Kaleidoscope 39





2学期に入ってすぐに生徒会は忙しくなる。

10月の上旬にある文化祭の準備のためだ。

学校行事があると生徒会は忙しい。その上、クラスの企画もあるので体育祭以上に忙しいのが文化祭だ。

「今年も楽そうなので良かったね」

生徒会室に向かいながら颯斗に言う。

「そうですね、去年も展示だけでしたよね。準備もそう大変そうでもないでしょうし、文化祭当日も当番から外してもらえるみたいですから少しは回れるんじゃないですか?」

「だね」とは笑う。


「お疲れ様です」と生徒会室に入ろうとするが、鍵がかかっている。まだ誰も来ていないようだ。

「皆さん、文化祭の話し合いでしょうね」

「3年生も頑張るんだね」

鍵を開けて中に入った。

ドアを入ってすぐのスペースが広々と開いてる。

「あれ、これ」

「ああ、今朝来て空けておいたんです。これから色々と資材を置いておく必要がありますからね」

颯斗がそう言い「言ってくれたら手伝ったのに。大変だったでしょ?」とが言うと「一樹会長と一緒にやったので大丈夫ですよ」と彼が微笑む。


今年のスターロードのデザインについて颯斗と話をしていると一樹がやってきた。

スターロードは毎年地味にデザインチェンジされている。

「お疲れ様です」とは立ち上がり、コーヒーを入れる準備を始めた。

「颯斗くんもお替りいる?」

「いただきます」

「悪いな、遅くなった」と一樹はそう言って颯斗の手元を見る。

「ああ、スターロードの今年のデザインか」

そして、ふと思い出す。

「何で毎年デザインを変えてるんだ?」

今更ではあるが、に問う。

「兄の後任の会長が兄のことを大嫌いだったらしく、しかしこのイベントは生徒は勿論学外の人も楽しみにしてるものだったので無くすことができなかったそうです。それで、せめてデザインを変えたとか。
その会長は1年で退任して後任にその経緯を話していなかったから毎年変えるものなのだと思ったらしいその人が変えて、今日に至る。
と、言うのが兄の推測です」

「推測かよ」と一樹が苦笑した。

「ま、今年も美術部に依頼したし、デザインチェンジで良いか...来年以降は好きにしたら良いし」

他人事のように来年を語る一樹に颯斗が俯く。

に視線を向けると彼女は苦笑して肩を竦めている。

「で、お前らはどれが良いって?」

話を戻すことにした。

「どうぞ」とコーヒーを渡しながら「わたしはこれです」とが言う。

「僕はこれなんですけど..会長は?」

「俺は颯斗に1票」

「えー!」とが声をあげ、「ま、あとは翼と月子の意見を聞いてGOってところだな。そういや、お前らクラスの方はどうなんだ?」と一樹が言う。

「去年と似たような感じです」と颯斗が答えると「んじゃ、存分に見回りのスケージュール入れられるな」と言われて「えー」とが形だけの抗議をした。



スターロードのデザインは翼も月子も颯斗の意見に賛成だったため、そのデザインが採用されることとなった。

美術部部室に向かいながらはやっぱり自分が選んだ方を捨てられずにデザイン画を眺めながら歩いている。

「どうしてダメなんだろう」

「ロマンチックさに欠けませんか?」

どちらかといえばサイケデリックだと思う。

「賑やかで良いじゃない」

「スターロードの趣旨と言うか...」

「むーん」隣を歩く颯斗が指摘するたびに「そうかな?」と返しつつやっぱり納得いかなく、こんな賑やかで素敵なのにと思いながら唸る。

「そういえば、さんはピアノをされるんですか?」

「ん?お姉ちゃん曰く、兄とわたしは芸術的センスが皆無だって。音楽は勿論、絵とかも」

颯斗は目を丸くする。

「意外です」

「そう?実家にあったピアノは姉のなの。弾きたかったら弾けば良かったのに。毎年ちゃんと調律してもらってるらしいから音が外れていることもないし。お姉ちゃん喜んでセッションしたと思うよ?」

「夏凛さんは何をされていたんですか?あ。トランペット...」

ぽつりと颯斗が呟くと「あ、そうだよ。知ってるんだ?」とが嬉しそうに頷く。

「ええ、まあ。そういえばどこかで聞いたことがある名前だと思ったんです。いつからだったか、名前を聞かなくなったな、と思ってたんですけど」

そういうことだったんですね、と口の中で呟く。

「でも、トランペットってそんなメジャーじゃないのによく知ってるね。バイオリンとかピアノとかだったら結構学生の間で有名な人とか多いんじゃないかって思うけど」

「逆に珍しいからですよ」と颯斗が言う。


美術部にデザインの話をして生徒会室に戻った。

「...なあ、これ何だ?」

「ひとこぶラクダです」

が真顔で言う。

「馬じゃないのか?」

「馬は此処に鬣があるじゃないですか」

芸術的センスが皆無と言う話をした際、昔絵を描いたら姉が泣いたことを颯斗に話すと興味を示されたので生徒会室に戻ってからそのときに描いたものを描いた。

手元を覗き込んでいた一樹は唸り、結局答えを導き出せずに聞いたのだ。

「なるほど」と颯斗が苦笑する。

「まさか、お前オンチ?」

「音だけは取れます。リズムが取れないだけで」

ちゃん、意外...」

同じく生徒会室にいた月子が嬉しそうにそう言った。









桜風
11.7.29


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