| 12月の半ばにたちは一樹に連れられて屋上庭園に行った。 そこには、既に翼が居て「遅い」と言っている。 有無を言わさずつれてこられた、月子、颯斗は顔を見合わせた。 「何ですか、突然」 颯斗が代表して問うと「流星群の観測をする」と一樹が言う。 「急ですね」とが言った。 時計を見る。このまま天体観測をするとなると夕飯をまた食べ損ねてしまう。 「一度解散してご飯を食べてから集合にしたほうが良いんじゃないですか?」 が言うと一樹が 「これを見ろ!」 と言って弁当箱を出した。 「食堂のおばちゃんにお願いして作っておいてもらったんだ」 「用意が良いですね」 呆れたように颯斗が言い、は苦笑した。 こういうことに関する熱意では一樹の右に出る者は居ないと思う。 食事を済ませると翼が眠ってしまった。 「凄く頑張ってくれたからな。こうやって晴れてるのも翼の発明のお陰なんだ」と一樹が翼の寝顔を眺めながら言う。 「凄い。天気を調整したって事ですか?」目を丸くして言うに「ああ」と一樹が頷く。 「珍しく成功した発明なんですね」と颯斗も感心している。 ふと、気が付くと月子も眠ってしまっていた。 「お前らも寝てて良いぞ。時間になったら起こしてやるから」 そう言った一樹の好意に甘えても寝ることにした。 「おい、お前ら。起きろ!」 一樹が少し声を弾ませて起こす。 傍に居たを揺する。 「んー?」と目をこすりながら一樹を見上げた。 「ほら、流星群だ」 そう言って一樹が天を指差した。 皆の口から感嘆の声が漏れる。 「凄い!凄いぞぬいぬい!!」 「ははは。そうだな、翼!」 翼は流星群を見るのは初めてだったらしく、感動もひとしおのようだ。 「何してるんだ?」 隣で寝転んでいるが両手を天に伸ばしている。 「こうやってたら星が掴める気がしません?」 一樹のほうに顔を向けてが微笑む。 「子供みたいなことを言うなぁ...」 苦笑を漏らして一樹が返すと「星がつかめないのだ!」とと同じように両手を天に向かって伸ばしている翼が残念そうに言う。 「翼と同じレベルだぞ」 こそっと言われた。 「純粋で良いじゃないですか」 笑いながらが返し、両手は天に向けて伸ばしたままだ。 絶対に手に入らないものなら安心して伸ばすことが出来る。失うこともなく、欲しいといっても「無理だ」と皆が笑って済ませてくれる。 「書記その2!あげるのだ」 物思いに耽っていたを思考の中から引き戻したのは翼だった。 「なに?」 伸ばされた手に向かって自分の手を伸ばす。 「はい、流れ星」 「へ?」 「何だ、お前。月子の言葉を聞いてなかったのか?」 苦笑して一樹が言う。 「今、俺が捕まえた流れ星をにあげた。それは見えないけど、の胸の中で光り続ける。なくならない星なのだ」 翼が満足そうに笑ってそう説明してくれた。 思いがけない言葉には翼からもらった星を両手で包み、胸に抱き寄せる。 「うん、ありがとう翼くん」 「どういたしましてなのだ」 「大事にするね」 泣きそうな顔をしてが言う。 「?」 「はい?」 寒さで鼻の頭が赤いだけなのだろう。 少し胸がざわついたが一樹はそれを気のせいとした。 「いーや、何でもない」 「ぬいぬいも慌てなくてもあげるのだ」 「...おう。ありがとな」 まだ胸に両手を押し当てているをもう一度見て一樹は手を伸ばし、の頭に手をぽんと置く。 不思議そうに見ている彼女の視線に気付かないふりをして一樹はそのまま降り注ぐ星々をじっと眺めていた。 |
桜風
11.12.23
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