Kaleidoscope 66





、そろそろ戻るか?」

声を掛けられて驚いた。いつの間にか空が白んできている。

「お前、本当にあったかいな...」

そう言ってぎゅっと抱きしめた。

「あの、わたし寝て..た?」

「おう。すげーぬくぬくだったぞ。が居たら翼の貫井さんなんて要らないな」

笑いながらそう言う一樹が少し鼻声で、「一樹会長、寒かくなかったですか?」とは心配そうに彼の顔を覗きこむ。

「んー?さっき言ったろ、『ぬくぬくだった』って」

そう言って一樹が腕を緩めたのでは慌てて彼の膝の上から降りる。

「足、大丈夫ですか?」

「いや、こっちはちょっと痺れた」

苦笑して返す一樹の隣にはちょこんと座る。

「わたし、いつもあの夢を見たら当分眠れないんです。少なくとも、その晩は絶対に眠れないんです」

「ん?」

「けど、さっき寝ててビックリしました」

「そうか。とーちゃんが一緒だったもんな」

そう言いながら一樹はの頭を撫でる。

「しかし、髪を下ろしてたら全然雰囲気が違うな」

の髪を触ってそういった。いつもひとつにまとめているので珍しい。

「寝るときまで結んでたら髪が傷みますし、寝づらいですから」

「...そういや、これって初日の出か?」

山の稜線を輝かせている太陽を眩しそうに見ながら一樹が呟く。

「そうですね」

「んじゃ」と言って一樹は手を合わせた。

「今年も良い年になりますように!」

も倣って手を合わせる。



宿直室に戻ると颯斗がおきていた。

「何処に行ってたんですか?」

携帯も置きっぱなしだったので連絡を取れず、どうしようと思っていたところだったという。

「あー、わりぃわりぃ。がトイレに行くって言ったからついてったんだ。ひとりでうろちょろさせるわけには行かないだろうしな。んで、ついでに初日の出を拝んできた」

「そんな薄着で?」

窘めるように颯斗が問うと、「ああ、ついでだったんだよ。ついで」と一樹が返す。

溜息をひとつ吐いた颯斗は

さん、大丈夫ですか?今お茶を淹れますから飲んで温まってくださいね」

と言って宿直室においてあるポットで沸かしたお湯を使い、お茶を淹れる準備を始めた。

「ぬ〜?あ、ぬいぬい、そらそら。あと書記その2。おはようなのだ」

話し声が耳に届いたのか、翼が起きてきて月子も目を覚ます。

皆で緑茶を飲み、身支度をして食堂へと向かった。


食堂には、一樹が食堂のおばちゃんに頼んで作り置いてもらったお節があった。

居残り組の生徒も、まさかお節が食べられるとは思っていなかったらしく皆が湧く。

「何か、さすが食堂のおばちゃんですね」

正しいお節料理を目にした気がした。

「だな」と笑って一樹が頬張る。

翼は月子のために伊達巻やくりきんとんを取ってきては彼女のお皿の上に積み上げていき、さすがにそれを彼女が全部食べるには無理があると颯斗に叱られた。

そして、月子の皿の中のものをなくすまで他のものを食べさせないと言う。

「颯斗くん、立派なお母さんになれるよ」

真顔でが言うと「さん」と窘められた。

肩を竦めては笑う。

箸を止めて、一樹はその様子を見ていた。

昨晩聞いたの『作り物』という言葉が忘れられない。

一樹の視線に気付いたが振り返り、目が合うと首を傾げる。

「どうかしましたか?」

「いや、何でもない。そうだ、お前らこの後神社に行くぞ」

慌てて一樹が話を変える。

「神社ですか?」

颯斗が首を傾げる。

「おう。この学園の近くの神社で手伝いをする。巫女さん衣装も借りてるからしっかり手伝え」

「じゃあ、研究費が手に入るな!」

翼が言うと「ばーか、ボランティアだ。手伝いだって言っただろう?」と一樹に言われてがっかりしていた。

「メイド服の次は巫女さんか...」

ポツリとの呟いた言葉にそういえばそうだなぁ...と一樹は思った。

秋のハロウィンのときには彼女はメイド服を着ていた。

ふとそれを思い出して居心地が悪くない。

何であの時は何とも思わなかったんだろうな...

今、があんな恰好したらちょっと嫌だぞ?

「一樹会長?」

颯斗が顔を覗きこむ。

「あ?ああ。何だ?」

「それで、そのお手伝いとは何時からですか?」

そういえば、話の途中だった。

思い出した一樹は先ほど決まった手伝いについて説明を行った。









桜風
12.2.17


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