Kaleidoscope 26





体育祭が終了しては忙しくなった。

弓道部の要求の女子更衣室について生徒会側でまとめた申請書を学校側に提出するための資料作成のために遅くまで残ることが多い。

「お邪魔するよ」とドアを開けて入ってきた人物に「邪魔をするなら帰ってください」と笑顔で颯斗が応じる。

「すみません」とドアを閉めて一旦外に出たが彼は「ごめん、邪魔をしないから入れて」とこっそり入ってきた。

彼は白銀桜士郎といい、西洋占星術科の3年で一樹と同じ年だ。

一樹と仲が良いことと、元新聞部部長だったことから生徒会の広報の手伝いをしてくれている。

今回は体育祭の広報の打ち合わせに来たようだ。


「おー、女神ちゃん」

「いい加減、その呼び方辞めてくれませんか?」

真顔でが言う。

「えー、良いじゃん。可愛いと思うよ」

応える気がないようで白銀はしれっと返す。

月子は『マドンナ』と呼ばれている。

それも恥ずかしいが、『女神』とどちらが恥ずかしいかと聞かれれば...どっちもどっちか。

「それで、女子更衣室の進み具合はどう?」

促されては一度、一樹を見る。

彼が頷くのを確認して今の状況の話をした。

「じゃあ、学校側の内諾は取れてるんだね」

「今、丁度弓道部が強いってのも学校側が頷きやすい材料でしたからね」

「だろうねぇ」と白銀は頷く。

「夏休み中に手配ってことになるのかな?」

「そうですね。たぶん、年度内の完成ってところだと思います。まあ、もう少ししたら生徒会の手を離れて学校側の手配になるのでスケジュールは聞かなきゃ分かりませんけど」

の言葉を白銀がメモする。

一通りの取材が終了し、白銀がメモ帳を閉じた。

「ところで、女神ちゃん」

「何度も言いますけどね?」

は律儀に何度も言う。『その呼び名は辞めてほしい』と。

その反応が楽しいってのもあるんだぞー、と一樹は心の中で指摘をするが口には出さない。

「女神ちゃんの部屋、突撃取材させてくれたら考えても良いよ」

ニッと笑って白銀が言う。

は盛大に溜息をつき、の背後で「白銀先輩?」と颯斗がいい笑顔で彼の名を呼ぶ。

「ごめんなさい」と反射で謝る白銀に「ったく、しょうがねーなー」と一樹が苦笑する。

「じゃ、また来るね女神ちゃん」

「だーかーらー!!」

の抗議を背中に受けて愉快そうにしながら白銀は生徒会室を後にした。


「颯斗くん、塩ある?塩」

「今度買っておきましょう」

「おいおい、お前ら...」

友人を悪霊か何かのように言われて一樹は抗議の声を上げるがと颯斗は塩を買って、今度白銀が来たら撒く気満々のようである。



「遅くなりました」とやってきたのは月子だ。

「おー、無理しなくて良いぞ」と一樹が言い、も「こっちは気にしなくても大丈夫よ」と声を掛ける。

「ううん、やるからには責任を持ってきっちりとしたいから。それで、何か仕事ある?」

ここまで来て「何もない」って追い返すのはどうかと思ったはすぐに済みそうな仕事を頼んだ。

「そういえば、。今年は8月頭の会計関係の書類が出来たら帰省しても大丈夫だぞ」

と一樹が声をかけてきた。

「あ、ホントですか?あれ?会計、会計はどこだ...」

部屋の中をキョロキョロと見渡す。

さっき生徒会室に入ってきたと思ったが...

「ああ、隣ですよ」と颯斗が言う。

生徒会室の隣に翼専用のラボがある。彼はその部屋で数々の発明を世に送り出し、そう経たない内に消滅させている。

大抵失敗して爆発するのだ。

その犠牲となるのが一樹で、収拾をつけようとするのに颯斗が加わる。

「じゃあ、今は声をかけないほうが良いよね」とが言うと「ですね」と颯斗も頷く。

「ねえ、ちゃん」

書類を整理しながら月子が声をかけてきた。

どこか言いづらそうな雰囲気がある。

何だろう、と思いながら「なに?」と返すと「ちゃんの実家に遊びにいってみたい..なー...」と上目遣いでいわれた。

こりゃ可愛い。

はそう思いながら「いいよ」とあっさり返す。

「え、いいの?!」

「たいしたお構いも出来ませんけど。あと、田舎だけど。最近は夜中にカエルの大合唱はなくなったけど、田舎レベルならここと変わんないよ」

の言葉に「へえ」と一樹が興味深そうに声を上げた。

「俺も行くー!」

いつの間にかラボから出てきたらしい翼が立候補した。

「翼君!」と颯斗が叱るが「俺もいーきーたーいー!!」とジタバタと大きな体で暴れる。

「別に良いよ、無駄に広いから」

の言葉に「え?!」と月子以外の人物の声が重なった。

「ホントか?!ホントに行っても良いのか??」

「でも、つっこちゃんはインターハイがあるから、8月後半に来るってことだよね?」

の言葉に月子は頷く。

「おい、。ほんとに大丈夫なのか?」

「つっこちゃんがわたしと一緒にわたしの部屋で寝て、翼くんを1階に寝かせれば問題ないですけど」

「わーい!楽しみなのだー。書記たちとお泊り会!!」

諸手を挙げて喜ぶ翼が一樹と颯斗を見た。

「あ!良いこと思いついたのだ。ぬいぬいとそらそらも一緒に行こうよ」と誘う。

「はあ?!」「いえ...」と2人は驚きを隠せない。

「雑魚寝でよかったら、さっきも言ったけど無駄に広いのでスペース的な問題は大丈夫ですよ」

が言う。

「...いや、。まず姉ちゃんに、一応確認しとけ?」

怖いから、という言葉を飲んで一樹が言うと

「ああ、そっか。ごめん、つっこちゃん。さっきの答え保留させて。お姉ちゃんに確認してからまた返事する」

が言う。

「う、うん...わかった」

何か、自分が思ったのと全く違う方向に話が流れていっているようで月子も困惑しているようだ。

「えー、今すぐ電話して」という翼に

「お姉ちゃん、勤務時間中は基本的に携帯に出られないからダメ」

が返す。

「な、なあ颯斗。もし、あいつの姉ちゃんが良いって言ったら..お前どうする?」

さんと月子さんにあの翼君のブレーキと言うのはちょっと...さんの家に迷惑をかけたらお姉さんが怖いですし」

「だよな...」

アレを放し飼いにしたと文句を言いにやってきそうな気がする。

一樹と颯斗は顔を見合わせて同時に肩を落とした。









桜風
11.6.10


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