知らなかったことにしてあげてね」 の言葉に颯斗は「わかりました」と頷く。先ほどの様子なら同じことはしないだろう。 「けど」と言って颯斗はクスクスと笑う。 が首を傾げると「さんも中々...」と言う。 「どういう意味?」 「翼君のことは少しさんに手伝ってもらった方が良いみたいですね」 「それは、やっぱり颯斗くんに任せるよ」 はそう言って笑う。 「月子さんは元気になったみたいですね」 神楽坂と別れて教室に向かいながら颯斗にそういわれた。 「うん、そうだね」 「ちょっと考えてたんです。今日も元気なかったら皆で企画してまたお茶会をしてはどうかと。ほら、一昨日の月子さん、凄く喜んでくれてたみたいですし。勿論、さんも誘って」 そういわれては心の中で苦笑する。 さすがにあの量の甘いものが重なると部活などで運動をしている月子も体重が増えてしまうだろう。 しかし、その話をするわけにはいかないし何より喜ぶことには違いない。 「まあ、喜ぶと思うよ。つっこちゃん甘いものが好きみたいだし」 「おや?さんは甘いものはあまり好きではないのですか?」 「別腹現象が起きないからね。許容量とその後の食事のことを考えてセーブしちゃう」 笑いながらが言う。そういえば一昨日も月子ほど食べていなかったことを思い出して「なるほど」と颯斗は頷いた。 「けど、みんなでお茶をするのは楽しかったよ」とが言い「では、次回があればまた誘っても良いですか?」と颯斗が言い、「お願いします」とは笑った。 再びお茶会が開かれ、その後壊れていない体重計に乗った月子が本気でダイエットを考え始めたのはそれから少し後のことだった。 |
桜風
11.5.13
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