Kaleidoscope 36





翌朝、が朝食の支度をしていると夏凛と晴秋が起きてきた。

さすが、普段から規則正しい生活を送っているだけある。

庭に出て体を動かす夏凛と晴秋の姿を見ても動きたくなった。

「お姉ちゃん、組み手の相手して」

「ん?いいよ」

朝食の準備は9割方済んだ。だから、もう時間はある。

玄関でスニーカーをはいて庭に回り、準備運動を始めた。


庭の方が騒がしいと思い、のそのそと起きた翼はぽかんとする。

と晴秋が喧嘩をしているのだ。

「け、喧嘩はだめなのだー!」

庭先の下駄を履いて間に入ろうとした。

「ちょ!」

は驚いたが既に蹴りを入れているところで、急には止まらない。

「ほれ」と夏凛が晴秋の尻を蹴った。

「は?!」

姿勢を崩して前のめりになった晴秋の肩にクリーンヒット。

お陰で翼は無事だが、晴秋の肩が心配だ。

「大丈夫よ、その筋肉だるまの肩くらい」

「誰が筋肉だるまだよ...」

「お兄ちゃん、ごめん。大丈夫??」

「...喧嘩じゃないのか?」

首を傾げて呟く翼に「ごめん、起こしちゃったね」とが謝る。

すっかり熱くなってた。

「ううん、あれ?書記その2は兄ちゃんと喧嘩をしてたんじゃないのか?」

「うん、お兄ちゃんと本気で喧嘩しても勝てないよ」

困ったようにが言う。

喧嘩だと思ったから止めに入ってくれたのだ。

夏凛との組み手をしていたが晴秋が自分もと組み手をしたいといったので交代した。

それを目撃した翼が慌てたというワケだ。


朝食の席で今朝の話をすると「そうか」と皆が納得した。

ちなみに、琥太郎はまだ起きてこないが気にせずに食事にすることにした。

は入学して間もない頃に、学校に逃げ込んだ強盗を伸したことがあるんだ」

一樹が言うと「ホントか、書記その2?」と翼がに確認する。

「うん、まあ。わたしの機嫌の悪いときでもあったし。手加減なしに..やっちゃった」

てへっ、とが笑う。

「そういや、は結局どの程度なんだ?」

「何が?」

七海の問いにが問い返す。

「ほら、何段とか、何帯とかあるだろう?空手か?」

「ああ、うん。空手で帯の色は黒」

「は?!」

「昔、両親が居ないことで学校で苛められてて、泣いて帰ったところに幼馴染の姉ちゃんが言ったの。『ちゃんが泣いてて可愛そうなままだったら同じくお父さんとお母さんが居ないちゃんのお姉ちゃんとお兄ちゃんも可愛そうな子になっちゃうよ』って。
近所に空手道場があったからそこに通わせてもらって、メキメキと強くなりました」

さすがに黒帯だと思っていなかったらしい彼らは驚いた表情のまま固まっている。

「俺、は怒らせないようにする...」

七海がポツリと呟く。

「そうしてちょうだい」とが笑った。

たちは、今日帰るんでしょう?いつ?」

「お昼食べてすぐかなぁ?」

そう言いながら皆を見ると「それくらいでいいだろう」と一樹が言うと、「ん、わかった」と夏凛は頷いた。


朝食が済んで宿題が済んでいない者..翼と七海は晴秋に見てもらいながら宿題をし、他のものは散歩に出たり自由に行動していた。

「ねえ、ちゃん」とこれまた上目遣いで月子が声をかけてきた。

何かお願い事があるんだな、と思って「なに?」と返すと「アルバム見せて」と言われた。

「琥太にぃ、良い?」

もれなく写っているはずの人物に声をかけた。

「あー?別に良いぞ」

ゴロゴロしている琥太郎がそう返した。

は自室に戻ってアルバムを数冊持ってきた。

「これ、何?」

少し違う感じのものがあって月子が開く。

「それはお兄ちゃんからもらったもの。お兄ちゃんが撮ったんだって。つっこちゃんそういうのも好きそうだから」

その中には星の写真があった。

「天体写真?」

月子の呟きに「なに?!」と反応して宿題そっちのけで七海が月子の手の中を覗き込んだ。

「うわ、すげぇ...こ、これ何処で撮ったんスか?」

目を輝かせて言う七海に晴秋がその写真を覗き込み、星の名前とそれが見える角度、方角そして時刻を口にする。

「へ?」

「ほら、天文科。割り出せ」

星の角度、方角が分かれば撮影場所が分かるだろうと言うのだ。

「え、もっかい。もっかい言ってください」

晴秋は笑いながら先ほど言った星の名前、それが見える角度と方角、時刻を口にした。

「えーと...」

ガリガリと頭を掻きながら七海が真剣に考えている。

「すごい、哉太が一生懸命勉強してるぞ」

東月が言うと月子も「そうだね」と頷く。

不意に横からが緯度と経度を口にした。

「へ?」と七海が声を零す。

、正解」

「星の位置から自分の立っている場所が割り出せるだろう?てか、それって天文科の専門科目じゃなかったか?今の写真は船の上からだから緯度経度で言ったら海の上だけどな」

晴秋が言う。

「たぶん、2学期に習うんだと思います。1学期に先生が軽く話をされただけでしたから」と東月が答えた。

「そうか。なら、悪かったな七海」

「いえ...てかは何で割り出せるんだよ」

「割り出し方をお兄ちゃんに教えてもらってるから」

が言う。

「これ、借りても良いですか」と七海が晴秋に言うと「今はのだから、に聞け」と返された。

「いいよ、別に」とが返し、七海はとても嬉しそうに礼を言った。


その後、が持ってきた写真の中にの小学校の運動会のコーナーか何かで女装した琥太郎の写真があり、皆で盛り上がった。

「これ、晴秋さんですか?」

月子が指差した写真は彼が高校生のときのものだった。

「ああ、インターハイのときの写真だな。オレ、若いなぁ...」

「凄い、綺麗な射形ですね...」

月子の言葉に「ありがとう。今はたぶんもうムリだけどな」と晴秋が言う。

「どうしてですか?」

「体がもう弓道用の体じゃないからな。筋肉の付き方とか」

「夜店で悉く高価な景品を当てたくせに」と琥太郎が茶々を入れると「アレはもはや意地だ」と晴秋は笑う。

そんな意地のために彼の同級生は本気で泣いたのか。可愛そうに...


晴秋と琥太郎の車で駅まで送ってもらい、たちは星月学園に帰っていった。

2学期はもうすぐそことなっていた。









桜風
11.7.15


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