Kaleidoscope 65





宿直は無事に終了した。


そして、新学期を迎える。

今学期で一樹はこの学園を去る。

つまり、生徒会長を引退することになる。

現生徒会長が引退すれば新生徒会長を決めなくてはならない。

しかし、この話題は生徒会室の中では皆触れないようにしていたものだ。

その日、生徒会室に呼び出された。今日は会議を行うとの事。

「何の会議かな?」

月子が言う。

は見当がついていたが口にすることは出来なかった。

隣を歩く颯斗の表情が少し硬かった。彼もおそらく察しているのだろう。


生徒会室に入った途端、爆発がある。

「これを日常茶飯事と思う自分が...」

苦笑しながらが言う。

「同じく。僕もあまり慣れたくない日常です」

颯斗の言葉に月子がクスクスと笑った。

翼は新年一発目の発明が失敗に終わったことを嘆き、一樹が彼を叱り飛ばす。

それらの片づけが終了し、やっと本題に入れる体勢になった。

の表情を見て一樹は思わず苦笑を漏らす。

彼の切り出した議題には予想通り皆の緊張が走った。

そして、自然と颯斗に視線が集まる。

「少し、考えさせてください」

そう言って颯斗が生徒会室を後にしたのを合図に、とりあえず本日の会議は終了となった。

翼もその日は寮に帰って行った。

月子と、そして一樹は残って仕事をしていたが月子も早めに帰り、一樹も帰っていく。

は先ほどの重苦しい空気を思い出す。

颯斗には実力はある。

今までずっと一樹の仕事を間近で見ていたし、一樹もそのつもりで颯斗に色々と教えていたはずだ。

あの無茶苦茶なカリスマ性は一樹の天性の才能でそれと同じものは、必ずしも必要ない。

「どうなっちゃうのかな...」

ポツリと呟く。

颯斗のこともあまり詳しくは知らない。

いや、生徒会のメンバーのことを殆ど知らない。

は深く溜息を吐いて生徒会室を後にした。





声をかけられて振り返る。

「今日は早いんですね」

「たまにはな。どうした、背中が寂しそうだったぞ」

声をかけてきたのは琥太郎だった。

本当は仕事は早めに切り上げた。窓からが一人で帰っている姿が見えた。その背中が寂しそうだったから気になったのだ。

は生徒会室での話をした。

「そうか、そういえば、そんな時期だったな...不知火が4年間。確かに青空にとって大きなプレッシャーだな」

「颯斗くんって繊細ですから」

は自分がしようと思わないのか?お前がやっても良いんじゃないか?」

「ダメですよ」

キッパリとが返す。

「何故?」

「一樹会長は颯斗くんを後任としてずっと鍛えてきたし、期待してきたんです。わたしもそのつもりだったから会長の仕事、まったく興味なかったのであまり見てません。あと、残念ながらこの学園の男子生徒を抑えられるとも思えません」

確かに、何か揉め事が起こった場合、今は一樹が間に入ってとりなしている。

それこそ、実力行使ありで、だ。

は実力行使も可能だろうが、そうなると色々とバランスが難しくなるだろう。

「わたし、さっきふと思ったんですけど」

「ん?」

「皆のこと、あまり知らないなって。皆は結構わたしのことを知ってたりするんですけどね」

家族が学校に乗り込んでくるからなぁ...

遠い目をして琥太郎は「かもな」と同意する。

「けど、プロフィールを知らなきゃ仲間じゃないってことはないだろう?」

と返す。

「例えば、家族構成は必ずしも知らなきゃならないことじゃない。仲間がどういう人物か。それが分かってれば充分じゃないか?
不知火は多少強引だが、頼れる。青空は優しいが芯がしっかりしていている。天羽は素直で少し繊細。夜久はまっすぐで意外と不器用。そして、は、甘え上手に見せかけて、甘え下手のくせに人の気持ちに敏感だ」

「星月先生、名前で呼んでますよ?」

が指摘すると「これは失礼、」と肩を竦める。

「信じてやれ。一番大変で、重要なことだ」

そう言って琥太郎はの頭を少しだけ乱暴に撫でた。

琥太郎は、照れ隠しのときにこうやって乱暴に撫でるのはだけが知っている。









桜風
11.10.28


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