Kaleidoscope 38





保健室の用事が済み、生徒会室に向かった。


「おい、。どこまで行くんだ?」

声を掛けられて振り返る。偶然ドアを開けたのかひょっこりドアからはみ出た一樹の半身が見えた。

おっと、生徒会室を行き過ぎたようだ。


「どうした、面白いことして。調子でも悪いのか?」

真顔で一樹に言われて「ぼうっとしてました」と返す。

「まあ、そうだろうな」と一樹は頷く。

「あれ?皆は?」

「颯斗と翼には仕事を頼んだ。月子は部活に行ったぞ」

「あ、そっか。すみません、遅くなって」

は水嶋先輩とも知り合いだったんだな」

不意に言われては振り返る。

目を丸くして驚いている彼女の表情を見て一樹は苦笑した。

「だって、ほら。夏凛さん、『郁』をジャイアントスイングしたんだろう?あと、今日水嶋先輩が壇上に上がったとき『げっ』って呟いたらしいじゃないか」

一樹の発言の根拠を聞いては肩を竦めた。

「まあ、そうですね。知り合いというか苛められて育ちました。郁ちゃんのお陰です、わたしのメンタルは」

の言葉に一樹は笑う。

「じゃあ、感謝しないと」

「ぜっっっったいに、イ ヤ です!!」

力いっぱい拒否されてしまった。


鞄を置いて書類に手を伸ばすがその手を止めた。

「そうだ、一樹会長」

「どうした?」

「恋の季節って、いつでしょうか?」

飲んでいたコーヒーを吹いた一樹はむせながら「何だって?!」と聞き返してきた。

「だから、恋の季節っていつなんでしょうか」

少し沈黙した後、「お前、恋をしたのか?」と聞いてみたら「いいえ」とさらっと返されて肩透かしを食らった。

「さあな、いつでも恋はできるだろう」

「恋ができる季節ではなく、恋と言えば、な季節です」

「拘るなぁ...じゃあ、春」

『じゃあ』って何だ、『じゃあ』って...

そう思いながらも「まあ、そうですよね。わたしもそう思ってたんですけどねー」と頷く。

「何だって突然そんなことを言い出したんだよ」

とーちゃんビックリしたじゃないか、と一樹が続ける。

「昨日、つっこちゃんが突然言ったんですよ。わたしも春だと思っていたので、実は一般的には秋なのかなって」

「ただ、秋は人肌が恋しくなるって言うよな」

「寒くなるだけでは...?」

の言葉に一樹は笑う。

その思考は何だか、子供っぽいぞと思ったがたぶんにそれを言うと猛然と抗議されるだろうと思って話題を変える。

、お前副会長と書記、どっちがいい?」

突然の話題転換には一瞬思考がついていかなかったが

「忙しい方で良いですよ。つっこちゃん部活もあるし。けど、役職なんて次の会長が決めることじゃないんですか?」

と返した。

「お前がいて助かるよ」

「寂しいことには変わりないんですよ」

肩を竦めてが言う。

「ただ、昔からお兄ちゃんお姉ちゃんに面倒を見てもらってたので、その人が遠くに行くのに慣れてしまったんですよね」

「あいつら、少しでも俺の卒業の話を出したらしょんぼりするからな。嬉しい反面、ちょっと心配だよ」

「じゃあ、もっかい留年とか」

「もうしない」

の提案に一樹はキッパリと返した。

「ちえっ」と拗ねたように言うの表情を見て一樹の表情が緩む。


ふと、がこちらを見た。

目があって驚く。

「一樹会長。わたしって、幸せなんでしょうか」

「は?それは..自分が決めることじゃないのか?」

また突然だ。

一樹はどう答えて良いのかわからずそう返した。

「そうか..だったら幸せだ」

「そう思えるってことは、ほんとに幸せなんだろうな」

手を伸ばした一樹がの頭をなでる。

くすぐったそうに目を細めたは大人しく撫でられていた。









桜風
11.7.22


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