Kaleidoscope 57





窓の外から楽しげな声が聞こえてくる。

見たら羨ましくなるので窓の外は見ず、目の前の山となっている書類に集中することにした。

ちゃん」

驚いて顔を上げると月子が居る。

「あれ?雪合戦は?」

「あれは、今回は中止。みんな、急遽かまくら作りに励んでる」

クスクスと笑いながら月子が言う。

は恐る恐る立ち上がって窓の外を見た。

本当に3人が1箇所に雪を集めていた。

「何で?」

もしかして自分がみんなの楽しみの足を引っ張ったのだろうか。

「かまくらが作りたくなったんじゃないのかな?」

「つっこちゃんは何で?」

何故戻ってきたのかと聞いたら「一樹会長が戻ってろって。男の子だけで楽しむみたい」肩を竦めて言う。

「けど、出来上がったら呼んでくれるみたいだから、それまで出来るだけ仕事済ませちゃおう」

と言ってが確認している書類に手を伸ばした。


暫くして「おーい」と窓の外から声が聞こえた。

と月子は顔を見合わせて立ち上がり、窓の外を見た。

「うわぁ...」

月子が嬉しそうに声を漏らす。

「出来たぞ、降りて来い!」

一樹が言い、と月子は顔を見合わせて頷いて生徒会室を施錠した後、階段を駆け下りた。

「すごーい」

月子がパチパチと拍手する。

はその大きなかまくらを見上げていた。

「どうだ、

「凄いです。わたし、こんな大きなかまくら見たことないです」

「急ごしらえなので、不恰好ですけど」

颯斗が言う。

「ううん、凄いよ。入っても良いですか?」

月子が言うと「いいぞ」と一樹が頷き、「も入ってみろ」と促した。

月子に手を引かれてはかまくらの中に入る。

「わあ、あったかいね」

月子がを見るとくすぐったそうに目を細めていた。

の素直な笑顔だ。

「どーだー?」

一樹が覗き込んで聞いてくる。

「かまくらの中って暖かいって聞いたことありますけど、本当だったんですね」

「ホントか?俺も入る!」

そう言って翼が入り込んできた。

「あ、わたし出るよ」

が言うと「まあまあ、そう言うな。5人入れるように作ったんだ」と一樹が入ってきて颯斗も入ってくる。

確かに5人入れる。しかし、ぎゅうぎゅうだ。

「ぬはは、狭いな」

嬉しそうに翼が笑った。

「入るのでぎりぎりだな。コタツとか入れるようなのを作るとなるともっと雪が要るのか...」

一樹が呟くと「当分ダメですよ。仕事が山のようにあるんですからね」と颯斗が釘を刺す。

「分かってるって。ったく、厳しいなぁ...」

「ところで、これ出るときのほうが大変そうですね」

颯斗が言う。

「あー、確かに」

入るときは頭から入ればよかったが、出るときは足から出る。ちょっと難しそうだ。

「そんなの簡単ぬ〜!」

そう言って翼が足に力を入れた。

体重移動の動きから「ちょっと、翼君?!」と颯斗が驚きの声を上げる。

「翼、待て!」

一樹の制止を聞かず、翼は立ち上がり、かまくらの天井を突き破った。

その先は、みなの予想通りかまくらが潰れ、全員が雪まみれになる。

「ったく、何てことをしてくれるんだ翼!」

そう言って一樹が拳骨を食らわせる。

「いてっ!何だよー、困ってたからこの俺が天才的思い付きで皆をかまくらの外に出したんじゃないか」

抗議をする翼に「これは出したんじゃなくて、生き埋めにしたって言うんだ!」と一樹に指摘されて再び拳骨を食らう。

「月子さん、さん。大丈夫ですか?」

颯斗の差し出した手を取って月子が立ちあがり「大丈夫」と言う。

「あはははは!」

突然の笑い声に皆は一瞬固まった。

「お、おい。?」

「あの、大丈夫ですかさん」

一樹と颯斗が恐る恐る声を掛ける。

「うん、ちょっと楽しかった」

そう言って自力で立ち上がる。

「けど、このままだったらみんな風邪引くね。ジャージ、持ってる?」

コートを着ていたので上着は大丈夫だろうが、スカートの方が無事じゃない。

「そうだな、とりあえず生徒会室に帰ろう」

一樹がそう言い、「翼君、あとでお説教ですよ」と颯斗が黒い笑顔を見せて翼に宣言した。

「む...書記ぃ、そらそらが怖いのだ」

大きな体を小さくして月子に訴える翼は弟のようで彼女は「よしよし」と彼の頭を撫でた。

その後、生徒会室に戻った皆はとりあえずジャージに着替えて仕事をしている間にストーブでそれぞれの制服を乾かす。

そして、颯斗の黒い笑顔監修の元、一樹と翼の仕事はいつもより随分と捗った。









桜風
11.12.16


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