Kaleidoscope 19





夏凛は時計を見て「そろそろ..かな?」と呟く。

残り10分を切った。

の体力もそろそろなくなった頃だろう。

だから、きっと勝負に出る。

この学校をを探して駆けていただけではない。校舎に入るために使えそうな何かとか、そう言うのを気にしながら追いかけていた。

校舎の中に入れないコースに追い込んでいた。

しかし、1箇所。ただひとつだけ頑張れば何とかなるかな、と思う場所があった。

結構しっかりした枝だし、の体重と運動神経を考慮すればそこから校舎の2階に飛び移れる場所があった。

のことだ、そこを狙っているに違いない。

だから、その木に向かって駆け出した。

しかし、どうやら遅かったらしくは木によじ登っている。

「うっそ!」

どうやら、晴秋の方が追い込みに失敗したらしい。

「負けたかぁ」

これで追いかけて足を滑らせたら危険だ。

いやはや、妹に負ける日が来るとは...

そう思っていると自分の横を風が駆け抜けた。

「アキ?!」

危ないから追いかけるなと言おうとしたところでが枝に乗り、そして足を滑らせたのか頭から落ちた。

!!」

ヘッドスライディングした晴秋がを抱きかかえている様子が見えた。

腰を抜かして地面にへたりそうになったところで

「姉ちゃん、琥太呼んで!保健室にすぐ来いって!!、久々の発作」

と指示された。

保健室に向かっていく晴秋の姿を見て、膝をつきそうになった自分の足を叩き、叱咤して駆け出した。

携帯は荷物と共に寮に置かせてもらっている。だから、今の自分には琥太郎との連絡手段が無い。

だったら、放送設備のあるところ...職員室!



!」

生徒会室の窓から見下ろしていた一樹が声を上げる。

ちょうどが足を踏み外したその様子を目にしたのだ。

しかし、凄い速さで晴秋が突っ込んできた。

間に合ったのかどうかは生徒会室からではわからない。

しかし、晴秋が少し離れた姉に「発作」と叫んでいた。だから、怪我で琥太郎を呼んだのではないと言うことは分かった。

「何て無茶を...」

ほっと息をつき、そう呟いた。

それから間もなく校内放送が流れてきた。

『琥太、すぐ保健室!』

一言で終わる校内放送。

ホント、の身内ってどうしてこうも...

切羽詰った彼女の言葉にどんな想いが込められているかが良く分かる。



「俺、もう此処にいるんだけど...」

保健室で待機していた琥太郎は全校放送を耳にし、の診察をしながらそう呟いた。ある意味、とんだとばっちりっだ。

診察といっても、昔から見ていた発作と同じなので当時医者に言われたとおりの処置だ。

喘鳴は随分治まっている。

先ほど晴秋が連れてきたときには正直自分で対処しきれるかと不安にはなった。

しかし、自身の体力も随分と備わっていたので、暫く座位で呼吸をしていたら落ち着いてきたようだ。そろそろ横になっても大丈夫だろう。

「アキ、を横に」

琥太郎がそう指示すると「大丈夫か、ゆっくりで良いぞ」と声をかけながら晴秋がをベッドに寝かす。

「全く、季節の変わり目は気をつけろと何度も言っているだろう」

「ごめんなさい」と返したのはで「に言ったんじゃない」と琥太郎が指摘する。

「忘れてたんだよ、最近随分と元気だったから」

「お前が間に合わなかったら、はどうなってたか...」

また守れないところだった。

琥太郎が言う。

「ああ、分かってる。とりあえず、姉ちゃん探してこっち寄越すわ。、生徒会室に鞄があるんだろう?」

晴秋に声を掛けられてはコクリと頷く。

「んじゃ、色々回収してくるわ」

そう言って保健室を後にする。

「ああ、でも、。お前も。あんな木から校舎に飛び移ろうなんて考えるな」

晴秋が出て行った後に琥太郎は布団を目元まで被っているに向かって説教を始める。

「ごめんなさい」と自身が相当堪えているようで、琥太郎もそれ以上は言わないでおいた。

何よりの元凶がそろそろやってくるので、そっちに対する説教を準備することにした。









桜風
11.5.20


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