Kaleidoscope 55





生徒会室の消灯と施錠を確認して階段を降りる。

「暗いから気をつけろよ」

そう言いながら一樹がの手を握る。

驚いて見上げると「あれ?」と一樹が首を傾げた。

「どうかしたんですか?」

「お前、熱なかったか?」

そんなことを言われて考える。

別に体調を崩していない。何故そんなことを...

そこまで思って「あ、」と呟く。

「一樹会長、わたしが寝ているときに触りましたね?」

「な?!触ったって...!前髪が邪魔そうだからどかしてやろうとだな...」

「わたし、寝てるときには凄く体温が上がるそうなんです」

「だから、別に邪な..え?体温が、あがる?」

何か言い訳らしきものを口にしていた一樹が聞き返した。

「はい、体質です。琥太にぃも春姉ちゃんもそれに最初はビックリしたって。修学旅行のときも颯斗くんが慌てましたし。そんなに高いんですか?」

聞き返されて「慌てる程度にはな」と一樹が返した。

「それは、ご迷惑をおかけしました」

ぺこりとが頭を下げる。


校舎の外に出ると雪がちらついていた。

「また降ってきたなぁ...」

「本当ですね」

白い息を吐きながら並んで歩く。

手は先ほど繋いだまま離す事はなくそのままだ。

「一樹会長は、コートとか着なくて寒くないですか?」

「あんま重ね着するのは好きじゃないんだよ」

一樹らしいコメントだ。

「この雪なら積もりそうですね」

「翼のヤツがはしゃぎそうだな」

苦笑して返す一樹に

「ああ、絵が浮かびますね。はしゃぎすぎてすっ転ぶんですよね。危ないなぁ」

も笑う。

少し先を人が歩いていた。その背中を見てが「琥太にぃだ」と呟く。

遠目でそれが分かるのか。

はするりと繋いでいた手を離して「星月先生!」と駆け出した。

先ほどまで繋いでいた手がひんやりとする。

「くそ...」

一樹はぎゅっと胸の辺りを掴み、歩調を速めた。


「琥太にぃ、お腹空いた」

「俺の姿を見た途端それはどうかと思うぞ」

苦笑しつつ琥太郎がたしなめた。

「さっき、生徒会室で仕事をしてたんだけど、出来上がったらちょっと眠くなって仮眠をしてたら今の時間になったの」

「一人でこんな遅くまで残るな」

再びたしなめられては首を竦めた。

琥太郎は追いついてきた一樹に「あまりこいつも一人にしないようにしてくれ。黒帯でも寝てたら何も出来ないからな」と言う。

「一樹会長は悪くないです!」

が訴えるが「そうですね、すみません」と一樹が謝った。

実際、自分もそう思ったのだから反論する気はない。

しかし、目の前でがしょんぼりし始めた。

何かフォローした方が良いだろうかと思ったが、琥太郎が目の前での頭に手を載せ、「次から気をつけろよ」と優しく諭す。

「はい」と小さな声でが頷いた。

「で、食事だったか?お前、米くらいないのか?」

「昨日なくなったんです。今度の土曜に買いに行かなきゃ」

偶に炊くだけなのだが、なかったらないでこういうときに困る。

「わかった、わかった。一食抜いたくらいで死にはしないが、生徒の体調管理も俺の仕事だ。あとで俺の部屋に来なさい」

「やた!」

が小さくガッツポーズした。

「不知火、お前はどうだ?まだなら来ても良いぞ。ひとりもふたりも同じだ」

「あ、俺は食べてきました」

「そうか。じゃあ、。ほら行くぞ」

そう言って琥太郎がスタスタと歩き出した。

「あ、待って!」

は駆け出そうとして一樹を振り返る。

「あの、ありがとうございました!」

ペコリと頭を下げ琥太郎を追いかけた。

顔を上げた瞬間、少しだけ寂しそうな表情をしていたのは自分の願望が見せた幻だろうか...

ガシガシと頭を掻いて空を見上げる。

「参ったなぁ...」

ポツリと呟いた。

本音は雪が静かに消してくれれば良いのに...









桜風
11.12.2


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