| 5月にはオリエンテーションキャンプがある。 昨年も同じ時期にあった。 校外学習というやつだ。 遊び心もあり、肝試しもある。 しかし、肝試しは夏の風物詩であって春の風物詩ではなかっただろうと何となく昨年と同じことを考えた。 全校で女子が2人しかいないため、クラスは違うもののと月子は同室となる。 荷物を置いてそれぞれのクラスに分かれて活動を行うことになっているのだが、月子の様子がおかしかった。 「どうかした?」 ジャージに着替えながらが問う。 「うん...ねえ、ちゃんは幼馴染いる?」 いなくもない。 「いる..かな?」 「今でも仲良いの?」 仲..は、悪くないかな? 「悪くない、かな?」 というか、幼馴染と言っても全員年上だし、お陰で生活のペースが違うから会うことが中々無い人だっている。 「喧嘩とかしたこと、ある?」 「喧嘩...?ない、かな?」 いじめられたことは度々あったけど。 「そっか」 「東月くんとか七海くんとかと喧嘩したの?」 が問う。 彼女の幼馴染といえば有名人だ。仲が良いことでも有名なのだが... 「うん...」としょんぼりしながら言う月子にはちょっと困った。 「でも、ほら。男女で考えの違いってのは必ずあると思うよ」 ましてや他人だ。家族でも中々気が合わないとか意見が合わないとかあるだろうに。 の言葉に月子はしょげたまま頷いた。 こういうとき、自分は的確なアドバイスが出来ない。 幼馴染と言っても皆年上で、今、交流のある幼馴染に至っては教員として世話になっている。 というか、琥太郎を幼馴染と言っても良いのだろうか...? 「先、行くね」 いつの間にか着替えていた月子がそう言って部屋を後にした。 昼食の準備を始めた頃、少し離れた天文科が賑やかだった。 どうやら幼馴染達は仲直りをしたようだ。 「夜久は料理てんでダメって聞いたけど、は卒が無いよな...」 しみじみと言われた。 振り返ると犬飼が立っていた。彼は月子と部活が一緒だからそういう話もするのだろう。 「まあ、つっこちゃんには東月くんがいたからねぇ」と笑うに「だよなー」と犬飼も笑った。 そして夜になり、この行事最大のイベント、肝試しの時間がやってきた。 誰と組むかとかそういうのはくじだが... 「縁があるねぇ」 が呟くと「そうですね」と颯斗も頷く。 実は昨年もくじだったと言うのに、颯斗と一緒に歩くことになったのだ。今年で二度目。 颯斗はそのことについてクラスメイトから指摘されたが、くじなのでそれはどうしようもないと思う。 何より、今回は昨年と一緒だったのだから最後にくじを引くように訴えられてそれを飲んだ上でのこの結果。 誰も文句が言えなくなった。 「というか残りのみんなは男子同士で組んで肝試しなんだね」 「このイベントの趣旨が良く分かりませんよね」 とてとてと歩きながらと颯斗はそんなことをのんびり話をしている。 「ところで、さんはこういうのは得意なんですね」 『こういうの』とは、肝試しのことだろう。 「苦手ではないだけ。ほら、驚かせる気満々の人を見て驚くのってちょっと癪だし」 肩を竦めて言うに颯斗がクスクスと笑う。 「月子さんは苦手だって言ってましたね」 「つっこちゃんは『女の子』だなぁ...」 しみじみと言うに颯斗が少し驚いた表情を浮かべる。 「さんだってちゃんと女の子ですよ?」 「七海くんに『男の約束』させられたけどね」 そのことを知らなかった颯斗は驚き、は笑いながら以前月子のことで相談を受けたときの話をした。 「それは、七海君が失礼ですね」 「そうかな」と笑うと「さんはこんなに可愛いのに」と颯斗が言う。 「...颯斗くん?」 が首を傾げて見上げると「だって、こんなに小さい」と言って笑う。 が密かに身長を気にしていることはこれまで会話をしていれば何となく分かることだ。 「もう!小さくないの。標準なの!!」 そう訴えるが、は確か17歳女子の平均身長には届いていなかったはずだ。 「そうですね」 指摘せずにそう言うと「颯斗くんは時々意地悪だ」とが膨れる。 これは確かに構いたくなる。 彼女の姉兄や一樹のことを思い浮かべて颯斗は納得していた。 「すみません、冗談が過ぎました」 「もう知らない」と言っては歩調を速めるが、やっぱり身長差のお陰で颯斗があっさり追いつく。 その後、月子に誘われて東月たちの部屋に遊びに行き、も存分に枕投げを楽しんだ。 先ほどの肝試しで颯斗にからかわれた分、ストレスを発散させるべく本気を出してしまい、男子3人が降参したのはその場にいた5人の秘密となった。 |
桜風
11.5.27
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