Kaleidoscope 67





教室に戻り、教科書一式を持ってプラネタリウムへと向かった。

いつも座る席がまだ空いているのでそこに座る。

「隣、いいですか?」

声をかけられたは些か驚いたが「もちろん」と頷いた。

いつもこの場所でこうして並んで座っている。

「僕は...」

隣に座った颯斗が何かを言いそうだった。

は静かにその言葉を待つ。

待ったが、結局授業が終わるまでには聞くことは出来ず、その後も話そうとはしてこなかった。



生徒会長の立候補受付期間最終日の放課後、生徒会室には颯斗以外の生徒会役員が揃っていた。

翼はと昼休憩を過ごしたあの日からまた生徒会室に短い時間ながらも顔を出すようになった。

口には出さなかったが、一樹はそのことにほっとしたようだった。

「颯斗君、遅いね...」

「まだ時間はあるよ」

月子の呟きにが返す。

あと30分。

30分もあれば間に合う。問題ない。

廊下から足音が聞こえてドアが開く。

皆が振り返るとそこに立っていたのは白銀だった。

落胆した表情を見た白銀は颯斗から預かった言葉を一樹に伝える。生徒会長にはなれない、という内容のものだ。

「そんな!」

月子は落胆したように俯き、翼も不安げな表情を見せる。

「女神ちゃん?」

表情から何を考えているのか読めず白銀が声をかけてきた。

「颯斗くんは来ます」

まっすぐそう言うに月子は顔をあげ、翼もに視線を向ける。

...」

「...来た」

がドアに視線を向けた。

ガラッとドアが開き、息を切らせた颯斗が駆け込んでくる。

「手続きをしてきます」

ドアを出るの背中で会長に立候補するという颯斗の力強い声が聞こえた。


職員室に入ると琥太郎がいた。

生徒会長選挙の担当の教員に手続きを行い、は琥太郎の元へと向かう。

「青空、立候補するのか?」

の表情を見た琥太郎が察してそう言う。

コクリと頷いたは満面の笑みだった。

「モタモタしていたから準備期間は短いな」

「大丈夫ですよ。そういった準備の手回しの良さなら、颯斗くんは折り紙つきです」

何せ、2年間そういった作業を行ってきたのだ。

「教師として、俺は中立な立場であるべきだろうが。、精一杯応援してあげなさい」

「はい」

頷いたは職員室を後にして生徒会室に戻った。


さん」

生徒会室に戻ってきたに颯斗が近付いてくる。

「ちゃんと受理されたよ」

「ありがとうございます」

ニコニコと笑っているに颯斗は頭を下げた。

「準備期間が短いけど、それはこれまでの生徒会副会長として色々とやってきてるからそのノウハウがあるし、大丈夫でしょう?」

「ええ、頑張ります」

颯斗の言葉に安心しては生徒会の仕事を始めた。

下校時刻になり、鞄を手にする。

生徒会全員で帰るのは実に久しぶりで、翼が大はしゃぎしてそれを止めようとしてるのか煽ろうとしてるのか一樹も賑やかに騒ぐ。

月子が苦笑してそれを見守る後ろでと颯斗が並んで歩いていた。

「止めないの?」

「僕にも原因の一端がありそうですから...」

何だ、分かってるんだ...

さん、ありがとうございます」

きょとんとが見上げた。

「僕を、信じてくれて。生徒会長になるべきだとか言わずに、ずっと見守ってくれていましたよね」

「買いかぶりすぎ」

は気恥ずかしそうに肩を竦めた。

「いいえ。実は僕、盗み聞きしてしまったんです」

盗み聞き?

「なにを?」

さんが翼くんに話していたこと」

自分が翼に話をした、といえば数日前の昼休憩の生徒会室のことか。

「あの足音、颯斗くんだったんだ?」

「はい。昼休憩なら誰もいないだろうと思って。その間にちょっとした雑務は片付けておこうと思ったんです。生徒会をやめるにしても仕事を放ったらかしにするのは気が引けましたので。そしたら中から声が聞こえて。翼君の怒鳴り声が聞こえて、どうしたんだろうって思ったらさんの声も聞こえて...」

「恥ずかしいなぁ。そういうのって本人に聞かれていないから安心して言えるものなのに」

「僕は、弱い人間です。弱くて、でもそれがイヤで。だけどその弱さが僕の逃げ場で...」

「ねえ、颯斗くん。颯斗くんは自分が弱いって思ってるのよね?」

「ええ」

今その話をしているのだが...

「でも、生徒会長に立候補することにしたってことは強くなりたいってことだよね?」

「はい」

頷く颯斗にが笑顔を見せた。

「だったら、強くなれるよ。自分の弱さを認めたら、次は強くなるしかないってのに気付くから、強くなる第一歩は自分の弱さを認めることなんだって。お兄ちゃんが言ってた」

の言葉が意外だったようで颯斗は目を丸くした。

「晴秋さん、ですか?」

「自分の体験から来た結論だって言ってたよ。そんで、今のお兄ちゃんは颯斗くんも知ってのとおり。何だか良くわかんないけどかなり強いから、説得力ない?」

「...あります」

クスリと笑う。

彼が認めた弱さが何かは分からない。けれど、何となく分かる気がした颯斗は空を見上げた。









桜風
11.11.4


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