Kaleidoscope 66





同じクラスで、生徒会役員。

殆ど一緒に行動していた颯斗にここ最近避けられている。

確かに、自分と一緒にいれば否が応にも生徒会長選挙という言葉が頭をちらつくだろう。

だから、もあまり颯斗に接しなかった。


「翼くん!」

昼休憩、購買で弁当を購入して校舎の中を歩いていると翼を見かけた。

声をかけると彼は少しうつろな瞳をしていた。

先日、颯斗が生徒会長には立候補しないことを言いに来て、一樹と言い合いをして以降、翼も生徒会室に来ていない。

「お昼、一緒にどう?」

「...いいけど」

生徒会室が寒くなくて落ち着けそうなのでそこに移動した。

「あれ、翼くんのお昼は?」

「俺、最近欲しくない」

「大きくなれないよ?」

「もう充分大きいよ」

声のトーンが落ちたままだ。

「俺、生徒会役員を辞める」

不意にそんなことを言う。

「なんで?」

「だって、このままだとバラバラになっちゃう」

「...ならないかもしれない」

が返すと「でも!」と声を荒げた。

「でも、ぬいぬいは絶対にいなくなる」

その点はも否定できない絶対の事実だ。

「うん、そうね」

「大切な人なんて、要らない」

ポツリと呟く翼の言葉には表情を歪めた。

「翼くんにとって、わたしは要らない子なんだ...」

「違う。違う..んだ。俺...」

苦しそうに何かを伝えようとする翼の頭を撫でた。

月子は翼の頭を良く撫でてやる。彼はそのとき、嬉しそうに目を細める。


「夏に、蛍を見に行ったの覚えてる?」

翼はコクリと頷いた。

「楽しかったね。星が地上に降りてきたみたいで。わたしの実家、翼くんも知ってるよね。あそこも結構蛍は見れるんだけど、地元で見たことのある蛍よりも凄くきれいだった。何でだろうね」

「知らない」

「颯斗くんの誕生日をお祝いしたの、覚えてる?」

「そらそら、あんまり喜ばなかった」

「あとで、彼が喜び方を知らなかったのが分かったじゃない。嬉しいって言ったでしょう?」

「うん」

「たくさん、たくさん皆で笑って喧嘩して。一樹会長を支えて、この学園を盛り上げたじゃない?」

「だから、そのぬいぬいがいなくなるって言ってるじゃないか!」

翼は立ち上がる。

「ねえ、翼くん。翼くんは一樹会長、好きだよね」

の問いかけに翼は頷く。

「一樹会長は、ずっとわたしたちを守ってくれていた。本人がよく「とーちゃん」って言ってるその言葉の通り。分かりにくいところもあるけど、守って、支えてくれていた。
一樹会長が卒業する。これは変わらない。だったら、心残りのないようにしたいと思わない?
わたしは一樹会長には何の心配なく、卒業してもらいたい。それが、わたしの恩返し。
たくさん助けてくれて、支えてくれた一樹会長に同じものを返すことは到底無理だから。だから、わたしはわたしの出来ることで恩返しする」

のできること?」

不思議そうに翼がを見る。

「うん。わたしのできること。次の会長..颯斗くんを支えてこの学校をもっと良くするの」

「けど、そらそらは生徒会長はしないって...」

「翼くん。颯斗くんを信じられない?信じ続けることって本当に大変だと思う。けどね、わたしは信じようって思ってる。一樹会長も言ってたけど、一樹会長みたいな会長じゃなくても良いのよ。颯斗くんには颯斗くんのいいところがある。ほら、堅実なところとか。行き当たりばったりの一樹会長のプランが何でこれまできちんと成功したと思ってるの?颯斗くんが漏れのありそうなところを全部フォローしてたからよ。颯斗くんだから、それが出来たの。
最初は比べられるかもしれない。会長歴4年はどうしたって大きいよ。けど、絶対に颯斗くんなら一樹会長に勝るとも劣らない生徒会運営でこの学園を良くしてくれる。
んー、ちょっと違う。颯斗くんと一緒にこの学園を良くしたい。
一樹会長もそれを確信できたらきっと心置きなく卒業できる。わたしたちがまず一樹会長から卒業しなきゃいけないのよ、きっと」

そう言っては翼の顔を覗きこんだ。

「ね、翼くん。もう一緒に頑張ってくれないの?」

俯いた翼は何も言わない。

丁度予鈴がなった。

「あ、予鈴。翼くん、次の授業は何?」

翼を急かして生徒会室を後にする。

ドアを開ける少し前、廊下で足音が聞こえた気がした。

しかし、誰もいない。そもそもこのフロアに用事のある人なんて殆どいない。

とりあえず、次は移動教室であることを思い出したは猛ダッシュで階段を駆け下りた。









桜風
11.10.28


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