Kaleidoscope 23





星月学園の体育祭は夏にある。

6月という梅雨に入るかどうかの時期だ。

しかし、なぜか体育祭の日は大抵雨が降らない。

「生徒会が雨乞いならぬ、日乞いをしてるって噂がありますよ」

が笑いながら一樹に言う。

「全く...ひとえに、俺の日ごろの行いの良さだろう」

そう零す一樹に「でしたら、早くその書類を仕上げてくださいね」と颯斗が笑顔で指摘した。

「う..はい」

うな垂れて一樹は書類に目を通し始める。

「そういや、。そっちの準備の方はどうだ?」

「ええ、指示されたところまでは進めていますよ。あとは、結果がどうかですけどね。それと、追加で書類もまだ出していただくことになってます」

の返事に一樹は満足そうにひとつ頷いた。


生徒会室のドアがノックされ、颯斗が応じると入ってきたのは金久保だった。

「おう、誉。どうした?」

「この間の、言われた書類を作ってきたよ」

月子の知らないところで弓道部は彼女のために動いていることがある。

女子更衣室を作りたいと考えているのだ。

体育祭のクラブ対抗二人三脚リレーで優勝したクラブには生徒会からご褒美があるというルールがある。

今回、優勝を目指している弓道部部長は優勝した暁には女子更衣室を希望しようと考えており、その相談を生徒会長の一樹が受けていた。

予算的な問題等があるので、昨年度から内容を詰めていたのだが、ある程度業者の選定や予算の配分等もほぼ確定となっているのであとは更衣室に必要な機能等についてまとめてくれと依頼したのだ。

更衣室なのだからオーソドックスに着替えが出来るスペースだけで良いかもしれないが、彼らが希望しているのは弓道部員の更衣室なので、何か特別な設備がいるのかもしれないと思ったのだ。

「ああ、すまないな」とその書類を受け取った一樹はざっと目を通した後、に渡す。

この担当はに任せている。女子更衣室なので女子の目線が入った方が良いだろうと一樹が指名した。

は書類に目を通して「すみません、金久保先輩」と書類の記載内容の不明箇所を確認し始めた。

一通り打ち合わせが終了しても納得した。

「そういえば、優勝の方はどうですか?」

が問う。

「うん、皆やる気満々だからね。此処まで話をつめたし、できれば僕の代でそれを実現したいとは思ってるんだけど...」

少し困った表情で金久保が言う。

「きっと大丈夫ですよ。うちは弓道部が一番スポ根してますもんね。体力もチームワークもいちばんなんじゃないですか?」

「うん、そうだね。皆仲が良いよ。そういえば、数年前のOBがスポ根にしたって聞いたな。そのとき、インターハイに出場して優勝したとか...けど、それ以来インターハイの出場もないから」

「でも、今年は出場が決まったんですよね?」

が言う。

インターハイの予選大会のあった日の夜、月子が寮のの部屋に押しかけてインターハイ出場について喜びを伝えたのだ。

「うん。だからそのとき以来の優勝を目指すよ」

「でもその前に、体育祭のクラブ対抗リレーだよな」

一樹の言葉に金久保は頷き、「じゃあ、僕はこれで」と言って生徒会室を後にした。


「なあなあ、書記その2。さっきの話ってどういうことなのだ?」

ひょこっと覗き込んできた翼がそう聞く。

「さっきの話?ああ、これ?」

そう言って金久保から受け取った書類に手を置いた。

「ほら、ウチの学校って女子の受け入れを始めたといっても全然女子が入らなかったでしょ?それに、それ以前が男子校だったから、まあ、当たり前なんだけど、男子に対する施設設備は充実してるけど女子のはないからね。
弓道部も道場の近くにある更衣室は男子更衣室だけで、つっこちゃんは体育館の更衣室を使ってるんだって。そしたら往復の移動だけで結構かかるでしょう?それでなくとも練習量が多い部だし。だから、道場の近くに更衣室をって今の金久保先輩とか副部長の宮地くんが去年の夏くらいから更衣室のことを相談に来てたの。
共学になったといってもやっぱりハードの整備がまだまだだからね」

の言葉に「書記その2もやっぱり不便なのか?」と翼が問う。

「お手洗いがねー...まあ、つっこちゃんと2人だし数は足りてるけど、場所が...」

の言葉に彼らは「そういえば」と呟く。

校舎の中で言うと、男子トイレはそこかしこにあるが、女子トイレは職員室のある1階と、この生徒会室のある5階にしかない。

「ま、そういう意味で弓道部の皆様は頑張ってるつっこちゃんのために何かしたいって思ってこの体育祭のご褒美に目をつけて頑張ってるってわけ。翼くん、分かってると思うけど、つっこちゃんには内緒よ?」

の言葉に「わかってるのだ」と翼はしっかり頷いた。









桜風
11.6.3


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