Kaleidoscope 40





月子のクラスはコスプレ喫茶をするとのこと。

「熱いねー...」とが呟くと「う、うん...」と少し困ったように月子が言う。

「衣装、作らなきゃいけなくなっちゃったの」

「手伝えることがあったら言ってね」

の言葉に月子は嬉しそうに頷いた。



ある日の放課後、職員室に行くと琥太郎がいる。

少しの間保健室を空けてるだけなのかな、と思っていると琥太郎がそばにやってきた。

が掴まらなかったから今、夜久に保健室頼んでいるんだ。手が空いたら行ってくれないか」

そう頼まれては琥太郎を睨んだ。

彼女独りに保健室を預けるな、と視線で責める。

「すまん」と小声で返した琥太郎は用のある教師の姿を見つけたのか、そちらに向かっていった。


「おーっと!体全体が滑ったぁーーーー!」

保健室のドアを開けた途端、目に入った光景にはそう叫んで郁に体当たりをした。

「つっこちゃん、大丈夫?」

郁が月子に迫っていた。それを少々興奮気味に見ているサッカー部員。

「痛いなぁ...仮にも教師に向かって体当たりをするなんてどういうこと?!」

「仮でも『教師』なら生徒に迫らないでいただきたいんですけど!!」

月子を背に庇ってが郁を見上げた。

「え、えっと。俺、怪我したんだ」

「唾でもつけときゃ直る!」

もうひとりの女子の出現に胸を躍らせたサッカー部員には冷たく短くそう言ってまた郁を見上げる。

「はいはい。あーあ、興ざめだよ。これだからお子様は」

「どっちがお子様ですか!」

「おいおい、どうした。廊下まで声が聞こえてるぞ」と琥太郎が戻ってきた。

「あ、そっち怪我人らしいです。星月先生が戻ってきたので保健係はこれにて退散します」

月子の手を引いては保健室を後にした。


サッカー部員の傷の手当を終わらせた琥太郎は、彼らが保健室から出て行くのを待って居座っている郁を見た。

「お前、夜久に何かしたのか?」

「何で僕が子供に...子供は僕の範疇外」

、相当怒ってただろう」

「月子ちゃんをからかってたんだよ。そしたら、本気にしたが突っ込んできたの。ただそれだけ」

琥太郎は何かを言おうとして口を開いたが、何も言わずに閉じる。

「直獅が探してるぞ」

「えー、しつこいなぁ...」

「それが直獅の仕事だ」

「ま、いい加減職員室に戻ろうかな」

そう言って郁は保健室から出て行った。



「ねえ、ちゃん。水嶋先生と知り合いなの?」

生徒会室に向かいながら月子が問う。

「水嶋先生はいじめっ子だから気をつけてね。ほんとに意地悪だから」

つっこちゃん優しいから心配だよー、とは嘆く。

「戻りましたー」と戻ったは書置きを見た。

「あ、みんな出払ってるんだ」

部屋の中を見渡してもすぐに出来そうなものはない。

「つっこちゃん、部活行く?」

「ううん、今日は行けないって話してるから。じゃあ、皆が戻るまでこれ、作ってようかな」

そう言って大きな紙袋の中から布を取り出した。

「あ、衣装?手伝おうか??」

月子が座ったソファの隣にも腰を下ろす。

の厚意に甘えることとして月子は1着頼んだ。

「制服っぽいんだけど...」

「うん、先生達に着てもらうの」

「先生たち?陽日先生と、あ、教育実習生と?」

あと1着あるようだ。

「星月先生」

「...そりゃ、似合わなさそう。写真撮っておいてね。お姉ちゃんとお兄ちゃんに送る」

が愉快そうに言う。

「星月先生、嫌がらないかな?」

「大丈夫、わたしにくれるって話をしなかったらたぶん頓着しないから」

面白そう、とは嬉しそうに微笑む。


ガタッとドアの外で音がしたような気がした。

は振り返り、どうしたのだろうと立ち上がるとドアの向こうで「何をしてるんだ?」と一樹の声がして足音が遠ざかった。

ドアが開き、一樹が入ってきた。

「誰かいたんですか?」

「ああ、いや。用事があるのかと思ったが、そうじゃなかったみたいだ」

少し険しい表情の一樹に首を傾げつつがコーヒーを入れようとした。

「いや、今日はまずい茶が飲みたい」

悪戯っぽく笑って言う一樹に「一樹会長!」と抗議の声を上げたのは月子で、一樹が言っている『まずい茶』が自分の淹れるお茶だと認識している時点でなんと言うか、的確な表現だといわれても反論出来ないのではないかと思う。

は再び腰を下ろした。

ちゃんはどうする?」

月子に聞かれて「いただきます」と答えた。

たしかに美味しいとはいえないけど、愛情が入ってるし、琥太郎が言っていたがクセになる味なのだ。

月子がお茶の準備をしているところにこっそり一樹がやってきた。

、最近変わった事はないか?」

「...さあ?郁ちゃんから小ばかにした目で見下ろされるようになったくらいですか」

心からムカつくことである。

「い、いや。そういうんじゃないんだが...そうか、ならいい」

何だったんだろう...

首を傾げるに一樹は息を吐く。

「文化祭のときは絶対に誰かと組ませないとな...」

颯斗がと同じクラスでよかったと心から思った。







桜風
11.7.29


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