| 『先に食べててください。パン派の人はもうちょっと待ってたら買って帰ります。』 朝、一樹が起きるとテーブルの上にそんな書置きがあった。 の字だ。 「何処行ったんだ?」 夏凛とか晴秋とかも一緒にいないのだろうか。 「おー、早いなぁ」 欠伸をしながら2階から琥太郎が降りてきた。 「おはようございます」 「おー、おはよう。ああ、やっぱりいないのか」 書置きを見つけて琥太郎が呟く。 「あの、たちは...」 「墓参りだろう。盆にが墓参りをしてるだろうが、せっかく3人揃ったんだから行くことにしたんじゃないか。少なくとも、アキと夏姉は昨晩明日の朝に行くって話してたからな」 そうか、と一樹は納得した。 それからすぐに皆は起きて来て琥太郎が朝食の支度をしてやった。 「あれ?皆早起き」 ただいま、と家に帰ってきたは朝食が済んで寛いでいる彼らの姿を見て驚いた。 「おはよう、ちゃん」 「おはよう、つっこちゃん」 近所の、と言っても自転車で30分かかるところにあるパン屋の袋をテーブルの上に置く。 「琥太が早起きだ」と晴秋が呟き、「、今日の洗濯物は外に干さない方が良いわよ」と夏凛が言う。 「うん。そうする」 「あのなぁ、3人が朝居ないだろうと思って頑張って起きた俺にその言葉は無いだろう」 「偉いな、琥太」 「頑張ったね、琥太にぃ」 「ご苦労」 晴秋、、夏凛がそれぞれ声を掛ける。 午前中、学生らしく学校の宿題をしているとと颯斗が問題の解き方について意見が対立したらしい。 「お兄ちゃん」とが声を掛ける。 新聞を読んでいた晴秋が「どうした?」と応じる。 「この問題なんだけど、わたしはこの公式でいいと思うの。けど、颯斗くんはこっちの公式だって...」 の言葉を聞きながら問題文を読んでいた晴秋は「青空が正解」と答えた。 「どうして?」 「この条件が入ってることで、の言った公式は使えない」 指摘されて「あ!」と声を上げた。 「晴秋さん、詳しいんですね」 颯斗が言うと「お前らの先輩だからな」とさらっと言った。 この中でその事実を知っていたのは一樹と琥太郎だけだったので皆は驚きの声を上げた。 「で、では...インターハイ優勝って」 「から聞いてるけど、今でもスポ根なんだってな。弓道部」 ニッと笑う。 「アキはお前らの先輩で不知火の数代前の生徒会長だし、金久保の数代前の部長だぞ」 琥太郎が言う。 「え?!じ、じゃあ..この問題も...」 控えめに言ってくる後輩たちの宿題に付き合い始めた晴秋だったが夏凛に声を掛けられて出かけることになった。 「生徒会長もされてたのか...」 晴秋が居なくなって一樹が言う。 「はい。結構強引に色々とやってたらしくて。次代の生徒会長は兄とは性格が全然違ったから兄が作ったイベントと言うか、行事を殆どなくしていったらしいです。残したのは、スターロード..くらいかな?」 「あれ、晴秋さんが作ったのか?!」 意外と歴史が浅い。 「あいつのペテンは凄いぞ」と琥太郎が笑う。 ペテンって... カタリと玄関の方で音がした気がした。 買い物に出た2人が戻ってくるにしては早いと思っていると足音が近付いてくる。 琥太郎が廊下を見た。 「君は誰だ。この家に何か用か」 声が硬い。 「琥太にぃ?」 「あーら、男をこんなに家に上げて...」 はぽかんとした。従姉だ。 と、言っても友好的な親戚といえば『星月』しかいないので、彼女は仲良しな相手ではない。 「何か?」 の声も自然と硬くなる。 「親を殺しておいて、こんなに男をはべらせるなんて良いご身分ね。あら、貴方...この子の遺産目当てに近付いた星月のご子息じゃないですか」 挑発するようにいう彼女にぐっと奥歯をかみ締めて「出て行ってください」とが言う。 「うわ、図太い。普通こんなことを言われたら傷ついて泣くんじゃないの?あ、そっか。あんた普通の人間じゃないんだよね。死んで生まれたくせにここまで生き延びて。 だから親を殺したのよね。けど、それだけだと満足しなかったあんたは、幼馴染も殺したんでしょう?えーと、何て名前だったかな?えーと...」 「いい加減にしろ!」 止めたのはでも琥太郎でもなく一樹だった。 「な、何よ」 一樹の迫力に彼女はたじろぐ。 玄関で何か音がした。 「あーら、婚約者に逃げられたその腹いせにウチの可愛い妹にちょっかい出すのは辞めてくださらない? 名前だけ書けりゃ入れる短大に入ったのになぜか卒業できずに2年くらい留年してしまった『従妹』というのも恥ずかしくなってしまう、えーと名前、聞いてもいいかしら?さん。 そりゃ、親はのお金がほしくなるわー。家に居るのは金をかけても全然実を結ばない娘ですものね?」 傷つけるために紡がれる夏凛の言葉に彼女は後ずさる。 「夏姉...」 琥太郎が呆然と呟く。 「な、何よ!!」 「出口はあっち。それとも、住居不法侵入で警察でも呼ぼうか?親戚と言っても勝手に出入りを許されるほどの交流は無いし、こちらが起訴すれば成立すると思うけど?」 ニコリと微笑んで晴秋が言う。 「ちょ、ちょっと寄っただけよ!!」 逃げるように彼女は出て行った。 晴秋は両手に持っている大荷物を台所にとりあえず置いて「、行こうな」と軽々と妹を抱えて2階へと上がっていった。 泣くのを堪えて下唇を噛んでいたはそのまま兄の肩に顔を埋める。 「琥太、あんたも上に行って良いわよー。留守番ありがと」 「...ああ、ごめん」 そう言って琥太郎もその場から消えた。 残された月子たちは夏凛を見た。事情がまったく飲み込めない。 「ああ、ちょっと待ってね。あんなもん見せちゃったから説明するけど、その前に塩まいてくるから」 塩をまいて戻ってくる夏凛を待つ時間は思いのほか長く感じられた。 |
桜風
11.7.8
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