Kaleidoscope 37





珍しくホームルームが長引き、慌てて保健室に向かった。

「ごめんなさい」

入ると月子がぼうっとしていた。

「つっこちゃん?」

「え?あ、うん。大丈夫、私もさっき来たところだから」

驚いたように振り返った月子は笑顔を作った。

暫く生徒会の話をしながら保健室で留守番をしていると「ねえ、ちゃん」と月子が話を変える。

「なに?」

「秋って、恋の季節なんだって」

「...ふーん?」

首を傾げながら相槌を打つ。

唐突だな、と思った。

「春じゃないんだね」

「あ、そうだね。春は良く聞くよね」

「うん」

そんな会話をしていると琥太郎が戻ってきた。

「今日はもう良いぞ、ありがとう」と言われて保健室を後にする。


「ああ、そういえば。に言っておいた方がよかった..か?まあ、良いか」

夏休みのの反応を思い出して琥太郎は苦笑した。



翌日の全校集会で今年の教育実習生が紹介された。

その中に見知った人物が居た。

水嶋郁という。

「げっ」というの呟きが耳に入った颯斗が「どうかしましたか?」と声を掛ける。

「ううん、何でもない」

何で郁ちゃんが居るの...琥太にぃ、黙ってたな...

心の中で琥太郎に八つ当たりをしていた。

郁は天文科の実習生と紹介され、はほっと息を吐く。

おそらく、琥太郎の信頼できる教師に任せることにしたのだろうな、と想像する。

琥太郎ならそういう無理を通すことが出来る。

それが良いか悪いかは別として...



放課後、琥太郎に呼び出された。

今日はそんなに時間をとらないと聞いていたので、颯斗にあとで生徒会室に行く旨を伝えて保健室へと向かった。

「失礼します」とドアを空けた瞬間、ファイティングポーズ。

「あれ?も居たんだ。へー...って、それどういう態度?」

「シュッシュ」と言いながらジャブをしつつ距離をとるに溜息混じりに郁が聞いてみる。

「というか、琥太にぃ。郁ちゃんが来るって何で教えてくれなかったの?!」

「何で琥太にぃが僕が此処に教育実習に来るってのを一般生徒のに教えなきゃいけないの。は守られすぎてると思うけど?甘えすぎだよ」

「大人気なく年下を苛めるモジャがいるから仕方ない」

「『モジャ』って何だよ。もしかして、僕のこの髪型のこと言ってるの?はぁ...子供はこのオシャレが理解できないかぁ。あ、子供じゃなくてちびっ子か。みにくいアヒルの子?」

「みにくいアヒルの子のラスト知ってて言ってる?!」

「ああ、白鳥になるんだよね。けど、はガチョウのままだろう?」

「誰がガチョウだ!」

「ほら、グワグワ鳴いてる」

「お前たち、いい加減にしろ。保健室で口げんかなんて子供か。郁、大人気ないぞ。も、少し落ち着きを持て」

琥太郎に叱られてと郁はぷいとそっぽを向く。

「何か、お前達が揃うと昔を思い出すよ...」

よくこんな子供じみた口喧嘩をしていた。

いや、当時は実際に子供だったのだが...

「そうだ。は生徒会に入ってるんだ」

「そうだよ」と胸を張ってが言うと「アキにぃを利用しようとしてるんじゃないの?」と郁が言う。

「はあ?!それ各方面に失礼だよ」

自分をスカウトしてくれた一樹にも、兄にも失礼だ。

「人間なんて、結局利用する、されるの関係しかないんだよ。それ以外、ありえないんだ」

「そんなことないよ」

が言うと「子供は夢を見れて良いね。特に、守られてる幸せな環境にあるのような子は」と言って保健室を後にした。

「...郁ちゃん?」

閉まったドアを暫く見つめていたはやがて琥太郎を見上げた。

「とりあえず、久々だし顔をあわせてた方が良いかと思って呼んだんだが...もう良いぞ」

そう言ってを拒否するように背中を向けた。

郁の言葉とその目が気になるがたぶん聞いても今の琥太郎は答えてくれないだろう。

は諦めて「失礼します」と言って保健室を後にした。









桜風
11.7.22


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