Kaleidoscope 20





職員室に行って教師陣に怒られて平謝りをし、姉に保健室に行くように言って晴秋は階段を目指した。

懐かしいドアをノックする。

「はい」と中から声がしたためドアを開ける。

「あ、」と呟いたのは中にいた生徒会会長だ。確か、不知火一樹と言ったか...

の鞄があると聞いたんだが」と晴秋が言うと「ああ、はい」と納得したように彼はの荷物の置いてあるテーブルに向かう。

晴秋は部屋の中を見渡した。

複雑な気持ちを抱いていると「これで全部だと思います」と声を掛けられた。

「ああ、すまないな。ありがとう」

と礼を言って受け取る。

が世話になってるな、ありがとう。琥太から聞いている。事情を知ってくれているそうだな」

「はい」と彼は頷いた。


あまりにも落ち着いているので面白くない。

だから、「他のメンバーは?」と聞いて既に帰ったことを確認して「君は星詠み科だな」と指摘した。

驚いたような表情を浮かべた一樹だったがすぐに、その表情は彼の顔から消えた。

から聞いたのだろうと思ったのか「ええ」と頷く。

は見えてるか?」

だから、面白くなくてもうちょっと意地悪をしたくなった。

「...は?」

一瞬で表情が変わる。

それが見たかった。

満足そうに頷く晴秋に怪訝な表情を浮かべた一樹は「どういうことですか?」と質問を重ねた。

「オレも、数年前此処に通ってたんだ。星詠み科だ」

晴秋の言葉に一樹はさらに驚いた表情を浮かべ、同時にどこか合点がいったような表情を浮かべた。

のやつ、やけに星詠みの力のことを知ってるなって思ってたんです。教えてたんですね...すみません、お名前を聞いても良いでしょうか」

「ああ、すまない。晴秋だ。には星詠みの力の話は適当にでたらめを交えて話をしたことはあるな」

笑いながら晴秋が言う。

「でたらめを交えて?何故?」

は見えないからだよ」

晴秋の答えに一樹の眉間に皺が寄る。

「すみません、どういう意味ですか?」

「君は、この学校に入学してくる生徒。大まかに分かるだろう?例えば、去年の新入生のこととか分かったんじゃないか?女の子が入ることも」

晴秋の指摘に一樹は頷く。

「けど、女の子は1人ではなく、2人だった。君には1人しか見えなかっただろう?」

「どうしては見えないんですか」

「あの子は生まれてすぐに死んだからだよ」

「はあ?!」

思わず声を上げてしまい、一樹は「すみません」と慌てて謝罪する。

「それは一体どういうことでしょうか」

「ああ、逆か。は死産、死んだまま生まれたんだがな。医者がそれを口にしようとしたら産声を上げた。
間違いなく心臓は止まっていたし..まあ、一般的に死んでいた状態だったらしい。
おそらく、そのときに星の定める運命から外れたんだろう。だから、星詠みの力であの子は見えない」

「本当に、それが原因で?」

覗うように言う一樹に「さあ?」と晴秋は肩を竦める。

一樹は少し不機嫌そうな表情を浮かべた。

「推測だよ。第一、星詠みの力自体『良く分からん不思議な特殊能力』くらいのレベルの理解度だし、自分自身の認識だってそんなもんだろう?星が定めた運命を見せられるとか、感じられるとか。形として見えるものでもなく、数値として表すことができるものでもない。
だったら、のことだってそんな曖昧の推測で良いじゃないか。現実に、見えない。
けど、未来が見えてしまうお前にとっては貴重じゃないか?」

が、ですか?」

「答えのわかってるクイズほど詰まらんものはない」

「でも、今日。晴秋さんは分かってたんじゃないですか?が木から落ちるって」

だから、迷うことなく足を止めることなくあの木の元へと走ったのだろう。

指摘された晴秋は苦笑した。

「なあ、もっと広い視野を持て。がもしいなくなったとする。周囲はどうなる?に関する直接の未来は見えない。けど、巡り巡っての未来はオレにだって見える」

「晴秋さんと..お姉さんの未来は変わりますね。あと、星月先生もおそらく...」

「そういうこった。あの子は見えない。だから、周囲を見ておく。
あとは、オレのこの力は生まれつきあったもののそんなに強くなかった。けど、親が死んだときに一気に爆発してしまったみたいでなー。親が亡くなるとき、すげー嫌な予感がした。こう..体中を虫が這っている様な、そんな感覚。
今日、を見たときにそんな感覚があったからな。こりゃまずいぞ、と思っただけだよ。
結局、勘だ」

自嘲気味に笑う晴秋に一樹は何もいえなかった。

星詠みの力があったにもかかわらず、何も出来なかったと自分を責めているように見えて、その気持ちが分からないでもなかった。









桜風
11.5.20


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