Kaleidoscope 31





お囃子の音が聞こえ、皆のテンションが上がる。

少し先には神社の境内が見え、夜店が並んでいる。

保護者として琥太郎もついてきた。

「面倒くさい」と言う琥太郎に「春姉ちゃんに言うよ!」とが言い「はいはい」と面倒くさそうについてくることになった。

末っ子の威力発揮中である。


「凄いねー」

月子の言葉に「この周辺にこれだけの人口があるとは思えないんだけどねー」とは笑いながら言う。

カラコロと下駄が鳴る。

と月子は少し季節はずれかもしれない浴衣を着ていた。しかし、周囲を見ると浴衣を着ている人もそれなりにいるのでは安心した。

境内についた途端「」と琥太郎が手を差し出してきた。「迷子防止だ」という。

「迷子になんてならないもん」

「この間なっただろう。わざとじゃなくて、素で」と指摘されてグッと詰まった。

その通りだが...

ちゃん!あっらー、どれが彼氏?」

突然声を掛けられてが振り返る。

何軒か先の家のおばちゃん..だと思う。

「どれも違います」

「あら、そう?まあ、晴秋君がかっこいいから目が肥えちゃって大変よね」

そう言って去っていった。

「近所付き合いしてるのか?」

琥太郎の言葉に「まさか」とは肩を竦める。

だろうなぁ。時間がなさ過ぎる。

「向こうが一方的に小さいときのわたしとかを覚えてるだけ」

なるほど、と琥太郎は納得した。


カラコロと歩いていると月子が足を止めた。

「おー、。お?男をぞろぞろと...全員夏凛さんにぶっ飛ばされるんじゃないのか?」

夜店からそんな声が飛んできた。

「またこんなことを...」

は苦笑する。兄の同級生が店番をしていた。

この出店は射的だが、普通のそれと違って弓を使っての射的だ。

「あれ?今回は『インターハイ優勝者お断り』って貼り紙ないじゃん」

が言うと「そうそうインターハイ優勝した弓道経験者がこんなど田舎にいるかってんだ。晴秋がいない今、そんな条件必要ないって」とケラケラと笑いながら言う。

は宮地を見た。

月子は浴衣で動きにくいだろうが、宮地はそうでもない。

「宮地君」と月子も促す。

「じゃあ、1回」

「はいよ、5本で1000円だ。何だ、兄ちゃん。可愛い女の子にいいとこ見せたいってのか?」

はははと笑いながら弓と矢を宮地に渡した。

弓の大きさや弦の張りが普段使っているものと違うが、それでもいつもの的よりも近くにあるし、そこそこ大きいから何とかなるか。

そう思いながら宮地が弓を構える。

「おい、。あいつ弓道経験者か?」

「インターハイ優勝者」

「はあ?!」

の返事に店番は声を上げた。

聞いてないぞ?!

「おーい、次オレな」

宮地に気を取られているところで客が1000円出してきた。

「はいよ」と言いながら上の空で矢を5本渡す。

宮地が取れたのは2本だけだった。

やっぱり勝手が違うと難しいものだ。

「次、オレだ」

そう言って手を出した人物に宮地は「どうぞ」と弓を渡す。

「晴秋?!」

「オレがやってもいいよな。だって、貼り紙ないもんな!」

満面の笑みで晴秋がいう。

「ちょ、待って。ごめん、2000円払うからやめて」

「やなこった。久々だからどうかなー...」

そう言って弓を構える。

、どれだ?」

「あのお菓子」

が指差した菓子に命中した。

「次は?」

「えーと...」

「アキ、あれって車のキーじゃない?」

確かに難しいところに、原寸大の車の鍵がある。

「新車がほしいと思わない?」

「思う」

そう言って車の鍵に矢を当てた。

「お兄ちゃん?!」

「あそこのちっさい紙、『オーディオステレオコンポ』って書いてない?」

「書いてあるな」

そう言ってまた弓を放つ。

「ちょっと、お姉ちゃん!!」

「あと2本もあるけど。、欲しい物ないか?」

「え...あの。お兄ちゃん、もうやめてあげて」

泣き崩れている兄の同級生を見て心から同情した。

「何だよ、お前。そんな覚悟もなしに車とかコンポとか景品置くな」

晴秋はしゃがんで彼に言う。

「だって、お前。何年も帰ってこなかったじゃないか。だったら、大丈夫かなって普通思うだろう。そこの少年のように、インターハイ優勝者でも外すとかそういう可愛げが...」

本気泣きだ。

晴秋は肩を竦めて「じゃあ、景品の菓子を詰め合わせてにやってくれ。それで良いから」と弓と矢を返す。

晴秋の気が変わらないうちに、と彼はお菓子の詰め合わせを作っての持たせ、「ありがとうな」と言った。


「というか、夏姉たちが帰ってくるんだったら俺いらなかっただろう」

少しさっきの夜店から離れたところで琥太郎が言う。

「まあ、そういうなって。、ただいま」

晴秋が言う。

そして姉の脳天チョップを食らった。

「アンタ、ほんとに学習能力ないね。あたしより先にに声を掛けるんじゃないわよ」

「いてぇ...」と頭を抑えて晴秋は蹲った。

「あの、えっと...?」

どういうことだ?聞いてないぞ??

「休みが取れたから帰ってきた」

「同じく」

晴秋と夏凛が言う。

それでなくとも人口密度の多いときにかぁ...

しかし、2年連続で目立つことをしてくれたお陰で彼らは夏凛たちのことを知っているし、夏凛も晴秋も自室があるので困らない。

「酒と花火も買ってきたぞ」

「お酒はわたしたちには関係ない...」

が言うが「飲み比べましょうね」と夏凛が乗り気だ。

「こいつらに飲ますなよー」

琥太郎一応念を押すと「わかってるって。小僧に飲ますにゃ勿体無い酒だもん」と夏凛が笑った。









桜風
11.7.1


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