Kaleidoscope 57





生徒会室に入ると月子が不思議そうな表情をしてカレンダーを見ている。

「どうしたの、つっこちゃん」

「あ、ちゃん。これ、何だと思う?昨日までなかったと思うんだけど」

今日は12月14日。誰の誕生日でもないはずだ。

「本当です。確かに昨日は何もなかったような...」

「ふたご座流星群?」

「「あ」」

月子と颯斗の声が重なる。

「凄い、そうだ。忘れてた」

「さすがさんです」

感心する2人に苦笑して「昨日郁ちゃんから電話があっただけ」とは肩を竦める。

「水嶋先生から?何て??」

「郁ちゃんってふたご座なのよ。だから」

「え?だから...電話ですか?」

「さも、自分のことかのように毎年ふたご座流星群極大日の数日前に電話してくるの」

月子と颯斗は「なるほど」と納得した。

しかし、ふたご座流星群とこの赤い丸が本当に繋がっていることかは分からない。

何より、一樹と翼がない。

「...サボリでしょうか?」

「忙しいの分かってるんだからさすがにそれはないんじゃない?」

颯斗の呟きにはそう返しながら席についた。


しかし、一樹と翼は中々姿を現さない。

そろそろ切り上げようと話しているとガラッと生徒会室のドアが開いたかと思うと「お前ら、揃ってるな」と一樹が入ってきた。

「会長、遅いですよ」

颯斗が訴えると「いいから、ついて来い」と一樹が言う。

「は?」

相変わらず強引だ。

遅れてきた理由は何も言わずにそう言って荷物をまとめさせる。

全員の荷物がまとめ終わったのを確認して生徒会室を出て行った。

最後に出たはドアの施錠をして駆け足で彼らの後を追った。


一樹が連れてきたのは屋上庭園だった。

その場には翼もいる。

そういえば、数日前からこの2人がこそこそと何か企んでいたことを思い出す。

「お前ら、今日が何の日か分かってるのか?」

「ふたご座流星群の極大日、ですか?」

先ほど生徒会室で話したことを思い出してが言う。

「おう!さすがだな。その通り。今日は皆で天体観測するぞ!」

高らかな一樹の宣言に颯斗が呆れる。

食堂が閉まってしまうと言うと既に食堂のおばちゃんにお願いして用意していた重箱を掲げた。

「準備万端、ということですか」

溜息混じりに颯斗が言う。諦めたのだ。

「寒いからな、毛布も用意してる」

誇らしげに一樹が言う。

このことを知らされていなかった3人は顔を見合わせて苦笑をした。



食事を済ませてあとは星が降ってくるのを待つのみだ。

ゴロリと寝転ぶと翼が寝息を立て始める。

「あれ、翼くん寝ちゃった...」

が呟く。

「あー、寝かせてやってくれ。流星群が来たら起こしてやれば良い」

一樹が言う。

どうやら、この天体観測の準備のために彼は得意の発明で一役買っていると説明する。

「珍しく、成功した例ですね」

颯斗がしみじみと言う。

たしかに、爆発しそうにない。

月子もうとうととし始めた。

「お前らも寝てて良いぞ」

一樹にそういわれても目を瞑る。


「起きろ、始まったぞ」

一樹がそう声をかけ「さん」と颯斗が肩をゆする。

相変わらず体温が上がっている。やはりドキリとしたが、が目を明けると段々体温が下がってきていた。

しかし、屋外でこれは逆に風邪を引くのではないかと心配になる。

「大丈夫ですか、さん」

「ん?うん、ちょっと寒い」

そうだろう...

「僕の、どうぞ」

そう言って颯斗が自分の毛布を分けようとしたが「そしたら颯斗くんが風邪を引いちゃう」とが断った。

「大丈夫、すぐに馴染むよ」とが笑い、空を見上げる。

流星群を見るのが初めてだと言う翼はこれまた大喜びだ。

しかし、この降ってくる星をつかめないのが残念だと言う。

クスリ、とが笑う。

自分も幼い頃そう言って琥太郎を困らせた。

そのとき、たしか有李ちゃんが...

そんなことを思っていると月子が翼に星を掴んだからあげると言う。見えないけど、ちゃんと星があって、それを胸にしまっておいて、と。

は驚いて月子を見る。

昔、有李がそう言って自分を宥めてくれた。その言葉の通り、あの時見た星は今でも忘れていない。

「ぬはは!じゃあ、俺も星を掴まえるのだ。ぬいぬいとそらそらとにもあげるのだ」

そう言って翼が掴まえた星をくれた。

「ありがとう、翼くん」

が言うと「どういたしましてなのだー」と弾んだ声で翼が応えた。









桜風
11.9.30


ブラウザバックでお戻りください