| 琥太郎を見上げたは笑顔を見せた。 「有李ちゃんは幸せだったよ」 の言葉に琥太郎は後ろめたさか、視線を逸らした。 「有李ちゃんの病室に行ったら何度も話してくれたの。琥太にぃのこと。何処が素敵かとか、意外と抜けてるところが可愛いとか。 当時、全然わかんなくて有李ちゃんと同じ年頃になったら分かるのかなって思ってたけど、今になってもさっぱり共感できない。でも、有李ちゃんは幸せだって言ってた。 自分が精一杯生きて、もし、病気がなくて長生きできて、でも、琥太にぃがいなかったらこんな幸せはなかったって。恋がどれだけ幸せか、教えてくれたのは琥太にぃだって。 両想いってのに憧れがなかったとは言わないけど、それでも誰かを想ってこんなに心があったかくなることを知ることが出来たのは琥太にぃのお陰だって」 優しい目をしてがそういった。 が、突然カッと目を見開き「なのに!」と言う。 「なのに、琥太にぃ。勝手に有李ちゃんを不幸だったって考えてる。自分が幸せかどうかは自分が決めることなの。 だから、いつも幸せだって言ってた有李ちゃんは本当に幸せだった。 第一、何?自分は人を好きになる資格がない? いい?琥太にぃ。その資格がない理由を勝手に自分のせいにされたらどうよ?わたしだったら凄く嫌。 ねえ、琥太にぃ。有李ちゃんは琥太にぃが自分の想いに応えてくれないんだったら琥太にぃも不幸になっちゃえー、って思うような女の子だと思ってるの?!」 ずいと迫ってが言う。 その迫力に押されて琥太郎は首を横に振ることしか出来なかった。 「2人ともずっと抱えてきたものだからすぐになくしちゃうことはできないと思う。けど、『有李ちゃんが心配してる』。これだけは覚えておいて。 第一、何で4つ上のお兄さんと9つ上のお兄さんの行く末を託されなきゃいけないの、わたし。 『郁は繊細だから人一倍傷つきやすいと思うの。わたしがこの先、郁と一緒に泣けない分、ちゃんが一緒に泣いてあげて。 琥太にぃは、優しすぎるから凄く自分を責めちゃうと思うの。でも、琥太にぃには幸せになってもらいたい。笑ってる優しい目をしてる琥太にぃが一番好き。だから、琥太にぃが辛そうにしてたらその手を握ってあげて』 わたしが有李ちゃんに言われた最後の言葉。 ずっと何とかしてみたかったけど、今までダメだった。だって、わたしどう見ても子供じゃない?ムリだよ。 けど、何となく今日なら2人は聞いてくれそうな気がして話したの。 こっから先は2人が強くならないと、わたしの手には負えない。有李ちゃんに託されたけど、ちょっとこの大人たち、大変だから有李ちゃんも『もう良いよ』って笑ってくれそうだし、そう思うことにした。あー、すっきり!!」 言葉通り、何だかの表情が晴れ晴れしたようにも見える。 は郁を見上げた。 「郁ちゃん、わたし郁ちゃん好きだよ。繊細で傷つきやすくて、結構猜疑心が強いけど、責任感とか正義感とかも意外と強いもんね」 そして琥太郎を見上げる。 「ね、琥太にぃ。自分を最も不幸に出来るのは自分なんだって。お姉ちゃんが言ってた。だから、勝手に悲劇のヒーローぶることも出来る。けど、幸せに出来るのも自分なんだって。 わたし、琥太にぃに育ててもらって幸せだよ。ありがとう。今回、ちょっと失敗したから心配かけちゃったけど、琥太にぃが傍にいてくれるのはかなり心強いんだよ」 の言葉に琥太郎は驚き、くしゃりと表情を歪めた。 「ああ、」と言って自分の表情を見られたくないからか、が顔を上げられないように少し強めに頭を撫でた。 翌日、琥太郎は一樹を呼び出し、の話をした。 は大事を取って今日は休んでいる。 「心当たりはないか?」 「あります」 そう言った彼の瞳には怒りがこもっていた。 何に対するものかはわからない。自分か、相手か。それとも、相談をしなかったに対してか。 その日のうちに校内の掲示板に一人の生徒の処分が掲示された。 校内での一方的な暴力だったため、処罰があったのだ。 その翌日、登校したは早々に生徒会室に呼び出され、一樹と颯斗の説教を受ける羽目に陥る。 「次はお前が手を出すなと言っても出すからな」 一樹にそう言われ「ごめんなさい」とは謝り、颯斗の『いい笑顔』の前に、「次にこんなことがあったら絶対に相談する」と約束をさせられたのだった。 生徒会室でのお説教が終わって教室に向かう途中、「颯斗くん」と少し沈んだ声でが見上げる。 「どうしましたか?さっきの約束さえ守ってくれればもう怒ってませんよ?」 颯斗が言うとは首を横に振る。 何だろう、と首を傾げた颯斗にがポケットから何かを取り出して見せた。 「これは...」 にあげたヘアピンだが、飾りのところが壊れている。 「壊れちゃったの、ごめんなさい」 しゅんとして彼女が言う。 「全く同じの、というのはもうムリですが。また可愛いさんに似合いそうな何かを見つけたらプレゼントさせてください」 ニコリと微笑んで颯斗が言う。 「そ、それは悪いので良いです」 「僕がそうしたいって言ってもですか?」 そういわれては言葉に詰まった。一度もらったこともある。 「えと」 「とにかく、それについては気にしないでください。さんが無事でよかった。いえ、怪我をしたので全くの無事ではありませんが、最悪の事態は免れましたから」 そう言って颯斗が微笑む。 「ごめんね」と謝るに困った顔で颯斗が微笑んだ。 「さっきも言いましたよ。約束さえ守ってくれたら良い、と」 「はい」 教室に入るとクラスメイト達がの心配をして傍によってくる。 顔の傷が特に痛々しい。 少し離れた場所で颯斗はその様子をチャイムが鳴るまで見守った。 |
桜風
11.9.9
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