Kaleidoscope 46





高校生活の最大のイベント、修学旅行に皆はテンションが上がっていた。

も例外ではなく、全行程を暗唱できるほどパンフレットを何度も見た。

初日の天文台が最も興味がある。

さん、寝不足ですか?」

おはよう、と挨拶をした後、颯斗に言われた。

「へへっ、楽しみすぎて...つっこちゃんも寝不足だって言ってたし。颯斗くんは?」

「楽しみですが、それなりに睡眠も取れましたよ」と言われて何だか自分が子供っぽく思えたはちょっと恥ずかしくなった。


バスに揺られての移動となり、の隣には颯斗が座った。

やはり寝不足なのか、バスが走り始めてすぐには寝息を立て始める。

バスガイドの説明が車内に響く。結構周囲も賑やかなのだがそれをものともせず彼女は夢の中だ。

ことり、と肩にの頭が乗ってしまった颯斗は苦笑した。

困りましたね、と心の中でそう呟く。

窓際が良いと彼女が言ったので窓際を譲ったのだが、寝るとなると窓際は眩しいだろうし、外気が冷たければ寒いと思う。

とりあえず窓のカーテンを閉めようと手を伸ばして「あれ?」と呟く。

が熱い気がする。

「熱でもあるんでしょうか」と彼女の額に触れたらやはり熱い。


トイレ休憩でバスが停まった。

さん」と颯斗が起こす。

「なに...?」

寝ぼけ眼でが見上げてくる。

さん、調子が悪いんじゃないですか?たしか、星月先生は天文科のバスでしたね。ちょっと呼んできます」

そう言って颯斗がバスを降りていった。

は自分の額に手を当てる。

平熱だと思うのだが、自分の手が熱くて分からないのだろうか。

しかし、体調は悪くない。ちょっと眠いくらいだ。

少しして琥太郎を連れて颯斗が戻ってきた。

、調子悪いのか?」

「自覚は無いです」

そう返すに琥太郎は体温計を渡す。

ピピッと音がして表示されている体温を見てみると、いつもの体温。つまり平熱だ。

琥太郎もの額に手を当て、「あー、そうか」と呟く。

「青空、は寝てたんじゃないか。お前がその発熱に気づいたとき」

「ええ、眩しそうにしてたのでカーテンを引こうと思ったら...」

「こいつ、寝てるときは異常に体温が高くなるんだ」

車内にまだ生徒が残っているので少しだけ声のトーンを落としてそう言う。そんな寝てるときの体質の話を琥太郎がすると誤解されかねないし、としても学校関係者と身内ってこともあまり知られたくないだろう。

「はい?」

「今触ってみろ、平熱だ」

「失礼しますね」と言っての額に手を当てて「本当です」と驚いたように呟く。

「こいつがうちに来たとき、最初は俺もこれに振り回された」と苦笑して琥太郎が言う。

「では、何でもないということですか?」

「起きてるときに発熱があれば様子を見なくちゃならんだろうが、寝てる間のはそう慌てることはない。もう一度聞くぞ、調子はどうだ?」

「修学旅行が楽しみすぎて、昨日寝られなかったので寝不足っていうくらいです」

「子供だな」と琥太郎は呟き、颯斗を見た。

「悪かったな、心配させて」

「ごめんね、颯斗くん」

「いえ...」

琥太郎はそのままバスを降りていった。

「昔からだったんですか?」

「今も続いているとは思ってなかったけど...ほら、お兄ちゃんもお姉ちゃんもそれを知ってるから今でもそうでも態々指摘してくれないし。ごめんね、心配かけて。ありがとう」

「いえ、僕の方こそさんに話を聞かずに星月先生を呼びに行ってすみません」

本当、慌ててしまった...


「琥太にぃ、の体調悪いの?」

「いーや。寝てるときのアレだ」

バスに戻ってきた琥太郎が郁に声をかけられてそう答えた。

「ああ、アレだったんだ。まだ続いてるの?寝るときに体温が高くなるなんて全く子供だよねー」

「お前、それを気に入って冬は嫌がるを離さなかっただろうが。夏姉に見つかってこっぴどく叱られて以来はやめたみたいだけど」

「だって、って『人間湯たんぽ』じゃん」

悪びれず言う郁に琥太郎が盛大に溜息を吐いたと同時にバスが目的地に向かって発車した。









桜風
11.8.19


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