Kaleidoscope 58





大掃除の準備をしていると月子が「ね、ちゃん」と声をかけてきた。

「なに?」

ちゃんはサンタさんっていくつくらいまで信じてた?」

クリスマスが近付くと良くこういう話題になったな...

去年、なんで聞かれなかったんだっけ...?

そう思いながら「星月家にご厄介になった年から現実を知ったけど?」と返す。

「星月先生の家ってクリスマスしないの?」

月子が驚くと「ううん、世間で言うクリスマスイブのお手本を示そうとしてくれたわ」とは首を横に振る。

「じゃあ、何ではその年に現実を知ったんだよ。ウチみたいに神社じゃないよな?」

「幼馴染の意地悪なお兄さんのお陰で」

が言うと全員が「あ」と呟く。


幼いはサンタクロースを信じていた。

そして、サンタクロースにお手紙を書いていた。クリスマスプレゼントのお願いだ。

しかし、それを見た郁が鼻で笑って「サンタクロースなんていないのに」と言ったのだ。

勿論、それを有李はたしなめた。それが益々面白くなかった郁が「じゃあ、クリスマスイブに偽者サンタクロースを捕まえよう」と言い出した。

はサンタクロースが本当にいると信じていたのでそれを受けて立ったのが拙かった。

そうとはつゆ知らず、夏凛がクリスマスイブに星月家にやってきた。

の枕元にクリスマスプレゼント置こうとしたら、一緒の布団で寝ていた郁にそれを邪魔され、寝ていたが目を覚ますとミニスカサンタコスチュームに身を包んだ姉が「あ」と呟いたのだ。

手には、自分がサンタクロースにお願いしたものがある。

「ほらな」と郁が得意になって言い次の瞬間、彼は宙を舞った。


「わたし、初めて投げっぱなしジャーマンを目の前で見たのよね。人ってあんな軽々と宙に舞うのね...」

遠い目をしてが言う。

「その後、残業から帰って来た星月のおじさんもサンタクロースの格好で。ああ、現実ってこうなんだって思ったわ。まあ、何が一番気の毒って、夜遅くまで働いて帰ったのに、既にサンタクロースの正体を知ってしまったわたしを目にしたおじさんだと思うけど」

の言葉に皆は言葉が出なかった。

というか、郁はどれだけ夏凛にお仕置きされているのだろうか...

「夏凛さん、小学生にも手加減なしか...」

一樹がポツリと呟く。

そういえば、が星月家で生活をするようになったのは彼女が7歳になった年。郁とは4つ違うから...まだ小学生だ。

頭の中で颯斗は計算し、夏凛の恐ろしさにぶるりと震えた。



大掃除のために発注した雑巾や洗剤の確認をしていると「そうや、」と一樹に声をかけられた。

「はい?」

振り返ると

「確認なんだが。今年のご褒美、お前はムリだよな?」

と言われた。

確かに、この手首で餅つきはちょっと拙いと思う。

「あ、でも。利き手じゃないので返し手ならできるかもしれません」

「ムリは禁物ですよ」

の言葉にすかさず颯斗がそう言い「だな。星月先生にも釘を刺されたし」と一樹が頷く。

「すみません」と謝ると「いや、気にするな。月子、悪いが今年は1人で頼むな?」と月子に声を掛ける。

「はい」と頷く月子に「ごめんね、つっこちゃん」とが謝ると「気にしないで」と言われた。

星月学園のイベントのひとつに大掃除がある。

1年間お世話になった校舎に感謝の気持ちを込めて皆で大掃除をする。

各クラスで掃除の場所を宛がい、その中で最も綺麗に掃除をしたクラスにはご褒美がある。

去年からはこの学園でたった2人の女子と餅つきをするというもの。

昨年は1年天文科が優勝した。つまり、月子のクラス。

「今年はどこでしょうか」

颯斗の言葉に「んー、そうだな」と一樹は考えるそぶりをした。

「しかし、翼君が大人しいんですけどー?」

昨日の掃除の分担を決める日には自分も月子と餅つきをしたいと言っていたのに、大人しくなった。

の指摘に「んー...」と一樹は唸り「嫌な予感しかしない」と呟いた。

「右に同じく」と颯斗が呟く。

と月子は顔を見合わせてクスリと笑った。









桜風
11.9.30


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